2026年6月、Mathematica 15がリリースされました。ここでは、一部の新機能をご紹介します。
バージョン 15 の目玉となる新機能です。AI Assistantがすべての Wolfram ノートブックに標準搭載され、設定なしですぐに使えるようになりました。※利用するにはMathematicaのサブスクリプションが有効である必要があります。
新しいノートブックを開くと、画面下部に「チャットバー」が表示されます。やりたいことを自然言語で入力して Enter を押すだけで、内容が AI Assistantに送られ、応答が返ってきます。テキストだけでなく、画像などを貼り付けて送ることもできます。

入力がやや曖昧な場合でも、AI Assistantはその意図を解釈し、読みやすい Wolfram 言語のコードとして提案してくれます。提案されたコードは、「挿入して評価」ボタンを押すとノートブックにそのまま挿入され、すぐに実行できます。自然言語の指示が、確認・編集・再利用が可能な具体的なコードになる点が特長です。

ノートブックのメインの内容に手を加えずに AI と対話したい場合は、ツールバーのボタンからサイドバー内の「サイドチャット」を開けます。サイドバーの幅は、仕切りをドラッグして調整できます。

詳しい使い方についてはAI Assistantを使うをご参照ください。
Claude Code や Codex などの AI 環境から、デスクトップ版 Wolfram システムを呼び出して利用できるようになりました。対応する AI 環境がインストールされていると、起動画面から設定画面(環境設定のAI用のサービスタブ)に進み、検出された AI 環境をまとめて構成できます。


バージョン 14.2 で導入された Tabular フレームワークをベースに、TimeSeries が刷新されました。従来との互換性を保ちつつ、数百万件規模の大規模かつ多様な時系列データを扱えるようになり、多成分の時系列や欠損値の扱いもより高度になっています。対応フォーマットは TimeSeries オブジェクトとして直接インポートでき、概要を素早く確認できる TimeSeriesSummary も追加されました。
また、サーバへのアクセスや地震など、離散的な「イベント」を扱う新しいフレームワーク EventSeries も導入されました。時系列から離散的なイベントを抽出する TimeSeriesEvents、イベントを累積する EventSeriesAccumulate、指定した時刻範囲のイベントを検索する EventSeriesLookup などが利用できます。

「小・中・大」や「男性・女性」のように、数値ではなくカテゴリで表されるデータを、記号的に統一して扱えるようになりました。順序のあるデータを表す Ordinal と、順序のないデータを表す Nominal が追加され、ヒストグラムの作成や、CategoricalDistribution を使った確率計算などにそのまま利用できます。これらは Tabular・TimeSeries・EventSeries の中でも効率的に扱えます。

データへのフィッティングを統一的に扱う新しい関数 ModelFit が追加されました。モデルの「記号的なひな型」を用意し、それにデータを与えることで、パラメータが当てはめられた具体的なモデルが得られます。
指数関数モデル(ExponentialModel)、対数モデル(LogModel)、べき乗モデル(PowerModel)、多項式モデル(PolynomialModel)、周期モデル(PeriodicModel)など多くのモデルに対応し、複数のモデルから最適なものを自動選択することもできます。さらに、最近傍法(NearestModel)、ニューラルネット、決定木(DecisionTreeModel)といった機械学習的なモデルも扱え、Tabular や TimeSeries のデータにもそのまま適用できます。

音符から楽譜全体までを記号的・計算的に表現する機能が追加されました。音高や音符に対して計算や演算を行えるほか、和音、小節(MusicMeasure)、声部(MusicVoice)、楽譜(MusicScore)といった階層で音楽を構成できます。
MIDI ファイルを楽譜としてインポートでき、MusicPlot による可視化や、音域・調の推定(MusicMeasurements)などの計算も可能です。記号的に表現した音楽は、実際の音声としてレンダリングして再生することもできます。

