24生存分析
Survival Analysis

本章で取り扱うトピックは以下のとおりです。

  1. 5つの生存検定
  2. 生存分析のデータフォーマット
  3. 1群の生存分析
  4. ログランク生存分析
  5. ゲーハン=ブレスロー生存分析
  6. コックス回帰
  7. 生存曲線グラフの例
  8. 故障、打ち切り値、および、タイ

生存分析 (Survival analysis) で検討する変数は、ある事象の発生にいたる経過時間です。生存 (survival) という言葉は、もともと死 (death) の発生に由来するものですが、生存分析で取り扱う研究の事象は必ずしも死とは限りません。血管移植組織が閉塞するまでの時間や、マウスの足蹠 (footpad) が感染により肥大するまでの時間といった、何らかの事象が発生するまでの任意の時間を対象とすることができます。もちろん、医療や生物学の分野である必要もありません。例えば、モーターが故障するまでの稼働時間を対象とすることもできます。ここでは整合性をはかるため、生存と死 (すなわち故障の発生) を取り扱うことにします。

限られた研究期間においては、死が発生しないことや、他の原因で患者が死亡する場合、あるいは、患者が他の地方に転居する場合もあります。死が発生しなくても、研究から外れるまではその患者は生存していたという事実をもって、この情報を利用できます。患者におけるこのような事態を打ち切り (censored) と言います。この表現は、観察から研究データが脱落することをあらわす censored from observation に由来します。打ち切り値の例としては、研究の終了前に患者が地理的に他の場所へ転居した場合、研究の終了時点で患者が生存している場合があります。Kaplan-Meier 生存分析では、故障の発生 (死) と打ち切りの両方の値が含まれます。