粉末回折シミュレーションとはどのようなものでしょうか?以下の図の上が現実世界です。下が仮想(シミュレーション)世界です。

回折計を通して得られた現実世界の結晶の回折パターンと、シミュレーションモデルを使った回折パターンを一致させます。構造の決定です。これにより、現実の結晶の正確なサイズや角度が結晶モデルによってあらわされたことになり、この構造モデルを土台にして、さまざまな仮説や理論を組みたてることができるようになるわけです。
CrystalDiffract は、粉末回折の世界を親しみやすく楽しくするにするために設計されたスタンドアロン・プログラムです。Windows 版と Mac 版があります。

CrystalDiffract で使用するデータは、結晶構造データと、観測された回折データの2種類です。

取り込んだデータはアイコンで区別できます。表示のオン・オフはチェックボックスで行います。

結晶構造データが手元に無い場合は、CrystalDiffract 付属のライブラリから構造データを取得することもできます。たとえば、Au というキーワードで元素を検索すると、目的のデータ (Gold) を取得できます。


さて、CrystalDiffract で制御できるパラメータにはどのようなものがあるでしょうか? まず、現実世界のパラメータとして、
があります。
バックグラウンドは回折装置に由来するものですが、装置によっては自動的に差し引かれるものもあります。そうでない場合は、

装置の精度、粒子サイズとサンプルの歪みは、ピークの広がり方を左右します。

粉末試料の選択配向によっては、ピークの強さや広がりが大きく変化します。
選択配向 (preferred orientation) :粉末試料の微結晶はランダムに配置されることが望ましいですが、試料ホルダーへの粉末の充填の仕方によっては非ランダムな結晶配向になることがあります。”プレート状”と”ニードル状”の配向をシミュレーションできます。 現在、CrystalDiffract ではリートベルト最適化で選択配向を考慮できません。リートベルト最適化では、ランダムな分布が想定されます。今後のアップデートで追加される予定です。

これも専用のスライダーでシミュレーションできます。
結晶構造モデルそのものを左右するパラメータは、どのようなものがあるでしょうか?これらは、結晶構造に直接関係するパラメータになります。

まず、格子定数です。

CrystalDiffract でこれらのパラメータを変更すると、ピークの位置がどのように変化するかを確認できます。

次に、サイト占有率です。「席」占有率とも言います。つまり、単位格子の特定の位置に占める複数の元素の存在比率になります。


そのほかに、分率座標、等方性異方性変位を変化させることができます。
つぎに、多相のシミュレーションについてです。


その他の機能として、相識別機能 (Phase ID) があります。プログラムにビルトインされたデータベースを利用して、未知のパターンを識別できます。

粉末回折の研究では、複数のファイルを取り扱うことが多いです。CrystalDiffract では、作業に使用した各種ファイルを単一のファイルにまとめて保存することが可能です。また、リッチテキスト形式のノートとして研究の内容や、取り込んだデータの由来などを記載しておけば、後の研究に役立てることができます。

それでは、実際に CrystalDiffract を操作してみましょう。パラメータの変化に応じて回折パターンがどのように変化するかを観察します。

ライブラリから Au と Ag を個別に読み込み、混合物を作成します。各要素のパラメータを変化させて混合物のプロファイルがどのように変化するか確認します。
ライブラリから AuAg 合金を読み込み、サイト占有率を変化させます。