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大学で広く数学に関わる知的活動支援に活用

同志社大学 生命医科学部・医工学科
伊藤 利明 教授

同志社大学 学習支援・教育開発センター
澤 宏司 准教授

学生の学習支援環境としてMathematicaやWolfram|Alphaを、数学基礎・応用教育の他 ラーニングコモンズ等でも活用しています。「自分で考える時にヒントになる」よう設計されており、初めて知った学生のほとんどは「もっと早く知りたかった」といいます。



業務 と ご研究の内容について、お教えください

【伊藤 教授】(以下【I】と略します)

業務の内容としては、大学でのICTを考慮した数学基礎・応用教育、全学対象部門での学習支援という教育関係の業務です。

研究内容のほうは、数学モデルにおける連続系と離散系の融合理論開発に対し数式処理システムを用いて行っています。また、巨大ネットワーク系(例:脳の神経系ネットワーク)の数理的解明、脳波分析(例:脳波によるドローン飛行制御)を主に行っています。

また最新の知的活動支援環境を用いた新たな教育法開発にも興味をもっています。これらの研究にMathematicaとWolfram|Alphaは有効です。

【澤 准教授】 (以下【S】と略します)

業務・教育の点からしますと、まず同志社大学には全国最大規模のラーニング・コモンズがあり、同施設で全学対象の学習支援、特に数学基礎教育支援にてWolfram Research 社製品を活用しています。



Wolfram 製品をどのような場面で使用されていますか?

図: WEBから学生が自由に
閲覧できる学習支援システムに
Wolfram|Alpha Notebook Edition
の対応サンプル等掲載

【I】Wolfram|Alpha および Wolfram|Alpha Notebook Editionを大学初学年向け高大連携(リメディアル)教育で利用しています。

例えば、数学基礎科目、微分積分学、代数学、応用数学などの科目が対象になります。Mathematicaは卒業研究生や大学院生とともに研究用に特に利用しています。

Wolfram|Alpha および Wolfram|Alpha Notebook Editionを利用した大学でのオープンコースウエアとして「基礎数学を Wolfram|Alpha Proで- どこにも数学 - (Notebook Edition対応)」を実際に作成し、学内で公開(関連情報後述)されています。

一方、研究については、数学モデルにおける連続系と離散系の融合理論開発(例:微分方程式数学モデルの自動離散数学モデル化・連続系理論の離散系理論への自動翻訳)を主な研究対象としています。

この際にMathematica は統合的な数学支援環境として非常に有効です。








Wolfram製品を使い始めたきっかけは?

【I】今から30年ほど前に、スティーブ・ジョブスがAppleを出てNeXTというワークステーション(WS)を売り出しました。(編注:当時米国でNeXTの主販売先は大学・金融機関だったためその販売戦略の一環として)そのWSにはMathematicaがバンドルされていました。

その当時、日本では数式処理に関する研究が始まっていました。当時のMathematicaは微分方程式ソルバーや自動積分の関数が非常に貧弱でしたがWolfram Research社の方々とMathematica(数式処理システム)利用の啓蒙活動を行ったのがきっかけです。



Wolfram製品の魅力とは?

【S】同志社大学ラーニング・コモンズでは、学生が自由に学業に関する質問や相談ができます。理系学生、そのなかでも特に下級生を中心に数学の質問に来ます。


入学したばかりの1年生には、高校までの数学と大学初年次の数学の違いに戸惑う様子が見られます。そんな相談に対して、Wolfram|Alphaを使って計算の結果や経過を提示して学生のスムーズな学習に貢献しています。









図:Wolfram|Alpha Pro Notebook Editionで原点に極限がない関数を表示させた例(学部1年向け微分積分の講義の資料)

学習相談において、もっとも有効なWolfram|Alphaの機能の1つはグラフなど視覚化できることです。

関数や数列の極限を求めるには、等式の変形や不等式による限定など、いくつかの技術が必要です。

「そんなの自分では思いつかない…」、というものでも、関数や数列をグラフ化すると容易に極限の予想ができます。

その予想のもとで等式や不等式の変形をするというスタイルの勉強も有益です。


詳しい導出である「ステップごとの解説」ももちろんたいへん便利です。





答えがわかってしまうと学生の勉強にならないのでは、という指摘も考えられます。しかし、数学や、計算を中心とする物理学の学習の質を損なわないと考えています。学生はWolfram|Alphaで得た答えを丸写しするのではなく、それを自分で解釈したり、足りない部分は自分で補ったりしながら数学の内容に触れていきます。「答えを知る・覚える」のとは根本的に異なります。

学習相談時だけでなく、アクティブ・ラーニング式自主数学勉強イベント「ますぴた!」やミニ講座でも活用しています。Wolfram|Alphaを初めて知った学生のほとんどは「知らなかった。もっと早く知りたかった」と言います。



Wolfram|Alphaで答えに至らなくても、いい意味でのヒントになります。別のクエリーを試す、最適なクエリーを考えるのもまた学習だと考えています。

関数や変数を変更する「実験数学」のような使い方にも価値があると考えています。Notebook EditionやiOS版で実装されたカメラによる入力の有効な活用も検討しています。大学数学の入門的な使い方に留まらない、それ以上の可能性をWolfram|Alphaに感じています。

私たちの知る限りWolfram Research社のスタッフはリベラルでアカデミックな気質をもった人が多いので、気軽に話(相談)しやすい。そのため利用者の意見を大事にしてもらえる。また共同活動がしやすい。これは非常に大事な要素だと思います。



今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

【I】今後の展望としては…

  等があげられます。これを構成論的手法、ひらたく言えば「システムを作って動かすことで理解してみよう」というような手法でできれば、と思っています。

一方、製品機能への要望を箇条書きにすると、以下があげられます。

また、Mathematicaの単価は一般の大学の研究者には幾分高額と思われます。Wolfram|Alpha Proおよび Wolfram|Alpha Pro Notebook Editionは個人購入を基本的に購入形態としているようですが、Wolfram|Alpha Pro および Wolfram|Alpha Pro Notebook Editionをより少額で大学ライセンスという形で扱ってもらえると嬉しいです。

Wolfram|Alphaの自然言語での日本語入力は、初めて使う人にはまだまだ不自由さがあるようです。これは利用者毎の表現に個性があり、日本語の表現があまりにも柔軟なことも背景にはあると思われます。今後一層の日本人になじむ知的活動支援環境になることを願っています。

 

 

 

 

本事例作成に関し、各先生のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2023 年6 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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