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CFD シミュレーションを使った
クリーンなガスタービンエンジンの設計

ドイツの研究所ではCFDシミュレーションを使ってクリーンなガスタービンエンジンの設計をしています。

航空機の数の増加も一因である気候変動は世界規模の問題です。ドイツのシュトゥットガルト大学の航空宇宙熱力学研究所の研究者グループは、ドイツ研究振興協会と内燃機関技術研究組合が出資しているプロジェクトで、タービン翼エンドウォールの形状を変更した最新のガスタービンの改善に取り組んでいます。

研究成果のエンドユーザーはガスタービンエンジン製造会社で、成果をエンジン開発プロセスに組み込むことを望んでいます。目標は、ガスタービンの燃費を上げ、汚染物質を減らすことです。これが実現した場合、エンジンメーカーはクリーンかつ効率的なガスタービンエンジンを製造するようになり、さらにエンジンを使う人は燃料消費量が減るため、お金を節約することができます。この肯定的な結果はどちらも、環境により良く、地球規模の気候変動の防止に貢献します。

Tecplot 360 EX を使ってタービン翼とエンドウォールまわりの気流を可視化した例

 

CFDを使った気流のシミュレーションと熱伝達の解析

シュトゥットガルト大学の研究者がこのプロジェクトにどのように取り組んでいるのかというと、数値流体力学 (CFD) を使ってガスタービンの気流をシミュレートし、タービン翼とエンドウォールへの熱伝達を解析しています。

Sven Winkler氏は、2010 年 6 月から航空熱力学研究所で勤務しています。Winkler氏は Bernhard Weigand教授の指導下でガスタービン熱伝達の向上に取り組む研究員の一人です。「簡単に言うと、私たちのグループはガスタービンの冷却技術の研究を行なっています」と Winkler氏は話しています。「私たちの研究は、ジェットエンジンや固定ガスタービンの開発に応用することができます。私たちの環境に大きな利益をもたらすプロジェクトに従事していることに興奮しています。」

ガスタービン内では、燃料が燃焼室で燃焼し、高温の排気ガスがタービンローターを通って流れ、出力が生成されます。排気ガスは非常に高温なので、タービンローターの部品も非常に高温になり、溶けないように冷却する必要があります。これらの部品がどれくらい熱くなるのかは、排気ガスの温度だけでなく、部品周りの空気流れにも影響をうけます。

「空気が「望ましい」方法で部品まわりを流れ、部品があまり熱くならないようにするには、部品の形状がどのようになるのがよいのかを観察しました」とWinkler氏を説明しました。「私たちの研究では、2つの隣接するタービン翼の間にあるエンドウォールと呼ばれる領域が研究対象となります。」

航空熱力学研究所の研究者が作成したエンドウォールの輪郭 (左側) と、基準フラットエンドウォール (右側) との比較を示すTecplot 360 EX で生成された画像

 

CFD ポストプロセッサとして使用される Tecplot 360 EX

最も有益なエンドウォール形状を見つけるため、Winkler氏と彼の仲間は、エンドウォール周りの気流の CFD シミュレーションを行い、流れからエンドウォールへの熱伝達を測定して、さまざまな形状を分析しています。これらの CFD シミュレーションの結果は、データ可視化・解析ソフトウェアツールであるTecplot 360 EX で後処理します。

2014 年にリリースされた Tecplot 360 EX は、デスクトップコンピューターで利用可能な最もメモリ効率の高い CFD ポストプロセッサで、最新の高忠実度の CFD ソリューションの読み込み時に必要なメモリが以前のバージョンより 92% 少なくなっています。

今や CFD エンジニアは Tecplot 360 EX を使って、かつては最高性能コンピューティングセンターでのみ可能だったデータを読み込み、分析できるようになりました。航空熱力学研究所の場合、ほとんどのデータ ファイルは 1.5 から 2.5 ギガバイトです。データの必要時読み込み、徹底的な並列化と、その他多くのコード最適化の組み合わせである Tecplot独自の SZL 技術によって、計算とレンダリングにおけるソフトウェア業界トップクラスの速度が実現しました。

「Tecplot を使って、ストリームラインと渦を可視化することで流れがどのように見えるのか、 この流れによってエンドウォールの温度分布がどのように見えるのかを可視化しました。」と Winkler氏は言います。「このような調子で、周りに望ましい流れがあり、部品の温度が最も低くなる最適な形状を見つけることができました。」温度が低くなれば、部品を保護するのに必要な冷却用空気が少なくてすみます。冷却用空気が少なくなれば、ガスタービンの効率が向上します。これによって、プロジェクトの最終究極の目標であるガスタービンの燃費の向上と汚染物質の減少が達成されます。

 

氷形成法と呼ばれるユニークなアプローチ

その後も CFD シミュレーションで調査したエンドウォール形状を作成するため、Winkler氏と彼の同僚は Ice Formation Method (IFM:氷形成法) と呼ばれる非常にユニークなアプローチを使用しました。研究所には、並んだタービン翼を持つ水路の試験施設があります。研究者たちは、この翼列のエンドウォールを冷却し、水が凍結する温度より低くしました。そして、冷却したエンドウォール上に水の流れを設定し、冷却壁上に氷層を作成しました。この氷層は、定常状態になるまで流れと接触し、最適形状となります。

「レーザースキャナーを使って氷の輪郭をデジタル化し、それを CFD シミュレーションで使用して、どのように氷の輪郭が流れ場を変えるのかと、それに伴う温度分布も確認しました。」とWinkler氏は付け加えます。「この IFM メソッドは、エネルギー散逸とエンドウォールへの熱伝達に関して最適化された輪郭を生成するのにうってつけの最適化法です。」

これらの複雑な CFD シミュレーションは、Tecplot のようなパワフルなポストポロセッシングソフトウェアを使用してデータが視覚化されたときだけ有用であることをWinkler氏は認識していました。「ソフトウェアパッケージの本当の利点は、効率性と生産性を上げることです。」というのが Winkler氏の見解です。「Tecplot 360 EX は、簡単に可視化を提供し、流動シミュレーションを判定する分野で優れていて、ツールのスクリプト機能でいろいろな流動シミュレーションで同じものを見ることができます。同様に重要なのは、ソフトウェアが使いやすいことです。」

シュトゥットガルト大学の航空宇宙熱力学研究所については http://www.uni-stuttgart.de/itlr/ をご覧ください。

 

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