
鉱物探査には、この分野に特有の難しさがあります。すべてを見通せないまま、判断を下さなければならないからです。対象エリア全体から試料を得ていたとしても、それらの地点のあいだに何があるのかという問いは残りますし、同じくらい重要な「いま得られている情報をもとに、次にどこを調べればよいか」という問いも残ります。
これらの問いに答えるには、さまざまな要素を分析する必要があります。試料をどこで採取したのか、その試料に何が含まれるのか、濃度はどう変わるのか、測定値全体に意味のあるパターンが現れているのか、といったことです。データを多角的に眺めれば、意思決定に欠かせない洞察が得られます。そのためには多くの場合、ワークフローの中で地図とグラフの両方を使うことになります。
「技術データの可視化」シリーズの第3回となる本稿では、有用な鉱物がどこに眠っていそうか(鉱床が存在する可能性)をより確実に見極めるためには、どのように地図とグラフを組み合わせればよいかを取り上げます。それによって探査データを的確に解釈し、追加調査をどのエリアから優先すべきかを、より確かな根拠のもとで判断できるようになります。
地図とグラフについて検討する前に、ひとつの図表に頼ると重要な問いが未解決のまま残るのはなぜか、を押さえておきましょう。
鉱物探査のデータセットには、さまざまな種類の情報が含まれます。たとえば次のようなものです。
これだけ多くの情報があると、1種類の図表だけで必要な洞察を的確に得るのは難しくなります。ボーリング孔や試料の位置を示す地図は、どこでデータを取得したのかを示し、それらの場所を探査エリア全体の中で捉える助けになります。しかし地図だけでは、濃度がデータセット全体にどう分布しているのか、個々の測定値を比べるとどうなのかを把握するのは容易ではありません。
その逆もまた成り立ちます。グラフを使えば分析値などの測定値を調べ、相対的に高い/低い値、分布、ばらつきを見つけられますが、空間的な位置づけが見えなければ、それらの測定値が探査エリアのどこで得られたのか、他の採取地点とどう関係しているのかは分かりにくいままです。
結局のところ、鉱物探査データのふたつの側面をつなごうとしているのです。試料と関心のあるエリアはどこにあるのか、そして、そこから得られた測定値は何を明らかにしているのか。ここに地図とグラフの価値があるわけです。ひとつの図表にすべての答えを求めるのではなく、データの空間的な側面は地図で調べ、測定値そのものはグラフで掘り下げればよいのです。
まず、鉱物探査データセットの空間的な側面から見ていきましょう。地図は測定値を実際の場所と結びつけ、試料がどこで採取されたのか、その周りには何があるのか、鉱物濃度が対象エリア内でどう変わるのかを見せてくれます。地図がワークフローにもたらす利点をもう少し具体的に押さえておきましょう。
ボーリング孔や試料の位置を知ることは有用です。しかし、こう問いたくなるはずです ── その位置は、周囲の地質・地形・その他の要素とどう関係しているのか。
利用できるデータに応じて、掘削・採取の地点は次のような要素と並べて地図にあらわすことができます。
これらの情報をサイトマップ、ベースマップ、等高線図、カラーレリーフ図などに示せば、複数の要素を同時に検討し、調べる価値のある空間的な関係を見つけやすくなります。
たとえば、サイトマップにボーリング孔の位置をプロットし、既知の断層や地質ユニットと重ねて表示するとしましょう。鉱物濃度の高いボーリング孔が、特定の構造の近くや同じ地質ユニットの中に集まっているとすれば、それらを重ねて見ることで、さらに調べる価値のあるパターンが見えてきます。
あるいは、地形が案件にとってとくに重要な場合もあるでしょう。地表採取の地点をカラーレリーフ図に重ねれば、鉱物濃度の高い場所が、尾根・谷などの地形に対してどこに位置するのかを見られます。地形という手がかりが加わることで、追加の現地調査をどこで行うべきかを判断しやすくなります。

個々の採取地点は、特定の点で何が測定されたかを教えてくれますが、こうも知りたくなるはずです ── 鉱物や元素の濃度は、より広い探査エリア全体でどう変化するのか。地図を使えば、個々の地点を越えて、こうした大きな空間的パターンを調べることができます。
