19.7 三元配置分散分析 (ANOVA)

三元配置 (Three Way) すなわち3因子の ANOVA (分散分析) を使うのは:

実験群に対する単一または2因子の効果を考慮する場合は、一元配置分散分析または二元配置分散分析を使います。詳しくは、一元配置分散分析 (ANOVA)、または、二元配置分散分析 (ANOVA) をご覧ください。非正規母集団から抽出された標本の3因子を比較するノンパラメトリック的手法は SigmaPlot には用意されていません。お持ちのデータが正規分布に従っていない場合は、トランスフォーム機能を使用して、そのデータを分散分析の前提条件を満たすように変換することができます。標本サイズが大きく、実行するのがノンパラメトリック検定である場合、Rank トランスフォームを使用して観測値を順位に変換したあと、その順位に基づいて三元配置分散分析を実行します。

  1. 三元配置分散分析について
  2. 三元配置分散分析を実行する
  3. 三元配置分散分析のデータを配置する
    1. 欠損データと空白セルデータ
    2. 連結データと非連結データについて
    3. ワークシートデータを入力する
  4. 三元配置分散分析オプションを設定する
    1. Options for Three Way ANOVA: Assumption Checking
    2. Options for Three Way ANOVA: Results
    3. Options for Three Way ANOVA: Post Hoc Tests
  5. 三元配置分散分析を実行する
  6. 三元配置分散分析の多重比較オプション
  7. 三元配置分散分析の結果を解釈する
    1. 結果の説明
  8. 三元配置分散分析のレポートグラフ
    1. Three Way ANOVA レポートのグラフを作成する方法

 

1. 三元配置分散分析について

三元配置 (three way) すなわち3因子の分散分析では、実験群ごとに異なる3つの実験因子 (experimental factor) があります。各因子水準に従って群分けされた標本間の差と因子間の交互作用を検定するには、3因子の計画を使います。

3因子の分散分析では次の4つの仮説を検定します:

三元配置分散分析 (Three Way ANOVA) は、すべての標本が分散の等しい正規分布母集団から抽出されていることを前提条件とするパラメトリック検定です。

 

2. 三元配置分散分析を実行する

三元配置分散分析 (Three Way ANOVA) を実行するには:

  1. ワークシートに適切なデータを入力または配置します。詳しくは、三元配置分散分析のデータを配置する をご覧ください。

  2. 必要があれば、Three Way ANOVA オプションを設定します。

  3. Analysis タブをクリックします。

  4. SigmaStat グループにある Tests ドロップダウンリストから以下を選択します:

    Compare Many GroupsThree Way ANOVA

  5. 検定を実行します。

  6. レポートグラフを作成します。詳しくは、三元配置分散分析のレポートグラフ をご覧ください。

 

3. 三元配置分散分析のデータを配置する

三元配置分散分析 (Three Way ANOVA) では、各因子水準に従って群分けされた標本間の差と因子間の交互作用を検定します。

例えば、異なる2種類の薬品の作用について性別による効果の違いを期間を分けて分析するような場合、性別 (gender)、薬品の種類 (drugs)、期間 (time period) がその因子となり、男性 (male) と女性 (female) が Gender 因子の各水準に、薬品の種類 (Drug A と Drug B) が Drug 因子の各水準に、日数が Time Period 因子の各水準に、水準間 (Gender, Drug, Time Period) の異なる組み合わせが群、すなわちセルになります。

三元配置分散分析のデータ
Gender Male Female
Drug Drug A Drug B Drug A Drug B
Time Period Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Reaction 1
13
25
2
14
26
3
15
27
4
16
28
5
17
29
6
18
30
7
19
31
8
20
32
9
21
33
10
22
34
11
23
35
12
24
36

因子に該当するのは、性別 (gender)、薬品の種類 (Drug)、および、期間 (Time Period) です。各因子の水準は、それぞれ Male/Female, Drug A/Drug B, および Day 1, 2, 3 になります。

お持ちのデータに欠損データポイントがあったり、セルが丸ごと空白になっている場合は、SigmaPlot によりこれが検出され、適切な処理が実行されます。詳しくは、欠損データと空白セルデータ をご覧ください。

