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更新日: 25/06/02

APIS IQ を使った FMEA 入門

自動走行型監視システムを使った例

FMEA とは?

FMEA (故障モード影響解析) は、製品、又は、製造プロセス(この場合「自動走行型監視システム」)の稼働中に起こり得る「故障」Failure を事前にリストアップし、それらをシステムエレメント(部品)と結びつけて技術的リスクを評価し、故障が発生する原因と影響を多面的に分析し、関係するメンバー間で情報を共有してゆくチーム志向のシステム的、かつ、定性的 (質的) な分析手法です。(出典:FMEA ハンドブック)

たとえば、ある企業に複数の技術者を擁する製品開発部があり、その製品の仕組み全体を理解しているのは一部の設計者しかいないという状況を考えてみましょう。製品開発にたずさわる個々の技術者は、自分が担当する部品又はその周辺にしか関心がなく、システム全体がどのような仕組みで動作し、どのような故障リスクがあるかという知識は把握していません。また、組織の範囲を広げて考えることもできます。ある企業の経営者や販売部門は製品の売り上げアップに最大の関心があり、当該製品の販促につながるセールスポイントは理解しているものの、それがどのような仕組みで動作し、どのような故障リスクがあるか、詳しいことはわかりません。いずれの場合も、製品の技術的側面に関連する情報は設計者しか理解しておらず、組織全体では共有されていません。また、組織の外部、例えば、顧客からのクレームや改善要求があれば、その都度誠実に対応していますが、それらの情報を製品の機能と結びつけて体系的にまとめることはありません。

もし、複雑に入り組んだシステムにまつわる情報を、設計者が属する開発部門全体はもちろん、企業の経営者、販売部門、サポート部門といった企業全体の共通の知識、品質管理ドキュメントとして一定の水準で共有できれば、システムのどの部分に問題が発生する可能性があるかを議論したり、それを防止するためにどのような処置をとるのかを事前に組織全体として検討することができるようになります。また、どの機能にどのような人的資源の分配をおこない、さらに、顧客からの意見をどのようにシステムに反映していくかといった、製品そのものの持続的成長を可能にしていくサイクルを組織として実現できます。FMEA は、「ものづくり」を行うあらゆるレベルの組織にあてはまる重要な考え方です。

APIS IQ におけるステップ

FMEA には7つのステップがあります。ここでは、FMEA をおこなう上でもっとも重要でもっとも基本となる3つのステップ、構造分析、機能分析、故障分析をとりあげます。

  1. 計画と準備:FMEA スコープ分析
  2. 構造分析:ピックアップしたシステム要素から構造ツリーを作成する
  3. 機能分析:システム要素に「機能」を記述し機能ネットを作成する
  4. 故障分析:システム要素の機能に対応する「故障」を記述し故障ネットを作成する
  5. リスク分析:管理の担当、故障ランク付け:AIAG/VDA フォーム / AP 対応
  6. 最適化:リスクを軽減するための処置:AIAG/VDA フォーム / AP 対応
  7. 文書化:結果の出力と伝達:AIAG/VDA フォーム

これらを APIS IQ プロジェクトとして入力できたら、入力された情報をベースとして、FMEA シートをはじめとする多面的な観点からステップ5以降の各種様式のシートであらわすことができるようになります。

計画と準備:FMEA スコープ分析

この記事では、特定のカラーで色分けされた経路を識別して、その経路を自動で走行し、リアルタイムに映像を送信する「自動走行型監視システム」を例に FMEA を考察します。このシステムは、市販製品 (SunFounder Picar-X AI Video Robot Car) の幾つかの機能を組み合わせて、単純なモデルケースとして作成したものです。このシステムに求められる機能は以下の4つです。

これら4つの機能の組み合わせで「自動走行型監視システム」が成立します。

構造分析:1. APIS IQ で構造ツリーを作成する

APIS IQ の構造ツリー画面を使って、システム要素を入力してツリー状に配置します。この構造ツリー自体は、機能的観点からつなげることも、物理的構造的観点からつなげることも、組み立てる順番でつなげることも可能です。ここに示される構造ツリーは、あとから自由に変更できます。構造分析で重要なのは、システム要素の範囲をここで限定し、分かりやすく配置することです。

機能分析:2. APIS IQ で機能ネットを作成する

機能ネットは、主となる機能を確実に実行するために、それに従属する機能がシステム内でどのように相互作用するかを記述するものです。つまり、機能同士を因果関係で関連付けます。機能ネットでは、機能の原因と影響(「結果」と呼ばれることもあります)の数は無制限です。システム内で原因のみを持つ機能は、最上位機能または主機能と呼ばれます。システム内で結果のみを持つ機能は、最下位機能または基本機能と呼ばれます。言い換えれば、APIS IQ ソフトウェアの機能ネットは、中間機能を通じて基本機能から主機能がどのように派生しているのかを記述します。

故障分析:3. APIS IQ で故障ネットを作成する

故障ネットは、システムにおける故障の広がりを記述します。故障と故障は、原因と影響(結果)の関係で関連付けます。故障ネットでは、故障には無限の数の原因と影響(または結果)が考えられます。あるシステムにおいて原因のみを持つ故障は、最上位レベルの影響と言います。一方、影響のみを持つ故障は、最下位レベルの故障または主原因と言います。別の言葉で言い換えれば、故障ネットは、最上位レベルの影響(結果)が主原因から中間段階を経てどのように発生するか、またはシステムにおいて主原因によってどの影響(結果)が引き起こされるかを記述します。主原因から最上位レベルの結果までの段階数は無制限です。故障を明確化(オブジェクト化)することによって、この「故障」に対して、予防措置や検出処置といった次のステップにつながる各種 IQ オブジェクトを設定できるようになります。

FMEA 次のステップ

以上で FMEA のベースとなるシステム要素、機能ネット、故障ネットに関する情報を APIS IQ プロジェクトとして入力できました。こうして入力された情報をベースとして、FMEA シートをはじめとする多面的な観点から各種様式のシートであらわすことができます。

APIS IQ には、これ以外にも、様々なツールが用意されています。用意されている主な機能は以下のとおりです。

ドキュメントテンプレート

多言語ドキュメント

用語管理 (専門用語と翻訳)

ユーザー管理とアクセス権

他のシステムとのインターフェース

データを他のシステムに転送するための様々なエクスポート形式をご利用いただけます。

 

APIS IQ デモ版リクエスト

APIS IQ をお試しいただきたい方のためにデモ版をご用意しております。ご希望の方は、ヒューリンクス技術部 (soft.support@hulinks.co.jp) までご連絡ください。

 

 

 

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