Tabular フレームワークに多くの機能強化が加わりました。
TabularSummary が追加されました。EntityAugmentColumns が追加されました。Around による誤差付きの数値データに対応しました。
PieChart などのチャートの配色が刷新され、より現代的な見た目になりました。PlotStyle オプションが拡張され、BarChart などでも統一的に使えるようになりました。連想(Association)を使って、個々の要素とグループを分けてスタイル指定できます。DistributionChart の主要機能が使いやすくなり、平滑化したヒストグラムやバイオリン形状の表示などが手軽に行えます。BubbleHistogram、周期表上に情報をプロットできる PeriodicTablePlot が新たに追加されました。

複数のプロットを 1 つのグリッドにまとめて表示する PlotGrid が追加されました。共通する軸の目盛りやラベルをできるだけ共有し、無駄なく見やすく配置します。軸を行・列ごとに共有するか全体で共有するかといった調整や、各プロットのアスペクト比・サイズの指定も可能です。

ノートブックの基盤がマルチコア・マルチスレッド対応のものに刷新され、数ギガバイト規模のノートブックも快適に扱えるようになりました。過去のバージョンとの互換性は保たれており、バージョン 1 で作成したノートブックも開けます。
あわせて検索機能も刷新され、Cmd+F / Ctrl+F で開く検索ダイアログでは、入力した瞬間にマッチ件数が表示されます。組版された数式や特殊文字(α など)の検索にも対応し、置換の際には入力部分のみを対象に、生成された出力部分は除外されます。

デスクトップ版のノートブックにサイドバーが導入されました。バージョン 15 では、ノートブックの各種設定をまとめて確認・変更できる「Notebook Properties」サイドバーと、前述の AI Assistantの「サイドチャット」の 2 つの用途で利用できます。

ノートブックの見た目を切り替えられるビジュアルテーマが追加されました。Monokai、Solarized、Dracula といった一般的なテーマに加え、Wolfram Saturated や Stargazer など独自にデザインされたテーマも用意されています。各テーマにはライトモードとダークモードの両方があり、ノートブックごと、または全体に対して適用できます。

長い出力セルを、紙を破いたように途中で省略して表示できる機能が追加されました。セルを選択して Cell メニューの「破れ目で省略を表現」を選ぶと、出力が「切り取られた」状態になり、ドラッグで表示量を調整できます。画像・テキスト・インタラクティブなコンテンツなど、あらゆるセルに適用できます。

ライトモードで作業中に、特定の図だけをダークモードで表示したい場合に使える DarkModePane が追加されました(逆方向の LightModePane もあります)。Pane と同じオプションが使え、軸やラベルなども含めてまとめてダークモードに切り替えられます。

計算の進行状況を表示する Monitor に、1引数形式が追加されました。これまでは監視する変数を明示する必要がありましたが、新しい 1引数形式では Map のような関数をそのまま囲むだけで、進捗状況や完了までの推定時間、計算を中断するボタンが表示されます。Map・Nest・Fold・Table など、主要な関数に対応しています。

非常に多くのオブジェクトを、メモリを節約しながら逐次的に扱える IncrementalObject が追加されました。「まず全体を列挙し、後から選び出す」という考え方でコードを書きつつ、内部では逐次的に処理されるため、膨大な組み合わせの中から条件を満たすものを効率よく探索できます。NextValue で次の値を取り出すことができ、Permutations・Subsets・Tuples・Map・Range などのインクリメンタル版が用意されています。計算途中の状態は記号式として保持されるため、別のコンピュータに移して続きを実行することもできます。

大規模なコードベースでエラーを体系的に扱うための、記号的な例外処理の仕組みが導入されました。ThrowException で名前付きの例外を投げ、最も近い CatchExceptions で受け取ります。RegisterExceptionType を使って例外の階層を定義でき、より一般的な型で複数の例外をまとめて受け取ることも可能です。既存の Confirm / Enclose の仕組みとも連携します。

その他にも多くの機能が追加されています。機能の詳細はこちらよりご確認ください。
スティーブン・ウルフラムによるリリース案内でも様々な活用例が紹介されています。こちらよりご確認ください。