日本語 English
株式会社ヒューリンクス
TEL:03-5642-8385
営業時間:9:00-17:30

Surfer でデータの位置がずれる原因と解決法 — 座標系(Coordinate System)の正しい設定方法

はじめに

Surfer でマップを作成したとき、「読み込んだデータが地図と全然違う場所に表示される」「複数のレイヤーを重ねると位置がずれる」といったトラブルに遭遇することがあります。

その多くの原因は 座標系(Coordinate System)の設定ミス です。この記事では、なぜずれが起きるのかを解説し、正しい設定方法を手順を追って説明します。

なぜデータの位置がずれるのか?

地球上の位置を数値で表す方法は、「どの座標系を使うか」によって大きく異なります。

たとえば、同じ地点(東京タワー)でも:

座標系X(経度 or Longitude)Y(緯度 or Latitude)
WGS84 / JGD2011 / JGD2000(地理座標)139.745435.6586
平面直角座標系 9 系-7,959 m(Easting)-37,874 m(Northing)
旧日本測地系(Tokyo)139.748635.6554
※ WGS84・JGD2000・JGD2011 は同じ ITRF 系・GRS80 楕円体に基づくため、緯度経度の値は(最大でも約 1 m の差で)ほぼ同一です。そのため 1 行にまとめています。

このように、座標系が違えば同じ数値でも表している場所が違います。Surfer はデータに座標系が指定されていない場合、正しく配置できません。

実際に Surfer で検証すると、下図のようになります。同じ XY 値(経度 139.7454・緯度 35.6586)を、①WGS84 と ②Tokyo(旧日本測地系) として Source Coordinate System にそれぞれ指定し、共通の Target Coordinate System JGD2000 / Japan Plane Rectangular CS IX(平面直角座標系 9 系・メートル単位)へ変換して重ねたものです。同じ数値でも両者は離れて配置され、Measure ツールで測定すると約 465.528 m のずれが確認できました。(WGS84 では東京タワー付近の緯度経度ですが、Tokyo (旧日本測地系) として解釈すると麻布台ヒルズ付近になってしまいます)

Surfer での検証:同一の XY 値(139.7454, 35.6586)を WGS84 / Tokyo として平面直角座標系(9 系)へ変換し、Measure ツールで距離を測定 → 両者は約 465.528 m ずれる。

よくあるずれのパターン

  • 国内 GPS データ(JGD2011)と旧測地系データを混在させた → 数十〜数百メートルのずれ
  • 緯度経度のデータを平面直角座標として読み込んだ → まったく違う場所に表示される
  • 座標系を何も設定せずにマップを作成した → レイヤー同士が一致しない

Surfer における座標系の確認・設定箇所

Surfer では、座標系を設定できる箇所が主に 3 つあります。

  • ①マップフレーム全体 → Map プロパティ > Coordinate System
  • ②個別レイヤー → レイヤープロパティ > Coordinate System
  • ③データファイル → インポート時またはワークシートの列プロパティ

基本の考え方

  • マップフレームに「このマップはどの座標系で描くか」を設定する
  • レイヤーに「このデータはどの座標系で書かれているか」を設定する
  • 両者が異なる場合、Surfer がオンザフライで変換して表示する

手順:座標系を正しく設定する

ステップ 1:データの座標系を確認する

まず、読み込もうとしているデータがどの座標系で記録されているかを確認します。

  • 国土地理院のデータ:JGD2011(EPSG:6668)が基本 → Surfer では JGD2000(EPSG:4612)で代替
  • GPS デバイスの生データ:多くは WGS84(EPSG:4326)
  • 古い測量データ・国土数値情報の古いもの:旧日本測地系 Tokyo Datum(EPSG:4301)の可能性あり
  • ボーリング・測量図面:平面直角座標系(JGD2011 は EPSG:6669〜6687)→ Surfer では JGD2000 系の EPSG:2443〜2461 で代替

💡 不明な場合は、データの出典元(機関・機器メーカー)に確認するのが確実です。

⚠️ データが JGD2011 でも、Surfer には JGD2011 が登録されていないため JGD2000 を選びます。理由は後述の「JGD2011 が無くても JGD2000 で代替できます」を参照してください。


ステップ 2:マップフレームに座標系を設定する

  1. マップフレームをダブルクリックして Map プロパティを開く
  2. Coordinate System タブを選択
  3. Set… ボタンをクリック
  4. 座標系ダイアログで目的の座標系を選択
マップフレーム全体に座標系を指定する:Properties – Map の Coordinate System で、マップ全体を描く座標系を設定する。

EPSG コードで検索する場合(最も確実な方法)

