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パラメトリック CFD の結果を分析するという挑戦

はじめに

グローバルな競争が激しくなり、企業はイノベーションの速度、効率、質を上げるプレッシャーにさらされています。それに伴い、製品開発はほとんどの組織で中心的な役割を担うようになってきました。製品設計を最適化し、性能を分析するために組織が使う手法の中に、パラメトリック数値流体力学 (CFD) 分析があり、CFD を使うことで様々な設計パラメータの影響を決定することを助けます。コンピュータがより強力になり、CFD 技術が発達するにつれて、パラメトリック CFD 分析は、より高速に、かつ安価になり、設計におけるより良い決定を行うことができるようになりました。

パラメトリック CFD 分析は、より高品質の設計を行うことを可能にする競争力を提供します。このホワイトペーパーの目的は、ビジネスリーダー、技術者、科学者がパラメトリック CFD 分析の可能性と挑戦について理解することを助け、この重要な手法を使う準備ができるようにすることです。

 

パラメトリック CFD 分析:成長の準備のための手法

パラメトリック分析、あるいは異なる入力変数間の関係が結果にどのように影響を与えるかを分析する試験の歴史は、少なくとも産業革命の時代にまでさかのぼります。これは企業が大量生産で製品を作り始めたころです。製品の設計者は、最高の製品を作るために異なるパラメータをバランスしなければなりません。例えば、丈夫で軽量な製品を作る、あるいは丈夫で安価な製品を作りたいでしょう。この要求を満たすには、相反する異なるパラメータを評価し、最善の解決策になるまで、物理的に変数をテストする必要があります。

パラメトリック分析は製品開発と同じくらい歴史あるものですが、最近変わったことは数値流体力学 (CFD) の使用です。コンピュータ技術は技術者が流体力学の詳細を調べることを可能にします。今日では、CFD はパラメトリック分析では大きな役割を占めつつあります。Fang、Li、Sudjianto によると、技術者は3つの方法でシミュレーションベースのパラメトリック分析を使っています:

  • 予測と最適化。出力変数の入力パラメータへの依存を理解できたら、システムの動作を予測し、最適な結果を導く構成を決定することができるようになります。
  • 感度分析。多くのシステムでは、設計者は様々な出力変数に対して各入力変数のレバレッジを数値化したいと考えています。
  • 確率分析。技術者は、出力変数の変化に対する、入力の不確実性の影響にも興味があります。それによるシステムのパフォーマンスにも興味があります。特に、これはリスク分析に使われ、特定の設計の堅牢さを評価するために使われます。

現在、Tecplot 360 CFD 可視化ソフトウェアを使う技術者の 60%がパラメトリック CFD モデリングを使った経験も持っています。実際、パラメトリック CFD 分析の用途は多くの産業に広がっています。航空宇宙、自動車、化学処理、エネルギー、消費財の分野などです。

例えば、消費財の設計者は、予測と最適化のために、よくパラメトリック CFD 分析を使っています。例えば、最小限のコストで丈夫なプラスチックボトルを設計するには、様々な量の液体を保持する、異なる品質のプラスチックを使った、異なる物理形状のプラスチックボトルをモデル化するのにパラメトリック CFD 分析を使います。

同様に、航空宇宙産業では、航空機のパフォーマンスと燃費を最大にするための最適化の過程でパラメトリック CFD 分析を良く使います。マッハ数、攻撃角度、高度を変化させ、与えられた航空機のパラメトリック CFD 分析を行うことで、様々な状況で航空機がどのように振る舞うかをより詳しく理解することができます。これらの情報を、パフォーマンスを最大化するために使うことができると同時に、超えてはいけない安全性の限度を理解することができます。

より求められる設計プロセス

より強力なコンピュータにより、製品設計を補助する洗練されたツールに対する要求を引き上げています。競争環境がますます厳しくなるにつれて、品質向上、新製品を素早く開発し、安価に販売する能力は、ほとんどすべての組織が産業界で生き残るための中心要素となってきました。結果として、さらに多くの企業が製品設計を戦略の中心に置くようになりました。近年、ビジネスは社内の設計グループだけでなく、社外の設計コンサルタントとの連携にも広がっています。また、さらに多くの企業が製品設計を製造、マーケティング、ビジネスのその他の機能に統合し、厳格な設計アプローチに適応し始めています。製品設計への要望が高まるにつれ、パラメトリック CFD 分析は多くの組織における設計プロセスの基盤となっています。何年かの間に、より多くの技術者が、より素早く、コスト効率よく、より優れた設計をするために、パラメトリック CFD モデリングに移行することが予想されます。

