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リスク解析に資する数理的手法の研究に不可欠なソフトウェア Mathematica:
確率シミュレーションや可視化ツールとしての活用

国立研究開発法人産業技術総合研究所
安全科学研究部門
竹下 潤一 様

Mathematica は厳密な計算が可能である点が魅力です。数学的な理論の検証において非常に重宝しています。また、グラフ描画機能が優れており、図を作成する際には必ず利用しています。

 

業務とご研究の内容について、お教えください

リスク解析に関連する数理的手法の研究に取り組んでいます。国際的な脱動物実験の流れを受け、化学物質のリスク評価では、複雑な毒性を評価可能なインシリコ解析 (コンピュータを用いたシミュレーションやデータ解析) 手法の開発が求められています。また、新たな試験方法が次々と開発される中で、その精度を適切に評価する手法の確立も重要な課題です。こうした背景のもと、現在は主に以下の研究に注力しています。

さらに、リスクが関わる社会問題を扱う際に直面する多様な数学的理論 (組合せ最適化、確率過程、ゲーム理論等) にも関心を持ち、幅広く研究を進めています。

 

Wolfram 製品をどのような場面で使用されていますか?

私は主に、確率分布のシミュレーションやグラフの描画に Mathematica を使用しています。例えば、統計的測定精度評価手法の研究においては、測定結果が従うと仮定された特定の確率分布に基づき、大量の疑似乱数を生成し、模擬的な試験所間比較試験 (複数の試験所が同一試料を測定し、結果を比較・評価する試験) を行っています。この結果をもとに、構築した理論の妥当性を検証したり、新たな理論構築の指針を探ったりするために活用しています。

また、構築した理論式の具体的な数値例を算出する際にも、Mathematica で定義した関数を用いています。最近では、私がプロジェクトリーダーとして執筆・発行した ISO (国際標準化機構) 文章である ISO/TR 27877:2021 や、現在改訂作業中の ISO 5725-6 に掲載した数値例や統計数値表の計算にも Mathematica を用いました。

加えて、Mathematica はグラフ描画機能にも優れていることから、図の作成する際にはまず Mathematica を使用します。例えば、産総研特別公開 2024 で配布した研究者カードの自己紹介に掲載したイメージ図 (図 1) や、早稲田大学理工学術院で担当している確率・統計の講義で配布するプリントの図 (図 2) も、すべて Mathematica で作成しています。

図 1 : 統計的測定精度評価の概念図。
σri は Lab i (i=1,2) の室内精度、σL は Lab 1 と Lab 2 間の室間精度、δi (i=1,2) は Lab i のかたより。
(提供:産総研)

 


図 2 :カイ二乗分布の統計数値表の説明に用いた図。
(提供:産総研)

 

Wolfram 製品を使い始めたきっかけは?

大学院生 (2006 年頃) のとき、所属専攻でサイトライセンスを持っており、数式で表されるグラフの描画で使い始めたのがきっかけです。

 

Wolfram 製品の魅力とは?

Mathematica は数式処理システムであり、厳密な計算が可能である点が魅力です。数値計算とは異なり、丸め誤差などを気にする必要がないため、数学的な理論の検証において非常に重宝しています。また、グラフ描画機能が優れており、図を作成する際には必ず利用しています 。さらに、産総研で利用する際には政府機関向けライセンスが提供されており、多くのソフトウェアで必要とされる商用ライセンスに比べて、より安価に利用できることも魅力です。Premium Plus Plan への加入により、サブのコンピュータでも Mathematica が利用できるほか、期間中のアップグレード・アップデートを無料で受けられるサービスがあることも嬉しい点です。

 

今後の展望/製品機能への要望をおきかせください

私が利用を開始した当初に比べると、統計や機械学習に関する組込み関数はどんどん強力になっていますが、解析を行う前のデータの前処理が Mathematica ではやりにくいと感じています。いまは、MATLAB® (MathWorks) などを利用してデータ前処理を行った後に、Mathematica で解析を行っていますが、これをすべて Mathematica でシームレスに行えるようになれば、より強力で魅力的なものに感じています。

 

 

 

 

本事例作成に関し、竹下様のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2025 年 3 月)

※所属・役職は取材当時のものです。

 

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