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国立研究開発法人産業技術総合研究所 製造技術研究部門 主任研究員 高本 仁志 博士 |
近年、様々な製品分野における製品開発のできるだけ早い段階で、モデリング技術・シミュレーション技術を用いて設計の良し悪しを評価するモデルベース開発の考え方が進んでいます。
私たちは、モデルベース開発のためのモデリング手法やシミュレーション手法、特に、これらの手法に基づくシステム設計支援手法を研究しています。シミュレーション結果を次のモデリング工程にフィードバックさせることが設計には必要ですが、設計とは人間の豊かな知的活動であるため、モデルベース開発においても、単にパラメータ空間の網羅的探索や最適化にとどまらない設計支援が要請されます。
私たちは、運動や熱、制御など様々なドメインで構成される複雑なシステムを研究対象にしています。これらのシステムを記述する環境としてSystemModelerを用いています。そしてMathematicaは、SystemModelerから得られる計算結果を解析するために用いています。
例えば、図1のような簡単な電気自動車のシステムモデルをSystemModelerで構築しその挙動を計算します。
その計算結果を入力としてモデル内の変数の挙動の類似性などを分析するためにMathematicaを用います(図2や図3)。
そして、ここで得られる分析結果を私たちが開発した設計支援ツールでさらに分析・可視化しています(図4)。
現状、このツールは他の言語を用いて構築していますが、今度、Mathematica環境で実装する予定です。
物理モデルの構築ツールと数値解析・数式処理ツールが統合されていること。そして、物理モデルを分析するためのインターフェース(API)が充実していること。この2点の機能を備えるツールであるため、使い始めました。
Mathematicaの基本的な数値解析・数式処理機能はモデリング技術の研究者に役に立つと思います。これに加えて、計算の過程を記録し再現できるNotebookの機能は便利です。特に計算機上で実験(シミュレーション)を主に行う研究者には向いていると思います。
モデルを構築し計算する機能に加え、モデルを分析する機能(API)が充実している点が便利です。ライブラリにある要素の表現に制限されずに、数式やパラメータの挙動などの様々な観点からモデルを分析したい研究者にはおすすめできます。
モデルベース開発の基本的なルーティーンである、モデルの構築・計算・分析・再構築という一連の作業を一つの計算環境で行えることが魅力です。
人工知能技術、特に、推論技術や深層学習を応用した設計支援手法の研究にMathematicaとSystemModelerを活用したいと思います。
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本事例作成に関し、先生のご協力に感謝いたします。
(インタビュー:2018 年2 月)