高度な技術

Intel の共同設立者の Gordon Moore がマイクロチップ上のトランジスタの数が1年から2年ごとに倍になると予言して以来、コンピュータのパワーは指数的に伸び続け、一方、価格はゆっくりと下がってきています。計算能力と CFD 技術は、技術者が標準ツールとして CFD ソリューションを使うということに対する信頼感を持てるレベルまで発展してきました。パラメトリック CFD 分析が主流となるにつれ、入手できるツールが徐々に使いやすくなり、これらの分析をするのに必要なスキルレベルも下がってきました。それに従って、CFD 技術の市場が、毎年一貫して2ケタ成長を遂げ、その成長は次の10年も期待され、より多くの技術者がワークフローに CFD 分析を取り入れるでしょう。

 

現在のパラメトリック CFD 分析の挑戦

パラメトリック CFD 分析に対する要求が高まる一方、この技術が広がる上で、まだいくつかの障害が残っています。何度も実行して生成される膨大な量のデータを管理し、その結果の精度を検証することが課題です。また、異なるソースのデータを比較することもまだ困難で、トレンドや例外を理解し、他の人と効果的に作業することも問題です。

データの管理

現在、パラメトリック CFD 分析の主な挑戦の一つは、パラメトリック試験から得られた大量の CFD データを管理することが難しいということです。技術者の中にはこのデータを管理するために、商用のデータベースを使っている人もいますが、ほとんどの人はネットワークサーバー上の階層的なファイルシステムに CFD データを格納しています。CFD シミュレーションの詳細を管理するためのデータベースがない状態では、技術者が過去に作成したあるプロジェクトを探し出すことは困難です。これは貴重なデータを失うことにつながり、過去のプロジェクトから学んだことを現在のプロジェクトに適用することを妨げます。

ソリューションの品質の検証

CFD ツールは使いやすくなりましたが、結果の精度を決定するには、まだ専門知識が必要です。CFD の専門家はソリューションの品質を検証するように訓練されていますが、これは面倒なプロセスです。パラメトリック分析で生成されたデータの量は増えているため、CFD の専門家はすべてのシミュレーション結果を調査する時間がなくなってきています。さらに、増加しつつある専門家ではない人々が、設計プロセスにパラメトリック CFD モデリングを取り入れていますが、彼らは生成されたソリューションの品質を判断する簡単な方法を持ち合わせていません。例えば、使っている計算セルの大きさが十分なのかどうか、などです。データの使い方をガイドするツールがないと、パラメトリック CFD 分析を使うこれらの人は、製品の設計やパフォーマンスに重要な影響を与える、致命的な情報を見落とすリスクがあります。

データの比較

異なるソースのデータを比較することも手間のかかる作業です。技術者は、様々な計算セルサイズに基づいた CFD の実行から得られたデータを比較する必要があります。また、複数の CFD ソフトウェアプログラムのデータを比較する必要があり、同じ変数やパラメータに対して異なる命名規則が使われることがよくあります。さらに、CFD のデータを検証するために、風洞事件や他の実験のような実験で集めされたデータと比較する必要があります。直接比較するためにデータを似たような形式に変換することは非常に時間を浪費します。また、技術者が分析よりもデータの成型に不釣り合いなほどの時間をかけなければならないことは無駄以外の何物でもありません。

傾向と例外を理解する

パラメトリック CFD 分析を使ってデータの傾向を理解することは、製品の全体の動きを予測するためには必須です。同様に、一般的なパターンに一致しないデータ内の例外を理解することは、最高のパフォーマンスを出す製品を設計するときには重要です。現在、技術者が傾向や例外の理由を調べたいときには、メタデータプロット上の特定のポイントに関連した正確な CFD の実行を見つけ、その部分のデータをファイルシステム上で探し、詳細を検証するために CFD 可視化ソフトウェアに取り込む必要があります。もし、彼らがその問題を事前に気づいていれば、必要なデータを集め、CFD 可視化ソフトウェアで検証することができる形式にまとめるスクリプトを書くことができるでしょう。必要なことは、技術者が検証したい CFD データを即座に取り出し、それを表示し、傾向や例外を引き起こす物理的な原因を理解することです。

他のメンバーとの共同作業

CFD シミュレーションのデータを保存するデータベースがないと、他のメンバーとデータを共有し、共同作業を進めることは難しくなります。また、他のメンバーが作成した過去のパラメトリック研究を調べることや、部門間でデータを共有し、プロジェクトを進めることも困難になります。データを共有できないことは、パラメトリック研究をより時間とコストがかかるものにしてしまいます。さらに設計プロセスに幅広い社内の専門家の知識を利用することを妨げます。