三元配置分散分析で有効なデータフォーマットの例

列1は第1因子のインデックス、列2は第2因子のインデックス、列3は第3因子のインデックス、そして、列4がデータになります。

 

3.1 欠損データと空白セルデータ

Three Way ANOVA の理想的なデータは、完全に釣り合いがとれているものです。例えば、ある実験における各群またはセルの観測数がそれぞれ同じで、欠損データが無いものです。ただし、欠損値や釣り合いがとれていないデータがあっても、それらは自動的に SigmaPlot によって適切な処理が行われます。

Male, Drug A, Day 1 セルに欠損値がある三元配置分散分析のデータの例
Gender Male Female
Drug Drug A Drug B Drug A Drug B
Time Period Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Reaction 1
– –
25
2
14
26
3
15
27
4
16
28
5
17
29
6
18
30
7
19
31
8
20
32
9
21
33
10
22
34
11
23
35
12
24
36

このような状況では、一般線形モデルによるアプローチを使用します。

 

空白セル (Male/Drug A, Day 1) を持つ三元配置分散分析のデータ
Gender Male Female
Drug Drug A Drug B Drug A Drug B
Time Period Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Reaction – –
– –
– –
2
14
26
3
15
27
4
16
28
5
17
29
6
18
30
7
19
31
8
20
32
9
21
33
10
22
34
11
23
35
12
24
36

2因子の分析、または、因子間に交互作用がないことを前提条件とする分析を使用することができます。

交互作用がないという前提条件では、各処理の主効果が個別に分析されます。

DANGER :3つの因子間に交互作用がないことを三元配置分散分析の前提条件にするのは危険性が伴います。状況によっては、とりわけ交互作用効果を調べることに関心がある場合、この前提条件によって分析そのものが無意味になることがあります。

 

3.2 連結データと非連結データについて

空白セルが1つ以上ある場合、交互作用がないという前提条件は、2因子の分析で常に許容される訳ではありません。計算を実行するためには、空白でないセルが幾何学的に連結 (geometrically connected) している必要があります。非連結データについては、三元配置分散分析を実行することはできません。

データを2次元グリッドに配置したとき、占有する全てのセルは、空白セルでは向きを変えずに縦または横方向に一続きの直線を描画できるように接続している必要があります。

連結データを通る縦および横方向の直線を描画した例。

なお、上記の要件に合致しない場合でも、そのデータが非連結であることを意味する訳ではありませんので注意してください。例えば、以下に示す表のデータは連結していることになります。

一連の縦または横方向に直線を描画できない連結データの例。

SigmaPlot は自動的にこの連結をチェックします。もし、三元配置分散分析で非連結データが見つかった場合は、SigmaPlot により、この問題を二元配置分散分析として取り扱うよう提案されます。二元配置分散分析でも非連結データが見つかった場合は、一元配置分散分析が実行されます。

非連結データの例
Gender Male Female
Drug Drug A Drug B Drug A Drug B
Time Period Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Day
1
Day
2
Day
3
Reaction – –
– –
– –
– –
– –
– –
– –
– –
– –
4
16
28
5
17
29
6
18
30
7
19
31
8
20
32
9
21
33
– –
– –
– –
– –
– –
– –
– –
– –
– –

このデータは、幾何学的に接続していませんので (このデータには共通する因子水準がありません)、三元配置分散分析を実行することも、交互作用がないという前提条件で実行することもできません。

 

3.3 ワークシートデータを入力する

三元配置分散分析を実行できるのは、3因子のインデックス付きデータに対してのみです。3因子のインデックス付きデータの配置は4列になります。すなわち、三元配置のインデックス付きデータポイントは、第1の因子を1列目に、第2の因子を2列目に、第3の因子を3列目に、データポイントを4列目に配置して構成します。

 

4. 三元配置分散分析オプションを設定する

Three Way ANOVA オプションを使用するのは:

 

Three Way ANOVA オプションを変更するには:

  1. 検定オプションを変更したあと検定を実行するにあたり、検定の実行前にデータを選択しておきたい場合は、使用するデータをポインターでドラッグします。

  2. Analysis タブの SigmaStat グループにある Select Test ドロップダウンリストから Options をクリックします。 Options for Three Way ANOVA ダイアログに以下の3つのタブが表示されます:

