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Tecplot 360 によるイルカのバイオテレメトリータグの改良設計

Tecplot 360 と CFD は流体力学的に取り付けるバイオテレメトリータグの実現可能性の測定に使用されています。

Tecplot 360 CFD 可視化ソフトウェアを使用して、情報の解読、デコード、および視覚化を行い、背びれまわりの基本的なフローをより完全に把握することができます。画像著作権: Dr. Vadim Pavlov, University of Kiel

私たちは何十億もの魅惑的な生物と世界を共有していますが、イルカほど注目され世界中から愛される生物はいません。私たちの世界とは大きく異なる水の世界で、遊び心があり泳ぎの名人である彼らは、最大で時速 20 マイルで進むことができます。この知能の高い動物が私たちに教えてくれることは多数あり、研究者たちはイルカやその他の海洋生物の快適な生活に配慮しながら知識を収集するが必要であることに同意しています。今日の研究者にとって最大の課題の 1つは傷害または不快感のリスクを最小限に抑えるバイオテレメトリー追跡タグの新しい装着方法を見つけ出すことです。

海洋哺乳類科学ジャーナルは最近、画期的な研究を発表しました。イルカの長期行動研究のための低侵襲的な追跡方法の開発への初めての試みです。研究結果は、計算流体力学 (CFD) に大きく依存しており、バイオテレメトリータグが流体力によってイルカの背びれに保持できるという理論をサポートします。効果的な流体タグの開発によって、イルカの背びれに穴をあける必要を最小限に抑えるか無くすことができます。

ドイツ国立科学財団の資金提供により、ヴァディム・パブロフ博士と彼のチームはドイツ、キールにあるキール大学 Westcoast 研究技術センターでの研究を実施しました。グループは理論のサポートに絶対不可欠な CFD の結果を視覚化するために Tecplot 360 を使用しました。

 

イルカに低侵襲的なバイオテレメトリータグの基礎づくり

現在、研究者は吸着カップまたはピンのいずれかを使用してイルカにバイオテレメトリータグを装着します。吸着カップ付きタグは侵襲性が低く、短期的な研究向きですが、短時間で落ちてしまう傾向があります。長期の研究では、研究者は背鰭に穴を開けてピンでタグを装着します。これは痛みを引き起すだけでなく、ピンとタグの存在が動物の動作に影響し、結果データを偏らせます。また、タグを付けられた海洋動物は健康上のリスクに直面すると示唆する重要な証拠もあります。たとえば、タグを付けられて放されたオウサマペンギン (学名 Aptenodytes patagonicus) は、生存および生殖の両方を損ない、最終的に人口増加率に影響してしまいます。1

海洋哺乳類に健康で快適な生活を提供するより良い方法の探求と、科学の進歩もあり、パブロフ博士と彼のチームは、遠隔測定の研究のために流体力学的に設計されたタグを使用することの実現可能性を調査することを決定しました。彼らは、イルカの体の抗力を最小限に抑えて、自然に水中を進むことができるようにする一方、適切に流体力学設計されたタグは長い期間、背びれに安全に装着されると理論付けました。

 

CFD を利用した流体力学的流動の可視化

一連の 35 の実験を通して、パブロフ博士のチームは 2つのモデルのデータを収集しました: 1つはタグを付けていない普通のイルカ、もう1つはタグを付けたイルカです。両方のモデルの揚力と抗力の効率を比較し、装着されている装置の影響を把握します。フローは、毎秒 2 メートルから毎秒 10 m の速度範囲で、ヨー (偏揺れ) とピッチ (上下揺れ) の角度の範囲をシミュレートしました。

実験の複雑さと収集するデータ量のため、研究チームはドイツ、シュトゥットガルト大学のスーパーコンピューター施設を使用しました。シミュレーション結果は 35 回の実験のうち 33回でタグを付けたイルカに関して揚力係数の適正な減少を示し、イルカが泳ぐときは、合力が流体力学的に設計されたタグを背びれにしっかりと固定させていることを示しました。

アニメーション著作権: Dr. Vadim Pavlov, University of Kiel.

