Apr 1, 2026



インフラ計画では、状況の無理解をきっかけに膨大なコストが生じることがあります。トンネル建設であれ、重要構造物の基礎工事であれ、工事をすすめるか否かの判断はいずれの場合もリスク計算になります。とりわけ、浅い地盤の状況が十分に把握されていない場合はなおさらです。地図に記載されていない岩盤の隆起、脆弱な堆積層、あるいは予期せぬ空洞などは、工期を遅らせ、予算を急速に膨らませる恐れがあります。
アレクセイ・シュルギン氏の出番はここからです。
Submara Survey(旧 Geomap Norge)の主任地球物理学者アレクセイ氏の仕事は、土壌や岩盤の奥にあるものを「見える」ようにすることです。地球物理学的な各種測定結果を地下構造の知見として分かりやすく翻訳するわけです。しかし、データの収集はあくまでも問題解決の一部に過ぎません。そのデータが関係者にも理解できるような視覚表現として変換されたときに初めて真価が発揮されます。
データを視覚的に分かりやすいものにするには、ある種の工夫が必要です。その一工夫こそアレクセイ氏にとって大事な仕事になります。彼の顧客はある特定の専門家だけに限らないからです。彼の仕事にかかわる顧客には、スケジュール管理やリスク軽減に重点を置くプロジェクトマネージャーもいれば、岩盤の質や構造的健全性を詳細に評価する必要のある土木技術者もいます。各グループが見ているのは同一の地下構造物ですが、注目する視点は立場によって異なります。アレクセイ氏はそこに知恵を絞るのです。
地震の生データは、専門家でない人にとっては圧倒されるほど複雑です。速度に関する膨大な数値、各種処理パラメータ、技術的な注釈は、すぐにノイズとしてかき消されてしまいます。かといって、データを過度に単純化しても別の問題が持ち上がります。エンジニアが構造設計の判断をするのに欠かせない一歩踏み込んだ情報が失われてしまうことです。アレクセイ氏の解決策は、ターゲットとする顧客を絞り込み、他を排除することではありません。それぞれの視点に立った3つの図表を物語としてデザインし、いずれの立場の顧客にも訴えかけるような最終成果物を作成することです。
アレクセイ氏が最終成果物の冒頭に提示するのは、構造的解釈を示す図表です。この図表では、岩盤と堆積層の違いが一目で分かるような配色を採用しています。プロジェクトマネージャーがこのマップに目を通せば「堅い地盤はどこにあるのか、弱い地盤はどこにあるのか」がすぐに分かります。物語の全体像を視覚的に伝える表現です。
「地質学者でない人でも、この図表を使って『これが堆積物で、これが岩盤です』と説明できます。誰もが納得するでしょう」とアレクセイ氏は語ります。
その下には、最終成果物の技術的な核心である地震波の速度データがあります。土木技術者が身を乗り出すのはまさにこの部分です。速度の値は岩盤の品質や力学的特性に関する洞察を与えてくれます。技術者は抽象的な解釈だけでなく、結論の根拠となる地球物理学的測定値の生データを評価できるのです。隠されているものは何もありません。いつでも必要なデータを参照できます。
一番下は、品質管理(QC)の図表です。データカバレッジ (データの網羅性) の強い部分と疎になる部分を示しています。透明性をもって信頼水準を伝え、信頼性の高い領域と、解釈がより近似的となる領域がこれによって区別できます。この層は、地下構造の見た目を示すばかりでなく、その構造が理解されている度合いをあらわす点で重要になります。

