Q-Chem 6.3 では、パフォーマンスとユーザビリティが向上し、化学と分光学の研究に役立つ新しいツールが利用できます。これらの新機能によって、大規模な計算とワークフローを展開し、より正確な結果を高速に取得することで、これまで計算できなかった系や研究課題に対して研究範囲を広げることができます。
最新バージョンの新機能には、新しい解析ツール、開殻種および高精度計算のための新しい手法、そしてパフォーマンス向上があります。以下に、開発者が作成した関連研究論文へのリンクと、注目の機能を掲載しています。
- DFTパフォーマンスの向上:中規模から大規模のDFTエネルギーおよび力の計算において、既存の超高速密度フィッティング近似を用いたときのパフォーマンスが大幅に向上しました。
B3LYP/def2-TZVP(基底関数2485個)とrijk-def2-TZVP補助基底(基底関数6680個)を用いたシステイン11量体の計算時間は、Q-Chem 6.2.2と比較して、23%高速化しました(16コア)。
- ロバストSCF: Q-Chemの洗練された新しい多段階「ロバストSCF」によって、SCFの収束性は大幅に向上します。これによって、初期のSCFの発散を自動検出、修正し、DIISが失敗した場合にはアルゴリズムを切り替えることができます。このブラックボックスアプローチは、ビッグデータアプリケーションで有用で、収束が困難なケースで役立ちます。
- 有限差分法と多体展開法のためのMPI並列化
- 分光法の新しいツール:
- 開殻種と共鳴の新しいツール:
- 精度向上のための多体法の進捗:
- 新しい解析ツール:
- 標準および特異な環境での化学研究ツール:
- 均質・不均質環境の影響を考慮するためのツール:
- 不均質 PCM: タンパク質のクラスターモデルを用いたDFT計算は、酵素機構を探索する上で一般的な手法ですが、気相境界条件は非現実的です。「HetPCM」モデルでは、「QMクラスター」タンパク質モデルの一部を溶媒にさらし(誘電制約ε = 78)、他の部分を疎水性領域(ε ≈ 4)に埋め込むことができます。
- SMDモデルの半数値振動数サポート: SMD溶媒和モデルを用いたDFT振動数計算が、有限差分ではなく解析的振動数のコストで実行できるようになり、中規模および大規模システムでの計算が可能になりました。
- 密度行列ベースおよびエネルギーベースの一般化多体展開(GMBE): 密度行列ベースのフラグメンテーション法は、適切な系では精度を損なうことなくSCF計算のコストを1桁削減できます。小さな基底関数を要求する一部のフラグメンテーション法とは異なり、GMBE-DMは高品質の基底関数を使用できます。
- 量子核効果を考慮する手法の進捗(NEO スイート):
- 溶液相振動数および基準振動解析のためのNEO PCM 解析ヘシアン
- NEO法で追加の分散補正が組み込まれた交換相関汎関数をサポート(wB97X-D、wB97X-D3、B3LYP-D3(BJ)など)
- 同時GDM最適化、初期推定値(核SCF)の改良、任意の数の量子プロトンを扱うための同時DIISおよびGDM最適化の拡張を追加することでパフォーマンスが向上しました。
新しい機能とバグ修正の完全なリストは、Q-Chem 6.3 リリース ログをご確認ください。
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