    1. Assumption Checking:データの正規性と等分散性の基準を緩和または厳格にするには、このパラメータを調整します。詳しくは、Options for Three Way ANOVA: Assumption Checking をご覧ください。

    2. Results:レポートにデータの統計サマリーと信頼区間を表示したり、ワークシート列に残差を保存するかを指定します。詳しくは、Options Three Way ANOVA: Results をご覧ください。

    3. Post Hoc Tests:検出力 (Power)、すなわち、検定の感度を計算するかを指定します。詳しくは、Options Three Way ANOVA: Post Hoc Tests をご覧ください。

Tip:検定オプションを変更したあと検定を実行するにあたり、検定の実行前にデータを選択しておきたい場合は、使用するデータをポインターでドラッグします。

設定したオプションの内容は、SigmaPlot を次回使用するときも保持されます。
  1. 検定を継続するには、Run Test をクリックします。検定ウィザードの Select Data パネルが表示されます。

  2. 現在の設定内容を適用して、オプションダイアログを閉じるには、OK をクリックします。

 

4.1 Options for Three Way ANOVA: Assumption Checking

Options ダイアログボックスの Assumption Checking タブを選択すると、Normality (正規性) と Equal Variance (等分散性) に関するオプションが表示されます。正規性 (Normality) の前提条件の検定では、母集団が正規分布に従っているかをチェックします。等分散 (Equal Variance) の前提条件の検定では、各群の平均値の周りのばらつきをチェックします。

Options for Three Way ANOVA ダイアログボックスの Assumption Checking オプションの表示例。

 

Note:データの分布が極端な状態にあり、これらの手法では検定できない場合があります。たとえば、ルビーンの中央値検定 (Levene Median test) では、分散の大きさが数次の場合は差の検出ができません。このような条件の場合は、前提条件の自動検定に頼らずにデータを視覚的に調べることで容易に見分けることができます。

 

4.2 Options for Three Way ANOVA: Results

Options for Three Way ANOVA ダイアログボックスに Summary Table, Residuals オプションを表示した例。

 

 

4.3 Options for Three Way ANOVA: Post Hoc Tests

Power と Multiple Comparisons を表示した Options for Three Way ANOVA ダイアログボックスの例

 

Note:多重比較が開始されると、Multiple Comparison Options ダイアログボックスが表示され、多重比較の手法を選ぶよう指示されます。

 

5. 三元配置分散分析を実行する

検定を実行する前にお持ちのデータを選択しておきたい場合は、対象となるデータをマウスポインタでドラッグしておきます。

  1. Analysis タブをクリックします。

  2. SigmaStat グループにある Tests ドロップダウンリストから次を選択します:

    Compare Many GroupsThree Way ANOVA

    The Three Way ANOVA — Select Data パネルが表示されます。
    Three Way ANOVA — Select Data ダイアログボックス

  3. Selected Columns リストに別のワークシート列を割り当てたい場合には、ワークシートで直接その列を選択するか、Data for Data ドロップダウンリストからその列を選択します。

    Selected Columns リストの一行目に割り当てられるのは最初に選択した列で、以後同様に列を選択するごとにリストの2行目以降に割り当てられてゆきます。各行には、選択した列の番号またはタイトルが表示されます。ワークシートの3列を最低限選択するよう指示されます。

  4. 選択した内容を変更するには、リストの割り当てを選択したあと、ワークシートから列を選択しなおします。Selected Columns リストの内容をダブルクリックすることによって、列の割り当てを消去することもできます。

  5. Finish をクリックすると、Three Way ANOVA が実行されます。 次の場合は、Three Way ANOVA レポートが表示されます:

    1. 正規性と等分散性を検定するよう選択し、お持ちのデータがどちらの検定にも合格 (Pass) した場合。

    2. お持ちのデータに、欠損データポイントや欠損セルがない場合、すなわち、釣り合いが取れている場合。

    3. 多重比較を実行しないように選択している場合、または、P 値が有意なときだけ多重比較を実行するよう選択しており、P 値が有意でない場合。

    正規性と等分散性を検定するよう選択しており、 お持ちのデータがどちらの検定にも合格しなかった (failed) 場合、 そのまま検定を続けるか、または、データを変換したあと、その変換したデータに対して Three Way ANOVA を実行するかを選択できます。 お持ちのデータに欠損データポイント、欠損セルがある場合、すなわち、釣り合いが取れていない場合、適切なプロシージャを実行するよう指示されます。

