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信頼性工学での導入:Mathematicaを活用した故障予測

神奈川大学工学部
経営工学科
太田 修平 助教

確率分布の実装だけでなく信頼性解析等、工学的解析の関数も充実しており、大変重宝しています。さらにネットワークモデルの構築や学習処理も短いプログラムで手軽に実行でき、助かっています。



業務 と ご研究の内容について、お教えください

業務内容は大学における教育活動と研究活動です。教育では、生産システム工学、プログラミング、統計学など経営工学にまつわる授業を担当しています。

研究では信頼性工学を専門として、機器の故障を統計的に分析・予測する手法を開発しています。


例えば、図1は回転機器の故障予測のための実験装置です。急な故障は事故の元であり、また高い保全コストを生みます。


図1: 回転機器の実験装置。部品が故障するまで各種センサーからデータが得られる。

 

この問題を解決するために、装置に取り付けた各種センサーから得られるデータ(図2)を分析して、装置の劣化状態の推定や、将来起こりうる故障発生時刻を早期に予測する手法を開発しています。

とくに分析で、データの非線形多変量な振る舞いをうまく考慮することで、高精度な故障予測の実現を目指しています。


図2:加速度センサーから得られたデータ。故障が起こるまでには兆候があり、
その兆候の統計的な検知や、故障予測を研究する。

 

Wolfram 製品をどのような場面で使用されていますか?

統計分析や数値計算をするためにMathematicaを使用しています。

故障予測の研究では、故障の不確実性を表現するために確率分布を用いますが、例えば、MathematicaはCopulaDistributionなど確率分布の実装が充実しているので大変重宝しています。

また、データにもっとも当てはまる確率分布を探す際には、方程式の解法や数理最適化の関数を利用しています。

さらにMathematicaは工学的な解析のための関数も充実しており、例えば信頼関解析のための便利な関数が豊富な印象です。

他には、画像処理にもとづくコンクリート壁の亀裂(クラック)検出の自動化のためにMathematicaを使用しました。与えられた画像の中に亀裂箇所が含まれるかどうかを判別する手法として、機械学習手法の1つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)を利用しました。

その際にMathematicaを使うことで、必要なネットワークモデルの構築や学習の処理を、短いプログラムで手軽に実行できて助かりました(図3、4)。


図3:CNNのネットワークモデルの構築と学習。
図4:亀裂の検出例。検出箇所が赤でハイライトされている。

 


Wolfram製品を使い始めたきっかけは?

大学生のときに授業で使用したのがきっかけでした。授業では、関数の最小値や最大値を見つけるための数理最適化の理論を学習した後に、Mathematicaを利用してグラフによる関数の可視化や最適化を行うことで、効果的に理解を深めることができました。

 


今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

今後の展望として、Mathematicaの教育での活用を検討しています。

Mathematicaでは容易にWeb用のインタラクティブなコンテンツを作成できます。例えばMathematicaで作成したグラフや高度な計算を行うフォームをWebで公開して、学生がそれを利用することで楽しく授業内容を理解できるようにしたいと思います。

製品機能への要望としては、定義した変数の名前やデータ型を一覧表示する機能の実装があげられます。数値計算で多くの変数を定義していると、変数の管理が大変になるので、その様な機能があると嬉しいです。



 

 

 

本事例作成に関し、太田先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2024 年2 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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