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次世代光デバイスの研究

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Igor は、10年ほど前から使用しているが、経験上、フリーズしたことがなく、動作がスムーズで安定していると思う。

 

研究されている内容について教えてください

量子細線レーザーやフォトニック結晶といった微小半導体光デバイスの研究をしてきました。

レーザ材料に10 ナノメートル程度の非常に細い1次元半導体構造を用いる量子細線レーザは、バンド端における電子状態密度が増大するため、従来の半導体レーザを超える高性能が予言されてきました。しかし、ナノ構造ゆえに光学測定が困難で、その検証は未だ不十分なままです。私は、基礎物性を理解する上で基本的なパラメータである量子細線1本の吸収スペクトルを絶対値測定して、バンド端における光吸収の強さを実証しました。

半径100 ナノメートル程度の空気孔を半導体に周期的に配列して作製されるフォトニック結晶は、波である光の特徴を最大限利用することで、従来の光デバイスよりも巧みな光制御を小型素子で実現できます。私は、フォトニック結晶微小共振器で世界最高Q 値を達成してきました。

画像編集例:顕微分光測定による発光イメージ像、電磁界シミュレーションによる電磁界分布解析
Optics Express 17 18093 (2009)より

これらの研究の中で Igor Pro ではどのような データを扱っておられますか?

次世代光デバイスとして量子細線レーザやフォトニック結晶に期待されている高性能、高機能を検証することです。

図1 は、弗素系のガスをプラズマエッチング装置に導入したときのプラズマ発光スペクトルの一例です。毎回のエッチングプロセスで発光スペクトルを比較することで、安定したプロセスを行うことができます。

図2は、フォトニック結晶共振器の電磁界分布のシミュレーション結果です。丸はフォトニック結晶を構成している空気孔を表しています。

図1:プラズマエッチング装置の
プラズマスペクトル例
図2:フォトニック結晶微小共振器の
電磁界分布例

研究はどのように進められ、データが記録されていますか?

デバイスの作製、顕微技術を用いた分光測定、電磁界シミュレーションによる光学特性評価などを行ってきました。様々な場面で Igor Pro を利用してきました。

図3:顕微分光測定系

Igor Pro の用途は何ですか?

主な用途はスペクトルと画像イメージの解析・編集です。読み込むデータの多くはTxt とTiff ファイルです。書き出すデータは PNG, EPS が多いです。

スペクトル解析例:顕微分光測定による発光スペクトル、プラズマエッチングにおけるプラズマ値変化、電子線描画装置などの電流値変化、実験室の温度変化、シミュレーションによる電界強度変化など(x, y)情報を持つデータ全般です。

Igor Pro を使い始めたきっかけは?

もともと研究室の先輩に勧められていたが、敷居が高く感じられたので使っていませんでした。しかし研究が進むにつれ、他のソフトでは苦労する場面が増えるようになりました。最終的に大量のスペクトルデータを一括処理・編集するプログラム作成が必要となり使い始めました。

Igor Pro の使用感、良い点と悪い点は?

使用感

  • 10年ほど前から使用しているが、経験上、フリーズしたことがなく、動作がスムーズで安定していると思います(アップデートをしたことがないので、それに伴うバグの発生頻度は知らないですが)。

良い点

  • 高度な機能と簡易な機能が上手く両立していると思う。
  • gnuplot のようにコマンド文でデータや図をいじれるのが楽です。
  • グラフの体裁を細かく変えられるので論文などに用いる図の作成に便利。
  • 主要な保存形式が装備されているので、イラストレータ、パワーポイントと併用でき、テキストデータのコピーアンドペーストもエクセルとの間で可能。
  • 使い方を覚えれば自作マクロの作成が容易で、汎用性も高いです。
  • 大きいTxt ファイルも読み込めます。

悪い点

  • ヴィジュアルが他のソフトと異なるので(特に簡易ボタンが少ない)初心者は使い始めるのに抵抗感があります。特にコマンド文を打ち込むことに慣れていない人は入りにくいかも。使い続けないと、他のソフトとの優劣を実感しにくいと思います。

Igor Pro を使って開発されたプログラムを用いた研究成果があればご紹介ください

単一量子細線の透過スペクトルデータから、吸収スペクトルを導出するプログラムを作成しました。以下図を用いて手順を簡単に紹介します。

  1. 顕微分光測定(図3)により単一量子細線レーザの透過スペクトルを入射レーザ波長を変えながら数千本取得。
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  2. 取得した数千本のスペクトルデータ(図4)を1つのテキストファイル(数10MB 位)にして Igor に読み込む。
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  3. 自作したマクロ(20 行位)で、各スペクトルのピーク波長(x情報)とピーク積分強度(y情報)を抽出して、透過率スペクトルを自動作成(図5(a))。
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  4. 自作したマクロ(50 行位)で FP 振動を含んだ透過率スペクトルを吸収係数スペクトルに変換(図5(b))。
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図4:測定で得られた透過スペクトルの一部(200 本)
図5:(a) 図3のデータを自作したマクロで処理して得られた透過率スペクトル.(b) 透過率スペクトルをマクロ処理して得られた吸収スペクトル。縦軸は量子細線1本による吸収を表す。Applied Physics Letters 86 243101 (2005) より。
朝日新聞2005 年6 月28 日号でも成果が紹介されました。

どのような研究者の方に進められる製品ですか?

大量のスペクトル(2次元)データ、イメージ(3次元)データを扱う研究者。特にそのデータを解析するためのプログラムを自作している研究者。このような研究者が多い研究室は、ライセンス契約をして、研究室全員で Igor Pro を標準装備すると研究成果の共有、受け継ぎがスムーズになると思われます(私の研究室ではそうしている)。

 
 
 

本事例作成に関し、高橋先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2011 年6 月)
※所属・役職は取材当時のものです。