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マッシュルーム‐バスティング (Mushroom-Busting) デザインが、自動車レースにより大きな感動と興奮を!

2013年4月

Tecplot Chorus は、Swift Engineering 社が取り組んだフォーミュラレースカーの “マッシュルーム型乱気流” の改良に活用されました ― これによりオーバーテイクを容易にし、レースをよりエキサイティングにしました。

レースでは、特にフォーミュラレースでは、レーシングカーが常に猛スピードで走行しているわけではありません。どのようなスピードで走行していようと、車体後方の乱気流がオーバーテイクの妨げになることがあります。

「それは観客をガッカリさせることにもなるのです。」と言うのは、Swift Engineering 社の空気力学チーフであるジョン・ウィンクラー博士。オーバーテイクが少ないということは、競争が少ないということ。ゴールぎりぎりまで、「レーシングカーが一列に並び、ただ周回しているということになります。このようなことはスポーツの感動と興奮を奪ってしまうと、と多くの人は思うでしょう。」

1つの案は、オーバーテイクを容易にして、順位争いの回数を増やすこと。その答えは、マッシュルーム‐バスティングを減らすことです」 ― Swift Engineering 社・ジョン・ウィンクラー博士

 

Swift Engineering 社は、レース観戦が大きな感動と興奮で包まれるよう、より革新的で新しい設計の開発を進めています。これは、彼らにとって初めてのことではありません。Swift Engineering 社は、約30年近く、設計と複合的な製造のイノベーションで、チャンピオンシップで勝利するレーシングカーを生み続けています。1983年のフォーミュラ・フォードの設計の初期から、現在の時速 200 マイルで重力 4G でのコーナリング可能なフォーミュラ・ニッポンのレーシングカーまで、Swift 社は、その革新的技術と品質で世界に広く知られています。

 

“マッシュルーム型乱気流” を破壊すること

「今まで以上に大きな感動と興奮に包まれるレースを観客に楽しんでもらえるよう、デザイナーとして貢献する。全ては、このテーマから始まりました。」とウィンクラー博士は話しています。「アイディアの1つはこういうものでした。オーバーテイクを容易にして、その回数を増やすこと。その答えは、できるだけ “マッシュルーム型乱気流” を小さくするということです。」

ウィンクラー博士は、レーシングカーの後方ウィングの後ろに残される、後ろから見るとマッシュルームの形のようになる乱気流のことを説明しています。

ウィンクラー博士と彼のチームは、乱気流の形を変え、路面からできるだけ上部へ持ち上げるようにすることで、オーバーテイクしようとしているレーシングカーに対する障害となる後方乱気流を破壊し、削減することに挑戦しています。

そして彼らは、その挑戦のために Tecplot Chorus を活用しているのです。

 

処理の概要

ウィンクラー博士は、Swift 社のチーフサイエンティストであるマーク・ページ氏と、空気力学者アンディ―・ルー氏とともに、スウィフト社が開発したフォーミュラカー “Swift017.n” の後方ウィングの摂動研究をさらに簡素化し、また乱気流のダウンストリーム形状と同じように、ウィングの位置と回転が及ぼす空気力学の観点から、性能がどのように変化するか、から調査しました。

ウィンクラー博士は「私たちは乱気流のダウンストリームの形状の変化を調べましたが、パフォーマンスが犠牲にならないことも同じぐらい重要でした」と、説明しています。

「レース観戦の楽しみと興奮をたかめることが重要なことの1つですが、レーシングカーが遅くなったり、これまでと同じようにコーナリングできなかったり、反応性が低くなるようなことがあれば、それは失敗なのです」と続けています。

そして、彼らは、ダウンフォースやドラッグのような定量的空気力学のパラメーターを説明するため、定性的な流体可視化の結果を活用しました。

 

グリッドとソルバー

ウィンクラー博士とルー氏は、車体周辺の完全構造遠方場と非構造グリッドを使って、ハイブリッドメッシュを作成しました。次に Metacomp 社の CFD++ flow solver を利用し、華氏 59 度の環境で、時速 150 マイルで走行させ、最初のランは、インハウス HPC クラスター上で約9時間かかりました。チームは、走行ごとに計測時間を3.5時間に調整しながら、最初の走行を初期条件とし、その後の走行で補完しました。

ルー氏とウィンクラー博士は、車両全体と後方ウィングのダウンフォースのサロゲートプロットを作成し、より詳細に分析するため、Tecplot Chorus へインポートしました。プロットでは、特に回転の動きの点においていくつかの特徴的で予想外の結果が明らかになりました。

ルー氏は「ウィングの向きと位置を少し変更するだけで、動作結果において大変著しい変化を見ることができました」と説明しています。「それが、まさに私たちを悩ませていたことでした。ウィングをほんの少し動かすだけで、このような数値上の大きな変化を予想できたでしょうか」と続けました。

ルー氏とウィンクラー博士は Tecplot Chorus を利用し、ウィングの上面と下面における表面圧力を測定比較しました。

「それぞれの走行の定性的評価を行うにつれて、ダウンフォースの数値上で、今までとは異なる、何かドラスティックなことが起こっている、ということが分かったのです」とルー氏は話しています。「しかし当初はそれが有効なものかどうかは分かりませんでした。それが正しい結果なのか、エラーなのかを確かめる比較を行うしかなかったのです」

最終ステップは、ウィングの断面図とその周囲の流れを示す対称面を生成することでした。これにより物理的特性を明らかにし、またダウンフォースの数値が正しかったことが確認できたのです。プロセスから得られたもっとも興味深い発見のうちの1つは、最適なパフォーマンスでは、もっとも高く、閉塞性の低い乱気流を生成していたことです。

これまでの調査は、ウィングの位置と入射角の関係性における後方ダウンフォースと乱気流の形状の感度をエンジニアが理解するための予備調査でしかありませんでした。次のステップは、より多くの設計変数を含む調査に膨らませ、設計変数と高感度性を分離するために実験計画法 (DOE) を実施し、外部最適化ルーチンを通して CFD++ を実行することです。

 

Tecplot Chorus は、スピードと、効率性、統一性をもたらします

ウィンクラー博士とルー氏は共に、Tecplot Chorus は、効率的にマルチで可視化された流れ場の比較を容易にしたと言います。これらの比較結果から、異常なダウンフォースとドラッグの傾向を説明することを助けました。同時に、乱気流のダウンストリーム内の断面が、摂動パラメーターの関数として、乱気流の動きを強調することができたのです。

 

「設計者の立場から、なぜあるコンセプトと設計がほかよりも優れているかを理解することは非常に重要です」とウィンクラー博士は言います。

「流れ場を調査することは、空気力学設計のプロセスの重要な要素です。何故なら、ソリューションを確認するだけではなく、ある設計の変数が流れ場へどのように影響するかを、設計者がより深く理解できるからです」

他の視覚化ツールでは、この種の比較作業をスクリプトを使って行われていますが、Tecplot Chorus は、全てのソリューションを容易に集めて、分類し、視覚化してくれます。

 

「Tecplot Chorus のもっともすぐれた機能のうちの1つは、より多くの時間、問題に向き合うことができ、トラブル処理やスクリプト作成の時間が削減できたことです」とルー氏は続けます。「以前は 4、5 時間も必要だった作業が、今は 5 分から 10 分でできます。スクリプトを作成し、管理するような業務には、必要以上に時間を浪費せず、今はお客様への技術的問題解決のために大切な時間を使うことができるのです」

 

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