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素粒子物理学の研究と教育及び参考書執筆


東北大学学術研究員/
ニュートリノ科学研究センター/
末包 文彦 先生

とても複雑な式の因数分解や、行列の固有値や固有ベクトル計算など様々なパターンの計算を安定した動作で計算でき、式を簡略化するコマンドもあって重宝しています。一方で数値計算、図やグラフの描画も強力です。


業務とご研究の内容について、お教えください

ニュートリノと呼ばれる素粒子の実験的研究をしています。特にニュートリノ振動と呼ばれる現象の検出と測定を通して、素粒子物理学の発展に寄与しています。また大学・大学院での講義を数々行ってきました。それらに関連して参考書の執筆も行っています。

図1:フランスで⾏ったDouble Choozニュートリノ実験装置.直径5.5m, 深さ5.5m.原⼦炉ニュートリノ振動の測定を⾏った.⽇本グループは,周囲に設置している400本の光センサー(PMT)を担当した.

 

Mathematica をどのような場面で使用されていますか?

主に複雑な式のシンボリック計算に使用しています。数百項からなる式の変形を、計算方法をいろいろ指定して行わせています。計算結果は、論文・参考書執筆や講義に使います。計算結果を書くだけでなく、 Mathematicaを使ったなど、計算方法の説明を書くこともあります。また、図やグラフを描かせて、それを原稿に利用することもあります。

式の手計算の間違いのチェックに使っています。式に含まれるパラメータに乱数を代入して数値計算させ、変形前の式と、変形後の式で計算結果の数値が同じかどうかを確かめます。もし同じでなければ、変形の各ステップでの数値を確かめ、計算間違いをしたステップを知ることもできます。

式が複雑すぎて、自分では数学的に証明のできない命題を乱数を使用して確かめたりします。例えば、ある式の値が常に正であることを確かめるため、10,000パターンの乱数を代入して計算させ、その全ての結果が確かに正であることを確認したりしたこともあります。

図2:Mathematicaのノートブックのスクリーンショット.3種類のニュートリノ混合の計算式の⼀部. この式の値は正と期待されるが,このスクリーンショットで⾒られるよう,10,000パターンの乱数を代⼊することにより,それを確認した.

 

Mathematica を使い始めたきっかけは?

1990年頃、研究のためアメリカのシリコンバレーにある研究所(Stanford Linear Accelerator Center)に滞在しました。その時、研究所のPCにMathematicaがインストールされていました。式のsymbolicな変換ができることに非常に驚き、それ以来使用しています。

 

Mathematica の魅力とは?

複雑な式のsymbolicな計算ができること。因数分解させたり、行列の固有値や固有ベクトルを計算させたりするなど様々なパターンの計算ができること。直感的に式を簡略化するコマンドもあり、重宝しています。また数値計算も可能で、パラメータに乱数を代入することで、手計算の正しさを確認することもできます。図やグラフを簡単に書くことができることも便利です。 動作が安定していることも魅力の一つです。

 

今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

  • 今後も論文・参考書執筆などの予定があり、Mathematicaのお世話になると思います。
  • FullSimplifyをよく使いますが、その結果をもっと改善してほしい(自分の使い方が悪いのかもしれませんが)。
  • 計算ではないですが、簡単な数式エディターを開発していただきたい。ワードやパワポ上で式をコピペ+手変換して手計算を進めることが多いですが、使い勝手のよい数式エディターを探しています。

 

“Neutrino Oscillations”, Springer
    図3:拙著,”Neutrino Oscillations”, Springer 出版で紹介したMathematicaの使⽤例

 

 

 

 

本事例作成に関し、末包先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2024 年6 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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