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岡山大学・Mathematicaで広がる研究の可能性
–医療放射線技術分野におけるデータ解析–


岡山大学学術研究院/
保健学域 放射線技術科学分野/
淺原 孝 先生

豊富な組み込み関数と初心者にも使いやすいインターフェースだと思います。アイデア次第で無限の可能性を秘めているList/Table関数を使いこなして,多くの研究をMathematicaを用いて行いたいです。


業務とご研究の内容について、お教えください

大学の講義では,診療放射線技師の養成課程の学生に対して,X線CT検査の原理や撮影技術の授業を行っています.研究では,定量的な画像診断を実現できる新しい医用画像を生成したり,被ばく線量の解析を行っています.市販装置の設計の範囲を超えた,自由な発想を実現させるために,Mathematicaを用いて独自の解析アルゴリズムを構築し,研究に役立てています。

 

Mathematica をどのような場面で使用されていますか?

CT画像を用いた研究では,大学病院で実際に臨床使用されているCT装置を用いて実験を行っています。様々な模擬物質で構成される模型や実際の患者さんのデータなどが研究対象です。例えば,CT装置から出力した2つの異なるX線エネルギーに対する画像(エネルギー画像)を,Mathematicaを使って解析します(図1)。減弱量の情報を使って物理学的な解析を行うと,被写体の実効原子番号をピクセル毎に解析でき,実効原子番号画像が得られます。このような画像解析は,臨床用のソフトウェアには必ずしも搭載されていないので,Mathematicaで解析プログラムを作成することで,独自の研究を行うことができます。また,市販の放射線線量計を組み合わせて,X線の入射角度を解析することができるユニークな機能を持たせた検出器の開発も行っています(図2)。一般的には,X線の入射角度ごとに信号値が異なること(角度依存性)は解決すべき問題ですが,この研究では逆の発想をして,角度依存性を意図的に誇張させた2台の検出器で信号を取得することで入射角度を解析します。被ばく線量解析のために中央の検出器も使用しますが,3台の検出器の時系列データを処理した複雑なデータ解析には,Mathematicaを用いたプログラミングが必要不可欠です。

図1:Mathematicaで解析した実効原子番号画像の例

図2:被ばく線量測定に関する研究.3台の検出器の信号をMathematicaで解析することで,X線の入射角度を算出する

 

Mathematica を使い始めたきっかけは?

学部学生のときに卒業研究で配属された研究室(現 金沢大学 林 裕晃教授)で使い始めたことがきっかけです。先生や先輩方にコーディングを教わりながら,真っ白なノートブックに複雑な解析アイデアが実現していく様に,感動を覚えました。学位取得後も出身研究室とは研究協力関係にあり,皆がMathematicaを使っているため,頻繁に技術交流を行っています。

図3:出身研究室(金沢大学 林研究室)のメンバーとの集合写真

 

Mathematica の魅力とは?

豊富な組み込み関数と初心者にも使いやすいインターフェースだと思います。解析に躓いたときには思いがけない組み込み関数に助けられることもあり,使いこなすにはまだまだ修業が必要だと感じています。アイデア次第で無限の可能性を秘めているList/Table関数を使いこなして,多くの研究をMathematicaを用いて行いたいです。

 

今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

計算速度の向上を期待します.数百枚に及ぶ大量の医用画像を処理することもあるため,マルチコアCPUを搭載したワークステーションで計算を行っており,Mathematicaには複数のCore Extensionを追加しています。さらに高速化できれば臨床画像の解析をより効率的に行えます。また,開発したMathematicaノートブックをexeファイル形式で個別プログラム化できれば,多くの臨床医との共同研究がしやすくなると感じています。

 

本事例作成に関し、淺原先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2024 年8 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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