 

6. 三元配置分散分析の多重比較オプション

Three Way ANOVA Options ダイアログボックスで、多重比較を実行するよう選択しており、3つの因子のいずれか、または、3因子の間の交互作用について、ANOVA で算出された P 値が、多重比較のトリガーとなる P 値と等しいか小さかった場合、Multiple Comparison Options ダイアログボックスが表示され、多重比較の検定法を指定するよう指示されます。

ThreeWay ANOVA の Multiple Comparison Options ダイアログボックス

 

このダイアログボックスには、3つの実験因子の P 値と因子間の交互作用の P 値が表示されます。選択できるオプションは、Options ダイアログボックスで指定した値と同じか小さい P 値を持つもののみです。選択されたオプションをクリックすることで、その因子の多重比較検定を無効にすることができます。いずれの因子も選択していなければ、多重比較の結果はレポートされません。

Three Way ANOVA で選択できる多重比較の検定法には以下の7種類があります:

Multiple Comparison Options ダイアログボックス。 対照群 (Control Group) を選択するよう指示されます。

Three Way ANOVA で選択できる多重比較には2つのタイプがあります。選択できる比較タイプは、選択した多重比較検定法によって変わります。

2つの因子を個別に比較する場合、一方の因子内の各水準が、他方の因子とは無関係にそれぞれ比較されます。これらの結果は、交互作用が統計的に有意でないときに使用します。

交互作用が統計的に有意であれば、各実験因子の水準間の多重比較を解釈しても意味がありません。そのような場合、SigmaPlot によって全てのセル間の比較を実行するよう提案されます。

両比較結果は、例えば、それぞれの群の間に検出できる差があるか否かによって、同系の異なる群の対ごとに一覧表示されます。不確実性からの影響を受けない統計的検定はありませんので、場合によっては多重比較プロシージャによる群分けが判然としないこともあります。

 

7. 三元配置分散分析の結果を解釈する

完全な Three Way ANOVA レポートには、各因子とそれらの交互作用に関連する変動をあらわす分散分析表が表示されます。この表に表示される内容は、自由度 (DF: degrees of freedom)、平方和 (SS: sum of squares)、データテーブルの各要素の平均平方 (MS: mean squares)、および、F 統計量とそれに対応する P 値です。

Three Way ANOVA のレポート例

 

因子別の最小二乗平均 (Least square means) と3つ全ての因子を組み合わせた最小二乗平均のサマリー表を作成することも可能です。この結果とそれ以外の結果は、Options for Three Way ANOVA ダイアログボックスで有効にすることができます。選択したチェックボックスをクリックすることで、検定オプションを有効または無効にすることができます。オプションに設定した全ての内容は、SigmaPlot を次回起動したときも引き継がれます。

また、多重比較の表を作成することも可能です。多重比較の結果についても、Options for Three Way ANOVA ダイアログボックスで指定します。多重比較で使用される検定法は、Multiple Comparison Options ダイアログボックスで指定したものです。

 

7.1 結果の説明

数値による結果に加えて、拡張された結果の説明が表示されることがあります。この説明テキストは、Options ダイアログボックスで有効または無効にすることができます。

表示される小数点以下の桁数についても Options ダイアログボックスで指定できます。

Note:欠損データが存在する場合、これらの値を見積もる最良の方法は、一般線形モデル (general linear model ) を使用して自動的に計算することです。

 

8. 三元配置分散分析のレポートグラフ

Three Way ANOVA の結果を使用して以下に示すグラフを4つまで作成できます:

 

8.1 Three Way ANOVA レポートのグラフを作成する方法

  1. Three Way ANOVA test レポートを選択します。

  2. Report タブで、Results Graphs グループにある Create Result Graph をクリックします。

    Create Result Graph ダイアログボックスが表示され、その中に Three Way ANOVA の結果で利用できるグラフのタイプが表示されます。

  3. Graph Type リストの中から作成したいグラフタイプを選択して、OK をクリックします。選択したグラフがグラフウィンドウに表示されます。