 

Tecplot で基本的なフローを理解する

解析が必要な膨大なデータ量と直面し、パブロフ博士は Tecplot 360 CFD 可視化ソフトウェアで情報の解読、デコード、および視覚化を行いました。チームは、彼らの仮説を検証した背びれまわりの基本的なフローをより完全に把握しました。

Tecplot 360 によってパブロフ博士のチームは、エッジ流れとタグの後ろの渦の不在を観察することができました。これは適切に設計されたタグはイルカに与える負荷が少ないという彼らの仮定を裏付けるものです。「私達の調査は Tecplot 360 のおかげでアイデアをより明確に確認しやすくなりました。関心のある領域でゾーンを移動し、スライスを移動してストリームトレースをアニメーション化すると、より良いアイデアを得られます。たとえば、設計にいくつかのミスがあるとかの場合です。」

科学者たちは、背びれ周りの流れをシミュレートし、多くの変動条件および角度の下で観察することができるため、とても簡単に改善領域を識別することができました。

 

より正確なデータのための自然な動作を実現

タグのパフォーマンスの詳細な理解を得るために CFD 解析と可視化を使用した後、タグのプロトタイプが海洋哺乳類研究部によって作成され、フランスのアンティーブにあるマリンランド保全研究センターのイルカでテストされました。流体力学的なテストは実施していないにもかかわらず、短時間のタグの装着に対する行動反応は、タグがイルカの動作に悪影響を与えないとの結論にチームを導きました。

「イルカは自分の体に装着されている装置に非常に敏感なので、これは小さいが重要なステップです。」とパブロフ博士は言います。「普通、彼らは付着物を取り除こうとします。」

この研究の結果はイルカの研究だけでなく、アザラシ、アシカ、カメ、ペンギンを含む他の海洋生物の調査のためにも期待されます。現在、生きている柔軟な動物に付けられる堅くて人工的な装置の影響は、その生物が完全に自然な態度で行動することへの障害となります。

「次世代のテレメトリータグは、対象種の生態を理解し、装着する場所の自然な特質に留意した、動物に優しい方法で構築されると思います。」とパブロフ博士は言っています。

 

非侵襲的なタグ方式の大きな利益

遊泳速度 8 m/秒, ピッチ角度 = 0 度 , ヨー角度 = 10 度のイルカの周囲でシミュレーションしたフローの圧力分布とストリームトレース。画像著作権: Dr. Vadim Pavlov, University of Kiel.

CFD 解析の研究は、プロセスの最初のステップです。次の 2年間で、パブロフ博士と彼のチームは、イルカの加速、旋回、水面に跳ね上がるなどの広範な自然な動作における新型のタグの流体力学の実機テストを実施する予定です。

パブロフ博士は自身のジャーナル記事の結論で、こう述べています。「海洋哺乳類に対する非侵襲的なタグの開発は、科学倫理とテレメトリー研究で得られるデータの信頼性の双方の観点から重要です。」

人間は生まれつき好奇心が強く、この地球上と地球外に共生するすべて – 現存のまたはそれ以外のもの – についてできるだけ多くのことを学ぼうとする意欲があります。しかし、私たちを魅了する生物に危害を及ぼさないことは我々の倫理的義務です。Tecplot 360 のような確かな CFD 可視化ツールによって、パブロフ博士と彼のチームのような科学者たちは海洋哺乳類科学の限界を拡げることができ、人道的で安全な動物研究の実現を支援し、将来より多くの発見をもたらすでしょう。

 

1EISSN: 1476-4687 ISSN: 0028-0836 Nature
Reliability of flipper-banded penguins as indicators of climate change
Claire Saraux et al.
471 (7337), 2011, p.254
doi:10.1038/nature09858