この断面図を説明する「ストーリー」が一旦できあがったら、アレクセイ氏はこのストーリーが実際に測定された結果に裏打ちされたものであることを確実にします。図解には大きな力がありますが、証拠に裏付けられていなければ何もなりません。だからこそ、アレクセイ氏は正確な地上測定データを使って、作成した地下モデルの正当性を裏付けるのです。彼は特定の地点にある岩盤までの正確な深さを断面図に沿ってマークし、それを補間されたサーフェスと並べて、ピンポイントの値を顧客に分かりやすく提示します。
これらの深度マーカーは、単にマップ上に数値を加える以上の役割を果たします。解釈の妥当性を検証し、モデルと測定データが一致している部分を示したり、直接的な証拠によって結論が裏付けられている部分を示します。しかし、アレクセイ氏の作業は地中データだけにとどまりません。彼は、周囲の環境をもこれに組み込みます。つまり、周辺にある地形や樹木、建物の高さを含む LiDAR データセットを地震探査の解釈と組み合わせるのです。地表と地下の情報を重ね合わせることで、統一された図表ができあがります。
こうして統合された情報によって、対話のあり方が一変します。地質学的な抽象論ではなく、現実に即した情報に基づいてアレクセイ氏はクライアントと議論できるようになるわけです。例えば、ある場所では地下60メートルに岩盤があり、掘削には手間と費用がかかる一方、別の場所ではわずか5メートルの深さで、杭打ちや発破による工法がはるかに容易であるといった具合で議論をすすめることができます。このような明確さは、プロジェクトに内在する不確実性を、根拠に基づく判断へと推し進めます。測定データ、解釈モデル、そして、実際の地表面の状況を結びつけることで、アレクセイ氏は地中で何が起こっているのか、そして、それに対してどのような行動ができるのかを視覚的に分かりやすく伝達することができるのです。

アレクセイ氏は、どんなに正確なマップができあがったとしても、顧客がその複雑な結果をより簡単に理解できるような方法を常に模索しています。彼の最大のブレークスルーの一つは、Surfer の専門家 Drew Dudley が主催するウェビナーに参加した後に訪れます。それはアレクセイ氏が地震探査断面図の視覚化について再検討するきっかけになりました。
「私はこう言うようにしました『得られた結果を Surfer で魅力的に表現してみよう』」とアレクセイは語ります。
地震探査のデータポイントが 5 メートルの等間隔で配置されていたため、彼は、各ポイントを Surfer 内部のボーリング孔として取り扱います。彼は地中を連続する波形データであらわす代わりに、断面図に沿って密集する一連のボーリング孔として視覚化しました。その結果、直感的でわかりやすい構造ができあがりました:
この断面図は、抽象的な地球物理学的ダイアグラムではなく、技術者やプロジェクトマネージャーが既に理解しているもの、いわば回廊に沿って並ぶ一連の地盤調査図のようになりました。その効果は即座にあらわれます。
「クライアントはとても驚いていました」とアレクセイは説明します。「仕上がりの良さを口々に褒めてくれました。」
この可視化は自然と腑に落ちるものでした。地震探査の結果を、専門家がその地盤について既に理解している方法に沿う形に翻訳したのです。抽象的な波形を、構造化されたボーリング孔スタイルの図表に作り変えたことで、図解にあらわされる内容が明確になりました。リスクの高いプロジェクトが、あやふやな状態で行き詰まるか、確信をもって推進できるかは、この分かりやすさが分岐点になります。

多角的観点に立つビジュアル表現から、高品質なボーリング調査データに至るまで、アレクセイ氏の仕事は重要な真実を証明しています。それは、地中データは分かりやすく伝えなければ理解されないということです。彼はプロジェクト全体を通じて、複雑な地球物理学的データを、関係者が十分な情報に基づいて意思決定を行えるような信頼性を構築し、不確実性を低減するような図表として翻訳することを目指しています。
構造的図解や、速度データ、品質管理の網羅性をひとつの物語的なアウトプットとして重ね合わせる場合でも、ピンポイントの岩盤深度を付加してモデルに裏付けをおこなう場合でも、地震探査プロファイルを直感的に理解できるボーリング孔に変換する場合でも、関係者にうまく伝わる洞察が得られるという点において結果はどれも同じです。
「最終的な仕上がりは、人目を引き、美しく、カラフルなものにすべきです」とアレクセイは語ります。「マップの仕上がりが良ければ、顧客満足度は格段に上がります。」