 

統合ツールの不足

パラメトリック CFD 分析の使用が広がる一方、技術も進歩し続けています。現在、技術者はパラメトリック CFD 分析にはいくつかのツールを使っています。これらのツールは重要な機能を提供していますが、これらの個々の機能はうまく統合されていません。そのため、メタデータを物理的なものと緊密に関連付けることが難しくなっています。傾向や例外の裏にある原因を理解するための簡単な方法がないと、技術者は知識と経験を生かした設計をするのに必要な全体像を把握できなくなることになります。

一般に、今日のパラメトリック分析ツールは5つの大きなカテゴリに分けられます。設計の最適化、データ管理、メタデータ分析と可視化、物理的現象の可視化、シミュレーション実行管理ツールです。

  • 設計の最適化 — グラフィックス環境を持つ、シミュレーション中心の設計を支援するツールは、設計空間を調査し、最適な設計を見つけだすことを可能にします。
  • データ管理 — CFD シミュレーションのデータを管理し、タグ付けする構造的なデータベースは、これにより簡単にマイニングやフィルタリングをすることができます。
  • メタデータ分析と可視化 — メタデータ間の関係を素早く検証することができるソフトウェアは、傾向と例外をより詳細に理解できます。
  • 物理的現象の可視化 — 流れ場のソリューションをプロットし、アニメーション化することができる CFD 可視化ソフトウェアは、メタデータの傾向と例外の裏にある物理的現象をより詳細に理解できます。
  • シミュレーション実行管理ツール — シミュレーションの実行とパラメトリック研究の負荷分散を管理するように設計されたツールです。

これらの技術は重要な機能を提供していますが、それぞれ単体では限度があります。例えば、現在の設計最適化ツールは、製品設計者が最適な設計ポイントを見つけることを支援しますが、全体のパラメトリック空間を表示する機能は持っていないため、最適ではない条件でその製品がどのように機能するかを見ることはできません。この洞察がないと、技術者は製品のパフォーマンスをあらゆる状況において向上するために必要なことを理解することができません。

データ管理、メタデータ可視化、物理的現象の可視化ツールのような他の技術は、パラメトリック CFD 分析を実行するときに重要な役割を果たします。しかし、これらのツールは完全に統合されていないため、技術者はアプリケーションの間を行ったり来たりするような煩雑な作業に、時間を無駄に使うことになります。場合によっては、市場で手に入れることができる異なるツールを組み合わせてパラメトリック問題を分析しなければならないこともあります。また、別の場合では、独自のスクリプトを作成し、これらの分析を実行するための目的の限定された処理プログラムを開発することもあります。

 

パラメトリック CFD 分析の次の波への準備

パラメトリック CFD 分析の次の波は、現在入手できるツールよりも使いやすいものを提供することによって、重要な手法の複雑さを克服することです。よりすぐれたツールが必要である一方、組織がパラメトリック CFD 分析の次の波に備えるための方法があります。まず、計算が難しい3次元場データを持っていることを確認してください。そうすれば、メタデータ内の傾向と例外の裏にある原因を特定することができます。次に、どの部分が時間を浪費し、非効率で、リスクが大きいかを詳しく理解するために設計プロセスを分析してください。あなたの組織はどこで貴重な情報を失っていますか?プロセスのどの部分が最も大きなリスクを持っていますか?どの領域での共同作業がより大きな成果をあげられますか?

改良が必要な領域を特定できたら、どのプロセスがすぐに取り掛かれるかを決めてください。あなたの組織は CFD シミュレーションデータをより効率的に保存し、管理しているかもしれません。あるいはそのデータをよりうまく処理するためにスクリプトを書くことができるかもしれません。パラメトリック CFD 分析が発達してきたため、関する必要があるデータの量が指数関数的に増えていることは間違いありません。この次世代の重要な手法に備えるために、組織は、設計プロセスにどのようにパラメトリック CFD 分析を取り入れるかを調査し始めることが重要です。

 

結論

結論として、基礎にある物理的現象とメタデータの関連付けを理解できる技術者がより良い設計者となることができます。技術者にメタデータ内の傾向や例外の裏にある物理的現象を理解しやすくすることで、パラメトリック CFD 分析ツールの次の波が、製品設計を新しいレベルに引き上げることになるでしょう。よりよい設計をより早く完成する能力を持つことで、この新しい手法を受け入れた組織は、市場での生き残り競争のカギとなるものを手に入れることになるでしょう。