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乱流への遷移を解明

July 10, 2013 in Case Studies, Research, Tecplot 360 Case Studies

乱流とは複雑なプロセスです。Jeff Chu 氏は、この一般的ではあるが、まだ謎の多い現象の解明に意欲的に取り組む大学院生です。Chu 氏は、テキサス大学オースティン校で基礎研究を行いながら、流れの構造を観察し、乱流を引き起こす原因を解明しようとしています。

彼は次のような手順で、この複雑な現象を解明しようとしています。

 

ステップ 1: ナビエ・ストークス方程式を解く

Chu 氏は、表面から突出した小さな摂動がある平らで硬い底壁面の計算領域を定義しました。Chu 氏はナビエ・ストークス方程式を解くため、キャンパスのスーパーコンピューターを使用しました。コンピューターが生成する10種のデータセットの ASCII 出力は次のとおりです: X、Y、Z (空間変数) ; U、V、W (速度) ; ωx , ωy , ωz (渦) ; および λ2 (流れの渦構造を識別)

 

ステップ 2: ASCII 出力をバイナリに変換する

Tecplot は、バイナリのデータセットを ASCII より速く読み取ることができるので、Chu 氏は(Tecplot 社のウェブサイトから無料ダウンロードした)Preplot という Tecplot プログラムを使用して、スーパーコンピューター上で出力を変換しました。それから、バイナリデータをデスクトップワークステーションに転送しました。

 

ステップ 3: ビデオを作成する

Chu 氏が直面した課題の 1つが、データセットが大きすぎて彼の 24GB RAM ワークステーションでは効率的に処理できないということです。この問題を解決するために、彼は見事な解決策を生み出しました。「私は1回に1枚の ‘スナップショット’ を作成して、それらを繋げて ‘ムービー’ にしました。これを効率的に行なうために、Tecplot スクリプト言語を使用してマクロを作成しました。」

Chu 氏はこのやり方で、ビデオを作成しました。ビデオには、突出した摂動が原因で発達した乱流構造が、ヘアピン渦と疑似流れ方向の渦構造から成る乱流くさびを引き起こす様が表示されています。図は、流れ方向の速度別に色付けした λ2 の等値面によって可視化されています。

マクロの作成 Chu 氏は 3 ~ 4 時間かけてスクリプト言語を習得し、マクロを描きました。今ではマクロが何百ものデータセットを順番にロードし、適切なカラーバーに配置して適切な表面を作成し、自動的にムービーを出力します。彼が行ったプロセスの詳細は次のとおりです。

  1. Tecplot 360 でデータセットをロードし、変数をプロットします。
  2. 見たいフレームスタイルと使いたい色を作成します。
  3. それから、一度に 1 つのデータセットを自動的に読み取るように Tecplot 360 に要求します。最初のデータセットは、時間 0 で 10 の変数です。次のセットはその少し後、となります。ビデオが示すように、順番にこれらのデータセットをリンクすると、何百ものスナップショットを繋げてムービーとして見られるようになります(このプロセスを完了するには何十時間もかかるため、Chu 氏はたいてい夜間に実行しています)。

 

ステップ 4:情報を視覚化する

3D ムービーを見るために、通常、Chu 氏は λ2 の等値面を使用するため、ヘアピン渦などの渦構造を可視化できます。

ヘアピン渦の可視化 この例では、Chu 氏は Tecplot を使って、構造の高速な部分をオレンジから赤へ、遅い部分を緑に色づけしました。プロットされたものから、ヘアピンカーブの曲線部と直線部を捉えることができました。

なぜこれが重要なのでしょうか?「曲線部と直線部がどのように作用しているのかを明確に捉えることは、我々の研究に不可欠です。」と、Chu 氏は説明しています。「というのも、周囲の層流に乱流を拡散する点において、曲線部よりも直線部が重要であると考えているからです。」

渦度のプロット たとえば、Chu 氏は Tecplot で正渦度を赤で、負渦度を青で表示することができます。「これによって、流れ構造のさまざまな側面がどのように相互に作用しているのか理解することができます。つまり、複雑に絡み合っているように見えるものをどのように理解すればいいのかが判ります。」

なぜこれが重要なのでしょうか?「乱流は渦の回転によって生成されると我々は考えています。渦の回転によって、流れ方向の渦度は自己増殖し、いくぶん直線的に広がります。しかし、流れ方向の過度がスパン方向の渦度に変わった場合は、さらに多くの乱流が生成されると考えています。」

 

ステップ 5: 細部周辺を拡大表示する

「乱流は、非常に複雑なプロセスです。」と、Chu 氏は説明します。「Tecplot の可視化機能と、我々の直感を使って、細部にわたって何が起こっているのかを理解できるようになると期待しています。」

「我々はまず仮説をたてて、そこに何があるかを確認するためにデータを調べます。何が起こっているのかを確認することによって仮説を証明でき、そうでなければ、シミュレーション自体の変数を変更して、変更による違いを確認することができます。違いが発生した場合、我々の確認した結果と因果関係があると想定できます。」

Chu 氏は Tecplot 360 を使用して、極小の構造と、それらが相互に作用する様子を明確に捉えています。カメラを移動して、構造を異なる方向から見たり、カメラを側面に回して、側面から見ることも可能です。構造の配置や、もつれた状態を正確に見ることができます。「乱流を拡大し、回転させる機能は、実際に何が起こっているかを理解する上で必要不可欠です。」と、Chu 氏は言います。

 

彼らが発見したものは…

「我々はこれまでにいくつかのことを排除することができました。」Chu 氏は言います。「表面上に流れがある場合、表面速度の渦度は 0 になります。我々が発見したことの 1 つに、スパン方向の乱流の下にスパン方向滑りを許す場合、乱流はこの状態から増加します。このことから、乱流くさびの形成において、スパン方向滑りがないことは重要な要素でないことが判ります。」

「我々が今取り組んでいることは、何が起こっているのかを理解することです。」Chu 氏は言います。「それがなぜ起こるのかを理解すれば、全く新しい、大きな飛躍になるでしょう。そして、それこそ我々が期待していることなのです。」