採取地点が十分に密で、地点のあいだの値を内挿で推定できるなら、等高線図やカラーレリーフ図によって、測定された濃度が探査エリア内でどう変わるかを可視化できます。データと目的によっては、濃度に応じて記号を変えたポストマップで、地化学データや分析値の空間分布を示すこともできます。
こうしたさまざまな地図があれば、次のものを見つけやすくなります。
たとえば地化学試料のデータから等高線図を作り、銅の濃度が探査エリア内でどう変わるかを可視化するとしましょう。相対的に高い濃度が近接する複数の試料にまたがって広がっているなら、そのエリアは追加の採取や調査の候補になりえます。
掘削・採取の地点がどこにあり、その周りに何があり、鉱物濃度が探査エリア内でどう変わるのかを把握できれば、重要な空間的パターンが見えてきます。しかしそれは分析の一面にすぎません。その測定値がどれほど意味を持つのかを理解するには、見えている空間的パターンの背後にある値そのものを調べる必要があります。
グラフは、測定された値がどう分布し、どう比較でき、どれだけばらついているのかを可視化することで、鉱物探査データを分析する重要な手段になります。分析をより確かなものにするグラフの使い方を、いくつか見ていきましょう。
個々の分析値や地化学的な測定値は、データセット全体と比べてどうなのかが分かったとき、はじめて意味がはっきりします。ヒストグラムや度数分布図は、測定された濃度の全体的な分布を示すことで、まさにその比較の基準を与えてくれます。
データにもよりますが、これらのグラフは次のような問いに答えてくれます。
たとえば、分析値に目を通していて、ほとんどの試料は濃度が低めなのに、ごく一部の試料だけが飛び抜けて高い値を示していることに気づいたとします。ヒストグラムを使えば、それら高い値の試料が全体の分布に対してどの位置にあるのかを示せます。そのうえで地図に戻り、それらの試料がどこにあるのか、その位置に調べる価値のある空間的なパターンが現れていないかを確かめられます。
分布の全体を調べる必要がない場合もあります。むしろ、特定の試料や地点、鉱物、探査エリアどうしで、鉱物濃度を比べたい場面もあるでしょう。この場合は棒グラフが有効です。測定値を横に並べられるため、どの区分の濃度が相対的に高い/低いのかを見つけやすくなります。
地図上で関心のある地点をいくつか特定し、それらの測定値をもっと直接的に比べたいとしましょう。棒グラフで、それらの地点の鉱物濃度を並べて表示すれば、違いがひと目で分かります。

ふたつの探査エリアの測定値が一見よく似ていても、データ全体で見ると、ばらつき方がまったく違うことがあります。この広がりを把握すれば、特定のエリアやグループの測定値が比較的そろっているのか、大きく散らばっているのかを判断できます。
とくに箱ひげ図は、次のような問いに答えてくれます。
たとえば、複数の探査区域で銅の濃度を比べた箱ひげ図から、ある区域だけ中央値が高く、しかも異常に高い測定値をいくつか含んでいることが分かるかもしれません。そうしたら、それらの試料を地図に落とし、高い値がどこに現れているのか、さらに調べるに値する空間的なパターンを成しているのかを確かめられます。
次にどこを調べるかを決めようとするとき、探査について複数の見方を持っておくことが役に立ちます。地図は、試料・地質的な要素・鉱化のパターンがどこにあるのかを明らかにし、グラフは、濃度がどう分布し、測定値を比べるとどうで、異常がどこにありうるのかを示してくれます。
次の鉱物探査の案件に取りかかるときは、ひとつの図表に重荷をすべて背負わせないでください。地図とグラフを併せて使い、データを複数の角度から探ることで、次にどこを調べるべきかを、より確かな根拠のもとで判断できるようになります。
なお、地図とグラフを併用して明らかにできることは、まだ終わりではありません。「技術データの可視化」シリーズの第4回では、気候変動のデータに目を向け、視点を変えて可視化することが、変わりゆく状態をより良く理解し、伝えるうえでどう役立つのかを探ります。