  • ダイアログ上部の検索欄に EPSG コードを入力(例:4612
  • 一覧に表示された座標系を選択して OK

🆕 EPSG コード検索は Surfer 31 から対応:ダイアログ上部の検索欄で EPSG コードによる座標系検索ができるのは Surfer バージョン 31 以降です。それ以前のバージョンでは、座標系名(例:JGD2000)やツリーからの選択で指定してください。

📖 EPSG コードが分からないときは検索サイトで調べる
使いたい座標系の EPSG コードが不明な場合は、以下のサイトで地名・座標系名から検索できます。

サイトURL特徴
EPSG.iohttps://epsg.io定番。地名・名称で検索でき地図で範囲も確認可能。https://epsg.io/4612 のようにコード直打ちも可
EPSG Registry(公式)https://epsg.org策定元 IOGP の公式データベース。正確性は最高
Spatial Referencehttps://spatialreference.org各種フォーマット(WKT・Proj4 等)の出力に強い

💡 EPSG.io で「Japan」や「JGD2000」と検索すると、日本の座標系が一覧で確認できます。

⚠️ 重要:Surfer には JGD2011 が登録されていません
Surfer の座標系データベースには JGD2011(EPSG:6668)が収録されていないため、検索しても見つかりません。代わりに JGD2000(EPSG:4612)を選択してください。(理由は後述)

よく使う日本の EPSG コード

座標系名EPSG コードSurfer での扱い
JGD2000(地理座標・緯度経度)4612✅ 登録あり/JGD2011 の代替に使用
JGD2000 / 平面直角 1 系〜19 系2443〜2461✅ 登録あり
旧日本測地系 Tokyo(地理座標)4301✅ 登録あり
WGS84(GPS デフォルト)4326✅ 登録あり
JGD2011(地理座標・緯度経度)6668❌ 未登録 → 4612 で代替(※WKT で取り込みも可)
JGD2011 / 平面直角 1 系〜19 系6669〜6687❌ 未登録 → 2443〜2461 で代替(※WKT で取り込みも可)

※「WKT で取り込み」については後述の「WKT / PRJ ファイルで未登録の EPSG を取り込む」を参照。

JGD2011 が無くても JGD2000 で代替できます

「自分のデータは JGD2011 なのに、Surfer には JGD2000 しかない。ずれてしまうのでは?」と心配になるかもしれませんが、実用上は JGD2000 を選んでいただければ、おおむね問題なくご利用いただけます。

理由は、JGD2000 と JGD2011 は測地基準系(測地成果を定義する枠組み)としては同一 だからです。

  • どちらも ITRF 系・GRS80 楕円体 に基づく同じ測地系
  • JGD2011 は、2011 年の東北地方太平洋沖地震による地殻変動を受けて、東日本の一部地域の成果値(座標値)を改定 したもの
  • 座標系の「定義そのもの」は JGD2000 から変わっていない

「成果値の改定」とは?

📌 成果値(せいかち)とは:国土地理院が公式に定めた、基準点(電子基準点・三角点など)の座標値のこと。測量を行う人は、この値を「正解の位置」として信頼し、それを基準に測量します。

地球のプレートは常に動いており、特に 2011 年の東北地方太平洋沖地震では、東日本の地面が最大で数 m も一気に移動しました。

日本各地の基準点(電子基準点・三角点)には、国土地理院が定めた公式の座標値(=測地成果)が割り当てられています。ところが地面が動くと、記録された座標値と実際の位置がずれてしまいます。そこで国土地理院は、動いた基準点の座標値を実測に合わせて測り直しました。これが「成果値の改定」であり、その成果が JGD2011(測地成果2011) です。

この改定では、1 都 19 県で三角点 43,312 点・水準点 1,897 点 が改められ、日本経緯度原点は東に約 27 cm 移動、日本水準原点は 2.4 cm 沈下しました。改定が東日本の広範囲に及んだことがわかります。

ここで重要なのは、改定されたのは「個々の基準点の座標値」であって、「座標系の定義(枠組み)」ではない という点です。Surfer が座標変換に使うのは定義の部分なので、JGD2000 と JGD2011 で実務上ほとんど違いは生じません。

つまり Surfer 上で JGD2000(EPSG:4612)を指定しても、投影変換や他レイヤーとの重ね合わせにおいて、実務上問題となるような差はほとんど生じません。

これは EPSG(Surfer が座標系変換に使う国際標準データベース)の定義からも裏付けられます。JGD2000 → JGD2011 の変換(EPSG:6698)は、X・Y・Z の平行移動量がすべて 0 メートル=実質的に「変換なし(恒等変換)」として定義されています。座標系変換の実務では、(被災域を除き)両者は 1 m 程度の精度で実質的に等価とみなせる、というのが国際標準(EPSG)が示す関係です。

💡 どの程度の差か:地図・地質図・広域の分布図といった Surfer の一般的な用途では、両者の差は無視できるレベルです。cm 単位の精度が要求される測量成果そのものを扱う場合のみ注意してください。

