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数式処理のアルゴリズム・応用研究と
数学科の計算機演習への活用

筑波大学
数理物質系/人工知能科学センター
照井 章 准教授

プログラミングや計算の場面では 最新アルゴリズムを含む先進性と汎用性、プログラム開発や計算機教育の場面では 用途に応じた効果的な手法選択、容易に対話的UI構築可能な柔軟性、等の多くの魅力があります。



業務 と ご研究の内容について、お教えください

研究では、Mathematicaの理論的基盤でもある計算機代数、数式処理のアルゴリズムや応用の研究を行っています。


アルゴリズム研究では数式・数値融合計算のアルゴリズムの研究を行っています。係数に誤差を含む多項式に対し、係数に誤差の範囲で接動を加えた際に存在する可能性のある最大公約因子(いわゆる「近似最大公約因子」)の計算アルゴリズムの研究を進めています。

図1: 近似最大公約因子の計算例。図の例では本来は互いに素な2個の1変数多項式に係数が比較的小さな「摂動項」を加えることにより、1次の共通因子を持つ多項式を求めている。

 

応用では、数式処理のロボット工学への応用(腕型ロボット(マニピュレータ)の逆運動学問題の解法)、ロボット工学における数理的な問題の解法について、ロボット工学が専門の学内の教員と共同研究を行っています。


教育では、理工学群数学類が開設する授業科目のうち、計算機数学に関する基礎的科目である「計算機演習」(2年次)においてMathematicaを実習に利用しています。



Wolfram 製品をどのような場面で使用されていますか?

数学類開設授業科目「計算機演習」にて、数式処理システムへの入門、数式処理システムによる数学の問題の解法、プログラミングへの入門に使用しています。

 

「数式処理システムによる数学の問題の解法」では、曲面のパラメータ表示による描画やアニメーション、線形代数における行列の対角化の計算、微積分における関数のTaylor展開の振る舞いの観察や定積分の計算を行っています。

図2:ある関数(赤色のグラフ)のTaylor展開の打ち切り次数を変化させていった際のグラフ(青色、黄色、緑色)

 

「プログラミング」では、ルールベースドプログラミングを扱い、フラクタル図形の描画を含む題材を取り上げています。また、手続き型プログラミングも扱い、同じ授業科目でさらに学ぶプログラミング言語の授業へ接続する内容を行っています。

図3:フラクタル図形の描画例「シェルピンスキーのギャスケット」

 

研究では、研究課題に関連する種々のアルゴリズムのプロトタイピングや実験、実験結果の視覚化を行っています。

図4:逆運動学計算に用いている3自由度のマニピュレータの例(教育版レゴ マインドストーム EV3を使用)

 

図5:3自由度のマニピュレータの順運動学計算によるエンドエフェクタの位置の計算例

 

Wolfram製品を使い始めたきっかけは?

私が本学に学群生(学部生)として在学していた1990年代前半に、大学の学術情報処理センター(現・学術情報メディアセンター)にMacintoshとMathematicaが導入された際にMathematicaに触れたのが最初です。

その後、本学大学院に進学し、数式処理の研究および学群教育(「計算機演習」のティーチングアシスタント)で本格的にMathematicaを使い始めました。


Wolfram製品の魅力とは?

プログラムや計算を実行する立場では、計算機代数の最新のアルゴリズムをはじめ、科学技術計算の様々な計算手法に対応している先進性、多様なファイルフォーマットに対応している汎用性が魅力です。

プログラム開発や計算機教育の立場では、手続き型プログラミングと関数型プログラミングの両方に対応し、計算目的や用途に応じて効果的な手法を選べたり、対話的なユーザインタフェースの構築を容易に行えたりする柔軟性が魅力だと思います。


今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

ロボット工学では統合的なソフトウェア開発プラットフォームとしてROS 2 (The Robot Operating System) が広く用いられています。Mathematicaでは現在、Microcontroller Kitを介していくつかの種類のマイコンの制御が可能ですが、例えばROS 2に対応することで、Mathematicaによるロボット制御系開発の可能性の拡大に期待しています。


 

 

 

本事例作成に関し、照井先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2024 年01 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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