28.20 回帰処理の各種メッセージ
回帰分析の初期結果には、完了ステータスに関するメッセージが表示されます。各種メッセージの内容を以下に説明します。
28.20.1 完了ステータスメッセージ
- Converged, tolerance satisfied. (許容値の条件を満足し、収束しました。)
このメッセージは、指定した許容値 (tolerance) に対する水準の相対的な変化を比較する収束基準 (convergence criterion) が満たされたときに表示されます。なお、この結果は平方和の極小 (local minimum) におちいっている可能性もあり、その場合は誤りである点に注意してください。
- Converged, zero parameter changes. (パラメータ変更なしで、収束しました。)
最後の2つの反復計算の間におけるすべてのパラメータの変更は、コンピュータ精度より小さくなりました。
- Did not converge, exceeded maximum number of iterations. (反復の最大数を超え、収束しませんでした。)
収束基準を満たすには更なる反復計算が必要です。More Iterations を選択して同じ回数の反復計算を続行するか、Options ダイアログボックスで反復計算の回数を増やしてあらためて回帰処理を実行します。
- Did not converge, inner loop failure. (内部ループの失敗で、収束しませんでした。)
Marquardt アルゴリズムには、ネストされた2つの反復ループがあります。内部ループで逐次反復が 50 回行われたこの診断が表示されます。制約条件 (constraints) を使用して、収束に至らなかった場合に、このような状況が発生することがあります。パラメータの制約条件が、回帰パラメータの推定において良い結果を出すという意味で、有効であるにもかかわらず、このようなケースになる場合もあります。
- Terminated by user. (ユーザーにより中断されました。)
回帰処理を ESC キー、または、Cancel ボタンを押して中断したときに表示されます。
- Function overflow using initial parameter values. (初期パラメータ値の使用で関数オーバーフローが生じました。)
回帰分析の反復処理が、最初の関数評価の数学的エラーによって開始できなかった場合に表示されます。例えば、a の初期値とすべての x 値が正であるような f = sqrt(-a*x) を使用した場合、数学的エラーが発生します。方程式、パラメータ値、および、独立変数の値を調べ、適切な修正を行ってください。
- Parameters may not be valid. Array ill conditioned on final iteration. (パラメータが有効でない可能性があります。反復計算の最後における配列の状態が良くありません。)
SigmaPlot は、配列の「状態」に推定値を使用して (配列状態が悪いとは、特異に近いことを意味します)、このメッセージを表示します (詳細は、次を参照してください。Dongarra, J.J., Bunch, J.R., Moler, C.B., and Stewart, G.W., Linpack User’s Guide, SIAM, Philadelphia, 1979 for the computation of condition numbers)。
通常、このメッセージは、何か大きな過ちがあるとして重く受け止められるべきです。例えば、すべての x 値に指数下位桁溢れ (exponential underflow) が生じた場合は、方程式の一部を基本的に削除します。この方程式のエラー部分に関連するパラメータ推定を SigmaPlot で試みても、パラメータ推定は無効に終わる可能性があります。
「正しい (correct)」ことも稀にありますが、パラメータが得られるのは特殊な条件下に限ります。多項式又はその他の線形方程式をあてはめる場合に、こうした状況が起こることがあります。
- Parameters may not be valid. Array numerically singular on final iteration (パラメータが有効でない可能性があります。反復計算の最後における配列が数値的に特異です。)
配列を反転することができず条件数が無限大となる上記状態の限定されたケースです。このような場合、パラメータ値をうまく特定することができず、その標準誤差を正しく解釈することができません。
- Parameters may not be valid. Overflow in partial derivatives (パラメータが有効でない可能性があります。偏導関数でオーバーフローしました。)
パラメータに関して、あてはめる関数の偏導関数を一次微分を使用して数値的に計算します。
様々な原因の数学的エラーによって、この計算にエラーが生じます。例えば、モデルに指数が含まれており、パラメータと独立変数の値が指数下位桁溢れ (exponential underflow) の原因になっている場合、この偏導関数の数値計算は、パラメータとは独立したものになります。SigmaPlot はこの独立性をチェックします。
結果画面のパラメータ値、独立変数の範囲と方程式をチェックして問題を特定します。
- There may be inconsistent constraints. Check constraint equations (制約条件に矛盾がある可能性があります。制約条件式をチェックしてください。)
制約条件に例えば a>0 かつ a<-1 と定義したような場合には、このメッセージが表示されます。
28.20.2 エラー・ステータスメッセージ
- Bad constraint. (制約条件に誤りがあります)
定義した制約条件が線形でない、または、制約条件に構文エラーがあることで回帰処理を実行できない場合に表示されます。
- Invalid or missing ’fit to’ statement. ('fit to' 命令文が無効か誤りがあります)
回帰の fit to 命令文が要件を満たしていない、または、fit to 命令文にひとつまたは複数の構文エラーがある場合に表示されます。
- No observations to fit. (あてはめる測定データがありません)
一組の x, y データ対 (測定データ) がひとつもなく回帰分析を実行できない場合に表示されます。回帰分析の設定で参照するデータ列にデータが含まれているかをご確認ください。
- No parameters to fit. (あてはめるパラメータがありません)
回帰分析の設定で、パラメータが指定されていない場合に表示されます。パラメータ定義を追加するには、Equation Options ダイアログボックスに戻り、Parameters 編集ウィンドウにパラメータ定義を入力します。
- No weight statement. (重み付け命令文がありません)
回帰分析の設定で、あてはめ命令文に不明な重み付け変数が含まれている場合に表示されます。Variables 編集ウィンドウをチェックして、定義した重み付け変数が回帰方程式の命令文に正しく対応しているかどうかをご確認ください。
- Not enough or bad number of observations.(測定データが不十分か数に誤りがあります)
回帰分析において、x および y データセットのサイズは必ず同じでなければいけません。指定したデータセット (x および y 列) の値の数が異なる場合にこれが表示されます。
- Problem loading the file [Filename]. File too long; truncated.([Filename] のファイルの読み込みに問題があります。ファイルが長すぎるため打ち切りました。)
読み込もうとするあてはめファイルが長すぎる場合に表示されます。回帰ファイルの最大幅は 50文字、行数は 80行までです。それ以上の文字数や行数は、Edit ウィンドウにファイルが読み込まれた時点で打ち切られます。
- Section has already been submitted. (既にあるセクションです)
回帰セクションが既に定義済みの場合に表示されます。
- Symbol [Variable or Function] has not been defined (まだ定義されていないシンボル [変数または関数] です)
回帰分析を定義する fit to 命令文に未定義の測定変数が含まれている場合、または、回帰分析を定義する fit to 命令文に未定義の関数が含まれている場合に表示されます。既に定義した回帰分析の内容を調べ、回帰命令文の中にリストされた従属変数が存在するか、それが Variables 編集ウィンドウで定義した変数に対応するか、また、回帰命令文にリストされた関数が存在し、それが Equations 編集ウィンドウで定義した関数に対応するかどうかをご確認ください。
- Unreferenced variable. (参照されない変数です)
回帰分析の設定で他の命令文から参照されないパラメータを定義した場合に表示されます。そのパラメータ定義を削除するか、他の命令文で参照するようにしてください。