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CrystalMaker 11.7 新しい機能

CrystalMaker ユーザーでもある3人の科学者が金属有機構造体 (MOF) の研究で2025年ノーベル化学賞を受賞しました。これを受けて MOF 構造の自動化機能の追加と、パフォーマンスを大幅に向上した CrystalMaker 11.7 をリリースしました。

  • Filled Rings コマンドは色分けされた環を表示する最適な「分子セル」ビューを生成します。それぞれの環の中心にダミー原子(環の化学式でラベル付け)が配置され、平面多面体を定義するために使用されます。これらの多面体は自動的に色分けされます。Filled Rings & Cavities コマンドでは、モデルに半透明の space-filling spheres が追加され、その位置とサイズが示されます。
  • 環の自動測定は有機環を識別し、化学式、分率座標、距離、重心、環の直径、配向などの各環の詳細な出力を提供します。
  • 多面体プロットには新たに「空間充填球」”space-filling sphere” オプションが追加され、キャビティのサイズを視覚化しやすくなりました。
  • アルゴリズムの見直しでエネルギーモデリングが桁違いに高速になりました。「アニーリング」の初期温度をより低くできるようになり、不必要な原子の変位が最小限に抑えられます。
  • その他の変更点には、エネルギー ウィンドウの再設計、結合生成の高速化、XYZ 拡張ファイルのサポート、スーパーセル生成の高速化、システムサポートの更新などが含まれます。

1. MOF オートメーション

CrystalMaker 11.7 では、Ring Automation という新しい概念が導入されました。新しい Transform > Automate > Filled Rings コマンドは、色分けされた環を表示する最適な「分子セ ル」ビューを生成します。それぞれの環の中心にダミー原子(環の化学式でラベル付け)が配置され、平面多面体を定義するために使用されます。これらの多面体は自動的に色分けされます。モデルタイプを Polyhedral に変更すると、塗りつぶしされた環が表示され、その他の原子は ball-and-stick スタイルで表示されます。

新しい Transform > Automate サブメニューには、元々あった Silicate Framework (ケイ酸塩フレームワーク) と Molecular Centroids コマンドを移動し、新たに MOF (金属有機構造体)、ZIF、および、類似構造の処理を支援するために設計した以下の2つのコマンドを追加しました。

  • Filled Rings
  • Filled Rings & Cavities

新たに追加された Filled Rings コマンドは、既存の環 (Ring) 測定と同様の手順に従い、構造内のすべての(有機)環の重心 (セントロイド) を特定しますが、その後、セントロイドを新しいサイトとして追加し、自動的にカスタム多面体ビューに切り替えます。

  • 実際の原子は、いずれも球棒モデルで表示されます。
  • リングセントロイドの各原子は、空白の原子スタイルと半透明の多面体(平面)として表示されます。
  • セントロイドの各サイトは、赤から青へと順に、色の濃淡が増していくように色分けされます。
  • リングセントロイド原子につながる結合は非表示になります(つまり、空白スタイルになります)。

この自動処理により、一連の手動による面倒な作業が不要になります。Filled Rings & Cavities コマンドも同様の手順に従いますが、モデルに半透明の space-filling spheres が追加され、その位置とサイズが示されます。これにより、以前のバージョンの CrystalMaker を使用して Michael O’Keeffe 氏らが普及させた、古典的な「半透明の黄色い球」モデルを作成できます。

2. 環の自動測定

新しい Measure > Rings コマンドは、1リングあたり最大6個の原子を含む有機元素(C、N、S、O、P、および/または B)のすべての環を検索し、各環について以下の特性を出力します:

  • 環の化学式
  • 環状原子の分率座標
  • 各環状原子からセントロイドまでの距離。
  • 各環状原子の面外距離。
  • 環のセントロイドと、環状原子までの平均距離。
  • 環の最大直径
  • 環の最適方向(ミラー指数で示す)

