※『Storytelling with Data』は、Cole Nussbaumer Knaflic が2015年に著したデータ可視化の実務書です。邦訳は『Google流 資料作成術』(日本実業出版社・村井 瑞枝 (訳) )。グラフを飾るのではなく伝える道具として扱い、1) 文脈と聞き手を定める 2) 適切なグラフ型を選ぶ 3) 不要な要素を削る(declutter)4)色で視線を導く 5)設計者として考える 6) 物語の順に並べる、の6章で構成されます。統計手法ではなく、意思決定を動かす設計を扱う点が特徴です。

地球科学の専門家の仕事は、データを集めて分析すればそれで終わりではありません。あなたは、デザイナーでもあります。自分の職務を考えるとき、まず思い浮かぶことではないかもしれませんが、事実です。グラフやチャートを作るたびに、あなたはデザイナーの仕事をしています ── 情報を視覚的に組み立て、関係者にとって明快で、説得力があり、行動へとつながる物語に変えてゆくのですから。
『Storytelling with Data』で Cole Nussbaumer Knaflic は、この意識の切り替えを重視しています。肩書が何であれ、図表を作るなら、デザイナーのように考える必要がある。では、それは具体的にどういうことでしょうか。どんな資質・技能・作法が、デザイナーの目で仕事に向かう助けになるのでしょうか。シリーズ最終回となる本記事では、優れたデザイナーが備える資質と技能、そしてそれをどう自分の図表に活かすかを整理します。
まず押さえておきたいことがあります。『Storytelling with Data』はデザインの原則と方法を扱っていますが、実際のところ、優れたデザイナーは、仕事への向き合い方を形づくる資質や対人的な技能も併せ持っています。つまり地球科学の専門家が、物語に裏打ちされた本当に説得力のある図表を作ろうと思うなら、技術面だけでなく、問題を別の角度から見る力を支える資質を育てる必要があるということです。
ここでは、成果を出すデザイナーが備えている資質と技能を挙げます。グラフやチャートの物語を良くするために、育てる価値のあるものです。
地球科学の専門家の務めは、複雑なデータを、関係者が理解し、行動に移せる物語へと翻訳することです。それを成し遂げるには、デザイナーのように考える助けとなる資質と技能を育てることが要ります。良いデザインを見分ける目を養えば、科学的に正確なだけでなく、関係者を引き込み、強く届く図表を作れるようになります。
資質と技能を押さえたところで、次は『Storytelling with Data』が示している実践的な方法です。
その前にひとつ。優れたデザイナーは、とりあえず作ってみて、うまくいくことを期待する、という進め方をしません。かわりに、自分の作ったものが機能し、読み取りやすく、見て心地よいものになるよう、明確な作法に従います。グラフやチャートも同じです。物語を伝える図表を作るときは、毎回、決まったいくつかの作法を使う ── それが、デザイナーのように考えるということです。ここでは、その5つを挙げます。
『Storytelling with Data』は、強調する範囲を図全体の 10% までにとどめるよう勧めています。それを超えると、メッセージが薄まるからです。グラフやチャートは、常に最も重要な洞察へ聞き手の注意を向けるものであるべきです。すべてが目立つなら、何も目立っていないのと同じです。
効果的に強調するには:
重要な情報を強調することと同じくらい大切なのが、メッセージを薄める不要な情報を取り除くことです。デザインは足すことだけではありません。何を引くかを知ることでもあります ── 関係者を疲れさせたり迷わせたりしないために。
気を散らすものを見つけ、取り除くには:
「読みにくければ、やるのも難しく感じる」。『Storytelling with Data』は、ミシガン大学の研究を引いてこの点を強調しています。手順の説明が読みにくいと、人はその作業自体も難しいと思い込むという結果だったといいます。図表も同じです。ごちゃついて、読みづらく、解釈が難しければ、聞き手は洞察を理解しようとする前に離れていきます。
読み取りやすさを保つには:
優れた図表は、メッセージを視覚的に伝えます。とはいえ、文字を一切なくせばよいというわけではありません。考え抜かれた文字の使い方は、洞察を明快に、受け取りやすくします。どこに置くかを吟味する価値があります。
図表で文字を活かすには:
見た目を後回しにしたくなるかもしれませんが、『Storytelling with Data』はそうではないと論じています。同書によれば、見た目の整ったデザインは、使いやすく、信頼でき、引き込まれるものとして受け取られるという研究があるとされています。よく設計されていれば、多少の難があっても受け入れられ、聞き手は話を聞き、情報を取り込み続けてくれるともいいます。グラフやチャートを共有するとき、関係者からそうした反応を得たいのであれば、見た目を整える価値はあります。
見た目の良い図表にするには:
地球科学の専門家であるあなたは、自分をデザイナーだとは思っていないかもしれません。しかし、物語を伝えるグラフやチャートを作るたびに、あなたは、そのデータが他者にどう読まれるかを決めているのです。関係者に正しく受け取ってもらうには、デザイナーのように考える必要があります。そのためには、資質と技能を育て、可視化ソフトを開くたびに、要となる作法を実践することです。身につくまでには時間がかかるかもしれませんが、その価値はあります。