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FMEA スコープ分析

FMEA スコープ分析

「自動走行型監視システム」

この記事では、特定のカラーで色分けされた経路を識別して、その経路を自動で走行し、リアルタイムに映像を送信する「自動走行型監視システム」を例に FMEA を考察します。このシステムは、市販製品 (SunFounder Picar-X AI Video Robot Car) の幾つかの機能を組み合わせて、単純なモデルケースとして作成したものです。

システムの4つの機能

このシステムに求められる機能は以下の4つです。

  • 軌道に設定された特定のカラーを識別して走行する。
  • 軌道上に障害物があると、超音波センサーで検知し、走行を停止する。
  • 軌道上から障害物が無くなると、走行を再開する。
  • 走行中はカメラを通じてリアルタイムに映像を送信する。

これら4つの機能の組み合わせで「自動走行型監視システム」が成立します。

まず、スコープ分析で、このプロジェクトで考察する範囲を検討します。具体的には、何をシステム要素としてとりあげるかです。単純なシステムであっても、それを構成する「部品」全てをとりあげると膨大な数に上りますが、全ての部品を取り上げる必要はありません。FMEA のスコープ分析では、どのレベルで FMEA を考察するかを特定し、それに応じてシステム要素を取捨選択する点が重要です。システム全体の機能的観点、および、そこで生じうる故障を記述するのに必要であると考えられる部品がどれであるかを慎重に吟味します。ここがユーザーの主観的判断で結果が左右される「質的分析」に相当する部分になります。

「設計 FMEA 計画策定及び準備」ステップの目的は、プロジェクトに対して実施する FMEA を規定し、また、行われる分析の種類、すなわち、システム、サブシステム、又は、コンポーネントに基づいて、各々の FMEA には何を求め、何を除外するのかを規定することである。(出典:FMEA ハンドブック)

FMEA を考察するレベルは任意です。APIS IQ では、必要に応じて単純なものから複雑なものへ展開することも可能です。

どのようなレベルで作成しても構わないが、重要なのは、主要なエレメントを特定し、それらがどのように相互作用しあい、また外部システムとどのように相互作用するのかを特定することである。(出典:FMEA ハンドブック)

スコープに沿って、重要な部品をピックアップする

ピックアップするシステム要素は、車体を構成する「部品」です。設計図には全ての部品が記載されていますが、システムの機能的観点から主要なものをピックアップします。

システム要素:システムエレメントとは、機能アイテムの個別のコンポーネントを指す。機能、要求事項、又は、特徴ではない(出典:FMEA ハンドブック)

除外する部品を検討する

機能的観点から除外できる部品を吟味していきます。

  • 車体を構成するプレート類(ストラクチャープレート(シャーシ)、ステアリング、各種センサーを固定するプレート類)
  • バッテリーは、システム全体に電源を供給する点で重要だが、システムの機能的観点から電源は常に供給されているという前提でバッテリーはシステム要素に含めないものとする(もちろん、含めることも可能)。
  • 3種類のケーブル、2種類のワイヤー、ボルト、シャシー、支柱は、機能的観点から省略する。

複数の部品をひとつにまとめる

複数の要素が組み合わさって1つの機能を果たす場合、その機能を1つの要素として考ます。

  • 例えば、汎用マイクロコンピュータ (Arduino UNO) と専用ボード (Robot HAT) は、センサーから受信した信号を制御することから1つの「制御ボード」としてまとめることができます。

システム要素の決定

以上の検討の結果、以下の部品をシステム要素としてとりあげることに決定しました。なお、ピックアップするシステム要素は、この時点で完全である必要はありません。作業の進展に応じて、内容を変更したり、追加・削除することも可能です。

  • 後輪
  • モーター
  • 前輪
  • サーボ
  • 制御ボード
  • グレースケールモジュール
  • 超音波モジュール
  • カメラモジュール

それでは、次のステップにすすみます。