3. 多面体プロットにおける空間充填球

多面体モデルを表示しながら、原子球を正しい「空間充填」サイズで表示できるようになりました。これにより、MOF やその他のオープンフレームワーク材料の空洞サイズの表示が大幅に容易になります。多面体スタイルのポップオーバーを再設計し、この新しい “Space-Filling Atom” スタイルが表示されるようになりました。

4. モデリングの大幅な高速化

アルゴリズムの改善により構造の緩和が大幅に高速化されました。「アニーリング」の初期温度を低く設定できるようになり、不要な原子変位が最小限に抑えられます。我々のテストでは、ルチル (Rutile) スーパーセル(747原子/セル)のショットキー欠陥 (Schottky defect) の緩和が、従来(バージョン11.6.4)よりも27倍高速化されました。

5. 強化された Energy ウィンドウ

構造緩和中に表示される Energy ウィンドウを、今回のリリースで大幅に改良しました。ドロップダウンメニューボタンを備えたツールバーが追加され、表示のカスタマイズが容易にできるようになりました。グラフ領域はマルチタッチに対応し、現在の緩和エネルギーをズーム表示できます。データポイントは、単に順番にプロットされるのではなく、時間の関数としてプロットされるようになりました。グラフの x 軸の単位は、現在のタスクの継続時間に応じて、秒から分、時間へと切り替わります。

6. 結合生成の高速化

結合指定が1つだけの構造(例:「Si-O」)の結合生成が2~3倍高速化されました。さらに、サイト座標番号のよりスマートな生成とキャッシュにより、自動結合生成が約40%高速化されました。

7. XYZ 拡張ファイルのサポート

CrystalMaker は数十年にわたりベーシックな「XYZ」ファイルをサポートしてきましたが、新たに XYZ Extended (拡張) ファイルもサポートするようになりました。これらのファイルには「Lattice=”」タグを含むヘッダー行があり、これによって初めて結晶構造を生成できるようになります。CrystalMakerは、このようなファイルのインポートに加えて、XYZ ファイルを「拡張」(結晶変換マトリックスを含む)または「基本」(分子)形式でエクスポートできるようになりました。

8. システムサポートの更新

このバージョンは macOS 11以降(バージョン26「Tahoe」を含む)に対応するよう更新されました。これには、コードベースの大幅なモダン化、非推奨のシステムコールの削除、および、制御フローの改善が含まれています。なお、MacOS X はサポート対象外となり、macOS 11「Big Sur」以降が現在サポートされるバージョンとなります。

9. その他の変更点

このバージョンには、パフォーマンスの改善とその他のバグ修正が含まれています。

  • 原子、結合、多面体データセットの処理が最適化されたことにより、CrystalMaker ドキュメントの読み込み速度が以前より約35%向上しました。
  • 巨大なスーパーセルを生成する速度が約40倍高速になりました。
  • 球体(2D)、楕円体、多面体用の Atoms Inspector スタイルのポップオーバーを再設計しました。使用頻度の高いスタイルを左上隅に、使用頻度の低いスタイルを下部に配置しました。
  • Atoms Inspector における原子のプレビュー機能を改善しました。多面体を構成する原子アイコンを小さくし、大きく表示される空間充填型原子アイコンとの違いを明確にしました。
  • 大規模な構造をインポートする際に、結合の自動生成をスキップする新しいオプションを追加しました。このオプションは、Settings (Preferences) パネルの General パネルからアクセスできます。
  • Extras インスペクターの開示グループのステータス(オープン/クローズ)は、ドキュメントに保存され、再度開いた際に復元されるようになりました。
  • サイドバーの New Window with Selection コマンドが、状況に応じたクリックに正しく反応するようになりました。
  • Apple が macOS 26.4 で導入したシステムバグにより、インスペクタパネルが圧縮され、一部のインターフェース要素が非表示になるという問題に対する回避策を追加しました。
  • 一部のドキュメントが二重に開かれるのを防ぐための回避策を追加しました。(これは通常、状態復元時に発生します。)