⚠️ ただし上記のゼロ変換は 地震の影響を受けた北日本(岩手・宮城など東日本大震災の被災域)を対象外 としています。被災域では最大で数十 cm の差が残るため、その地域で高い精度が必要な場合は、後述の WKT 取り込みで厳密に JGD2011 を指定してください。

まとめ:Surfer では JGD2011 のデータであっても、JGD2000(EPSG:4612)/平面直角は 2443〜2461 を選べば、実務上はおおむね問題なくご利用いただけます。

📚 出典

※ 2025 年(令和7年)4 月には、さらに新しい 測地成果2024(JGD2024) が公表されています。

🔧 どうしても JGD2011 そのものを厳密に指定したい場合は、次の「WKT / PRJ ファイルで未登録の EPSG を取り込む」の方法が使えます。

応用:WKT / PRJ ファイルで未登録の EPSG を取り込む

Surfer に登録されていない座標系(JGD2011 など)でも、座標系の定義ファイルを読み込むことで、そのまま Surfer に取り込む ことができます。JGD2000 での代替ではなく、厳密に元の座標系を使いたい場合に有効です。

Surfer の Load from File… は、次の 2 種類の定義ファイルを読み込めます。

  • WKT ファイル(.wkt — Well-Known Text 形式の座標系定義
  • PRJ ファイル(.prj — ESRI 由来の投影定義ファイル(Shapefile 等に付随するものと同じ形式)

💡 いずれも座標系の定義を記述したテキストファイルで、中身は実質的に WKT です。手元に GIS データの .prj ファイルがあれば、それをそのまま読み込むこともできます。

ステップ 1:EPSG.io で定義ファイルをダウンロードする

  1. EPSG.io で目的の座標系を開く(例:JGD2011 → https://epsg.io/6668
  2. ページ下部の Export セクションから形式を選択
  3. WKT.wkt.prj)などの形式でファイルを保存する

💡 EPSG.io では WKT2、ESRI WKT(.prj 向け)など複数の形式が選べます。うまく読み込めない場合は形式を変えて試してください。

ステップ 2:Surfer に定義ファイルを読み込む

  1. 座標系を設定したいマップフレームやレイヤーで Assign Coordinate System(座標系の割り当て)ダイアログを開く
  2. ダイアログ右側の Load from File… ボタンをクリック
  3. 先ほど保存した .wkt または .prj ファイルを選択 して読み込む
  4. 定義が Surfer に取り込まれ、その座標系が適用される
Assign Coordinate System ダイアログ。右側の「Load from File…」ボタンから WKT(.wkt)や PRJ(.prj)ファイルを読み込める。上部の検索欄では EPSG コードでの検索も可能。

これにより、Surfer の標準リストに無い JGD2011(EPSG:6668)や JGD2011 平面直角座標系(EPSG:6669〜6687) も、そのまま指定できます。

ステップ 3:各レイヤーに元データの座標系を設定する

  1. マップ上のレイヤー(コンタ・散布図など)を右クリック → Properties
  2. Coordinate System タブを選択
  3. データが使っている座標系を設定する
個別レイヤーに座標系を設定する:各レイヤー(例:Post レイヤー)の Properties の Coordinate System で、そのデータが書かれている座標系を設定する。


⚠️ 注意:ここで設定するのは「データが元々どの座標系で書かれているか」です。マップフレームに合わせた座標系に変換する必要はありません。Surfer が自動的に変換します。

ステップ 4:表示を確認する

設定後にレイヤーの位置が正しくなっていれば完了です。

ずれが残る場合は:

  • データのコードとマップフレームのコードが正しいか再確認
  • 緯度・経度の列が X/Y に正しく対応しているか確認(緯度→Y、経度→X)

日本でよくあるケース:旧日本測地系と JGD2011 の取り違い

国内で最も多いトラブルが、この 旧日本測地系(Tokyo Datum)と JGD2011 の混在です。両者は同じ緯度経度の数値でも数百 m ずれるため(前述の検証例では約 465.528 m)、手元のデータがどちらの測地系かを見極めることが重要です。「なんとなくずれているけど小さいから気にしなかった」という場合は、このケースを疑ってください。

旧日本測地系かどうかの見分け方

  • 2002 年以前の測量データ → 旧日本測地系の可能性が高い
  • 国土地理院の基盤地図情報(2002 年以降)→ JGD2000 / JGD2011

まとめ:座標系設定のチェックリスト

データの位置がずれたときは、以下を順番に確認してください。

  • データが使っている座標系を把握しているか?
  • マップフレームに適切な座標系を設定したか?
  • 各レイヤーに「元データの座標系」を設定したか?
  • 緯度(Latitude)→ Y 列、経度(Longitude)→ X 列になっているか?
  • 旧日本測地系と JGD2011/2000 を混在させていないか?

関連情報: