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次世代電子陽電子衝突器の研究

東北大学 名誉教授/
バレンシア大学 客員教授
山本 均 先生

素粒子物理学の研究及び教育において、Symbolic Manipulationと数値計算、図や3D表示、動画の作成などでMathematicaが活躍しています。



業務 と ご研究の内容について、お教えください

素粒子物理学実験、特に高エネルギー電子陽電子衝突器に関する研究を行っています。

現在の素粒子理論において全ての素粒子の質量の起源となっているヒッグス粒子は2012年に発見されましたが、理論にはさまざまな問題があり、ヒッグス粒子がそれらの問題を解く鍵になると考えられています。それゆえにヒッグス粒子を綿密に研究することが次世代加速器の最重要課題であるとされています。

そのためにはヒッグスファクトリーと呼ばれる電子陽電子衝突器が最も適しており、現在世界で4つの候補が挙がっていますが、中でも電子とその反粒子である陽電子を直線に加速して正面衝突させる国際リニアコライダー(ILC)は将来エネルギーを2倍以上に拡張する可能性を担保しているなどの利点をもっています。ILCは巨大な施設ですので政治が関与せざるを得ませんが、私はそれを研究者の立場から推進する活動をしています。



Wolfram 製品をどのような場面で使用されていますか?

研究と教育でいろいろな用途で使っています。

研究では、素粒子の反応断面積や崩壊率の計算、ILCにおける新粒子の質量やスピンなどの測定精度の評価、そして加速器の要素の工学設計です。工学設計では、ビームパイプに力を加えた時の強度評価、二重パイプの間に冷却水を流した時の冷却の評価、ビームパイプの内部から生じるX線を閉じ込めるためのコーテイングの設計など。また、講演に使う図や動画の作成にも使っています。

例えば、RF空洞を使った電子の加速の原理を示す動画ではMathematicaのアニメーション機能が便利です。教育面でも、講義に使う図や動画の作成や計算式の確認などさまざまな目的で使用しています。具体的には、無重力空間に浮かんだ棒に球が当たって棒が回転しながら飛んでいく運動の解析と動画表示、紐に1端がぶら下がった棒の重力場内での運動など、動画だと直感的に把握しやすいものが多くあります。また、場の量子論でラグランジアンから運動方程式を導出する際にSymbolic Manipulationが役に立っています。


図1:加速空洞による荷電粒子の加速の仕組み。電場は左右に振動しているが、粒子は常に右に押されている。

 

図2:紐につるされた棒の重力内での運動。

 


Wolfram製品を使い始めたきっかけは?

Mathematicaの創作者であるStephan Wolframとは1978年にカリフォルニア工科大学の大学院に同時に入学し、机も同じ部屋でほぼ隣同士でした。

彼は素粒子理論、私は素粒子実験と専門は違いましたが、彼が開発している Symbolic Manipulation Programについては時々話を聞いていて興味を持っていました。

ある時「開発はどんな様子?」と聞いたら「6j symbol のプログラムをやっている」と言っていましたが少々苦労していた様子。その後Mathematicaが一般に手に入るようになった時かなり早い時期に買ったと記憶しています。


Wolfram製品の魅力とは?

Symbolic Manipulationと数値計算、そして図や動画などの作成が統合された形で同じ場所でできるということは大きな魅力です。

カラーの3D表示では簡単にインパクトのある図が作れます。また、微積分がSymbolic にできることもありがたい。これは実際、私がMathematicaを使いはじめた主な理由の一つでした。


今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

Mathematicaにはすでに多くの機能が組み込まれていますが、それらを実際に使うにあたっていろいろと試してみる必要がある場合が多く、かなり時間がかかることがよくあります。

例えばグラフィックのオプションの設定の仕方などはいくつかの可能性が考えられ、それらのうちのどれが目的を達成するがわかりにくい。Documentationにおいてexamplesをさらに充実させることも考えられますが、ChatGPTとの連携が力を発揮できる場面ではではないかと思います。


 

 

 

本事例作成に関し、山本先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2024 年2 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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