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Tecplot 360 の CFD 可視化が、建物や橋梁、そして船舶の完全性保護に役立つ

November 2010

構造エンジニアリング会社である Weidlinger Associates 社で働いている Adam Hapij 氏は、先日、息子の幼稚園に行った時、自分が何をしているのかを 5 歳児でも理解できるように説明しました。そして最後はシンプルに「僕はみんなを守っているんだよ。」と締めくくりました。

実際、Hapij 氏の仕事の本質は人々を保護することです。Weidlinger は、半世紀以上前に事業を起こして以来、アメリカやその他の国々で、美術館や裁判所、大使館など、あらゆる種類の構造システムを設計してきました。Weidlinger では、軍事施設やインフラ、高層ビルなどの安全性に関わる国家レベルの重要な問題を解決するために、最新の解析技術を使っています。

Figure 1: ブロンクス・ホワイトストーン橋 (Bronx-Whitestone Bridge) デッキの改装設計

Weidlinger は、世界貿易センタービルの崩壊を解析した主要なエンジニアリング会社です。同社では、テロ対策を施した在ベルリンのアメリカ大使館などの新しい建築物に加え、オクラホマ市のアルフレッド・P・ミューラー連邦ビル (Alfred P. Murrah Federal Building) が進行性崩壊によって倒れた後に、再建のためのより強固なビルの設計も行いました。また、マグニチュード 8.0 の地震でも耐えられるサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ (San Francisco-Oakland Bay Bridge) の新しいスパン要素の設計や、ブロンクス・ホワイトストーン橋 (Bronx-Whitestone Bridge) の空気力学的安全性の改良なども手掛けています。さらに、機雷の爆発や水中爆発が、アメリカ国防総省の軍艦および潜水艦の構造的完全性に与える影響の研究も行っています。

安全な構造物の建設に必要になる極めて詳細な分析を行うために、Hapij 氏と同僚の Weidlinger のエンジニア達は、数値シミュレーションと数値流体力学 (Computational Fluid Dynamics; CFD) の可視化ソフトウェア Tecplot 360 を使って最先端の視覚シミュレーションを作成しています。Tecplot 360 により、大量の複雑な情報をすぐに理解することが可能になりました。

爆発やその他の非常事態がビルや橋や潜水艦の構造完全性に与える影響を解明するためには、最新のコンピューターモデリングを用いた複雑な計算が必要です。極限荷重の条件下で、建築物がどのように構造変化するのかを解析するために、Weidlinger のエンジニア達は精巧なコンピューターモデルを開発し、得られた結果を Tecplot 360 の簡単明快な方法で解析しています。

「ポストプロセッシングという面から考えてみましょう」Hapij 氏は言います。「解析を行うと、大量のデータが得られますが、そこからどうにかして実際何が計算されてきたのかという所を理解できるようにしなければなりません。Tecplot 360 では、様々な切り口からデータを観察することができます。さらに、たくさんの種類のデータを同時に表示することもできるので、可能な限り最大の全体像を描くことができます。」

突風が構造物に与える影響を可視化する

Weidlinger では、既存の建築物の改修から、爆発やその他の非常事態にも耐えられる船舶や新しい建物の建築まで、幅広く様々なプロジェクトにおいて Tecplot 360 を活用しています。

そのために、彼らは、ターゲットとなる構造要素 (例えば、柱など) が機能しなくなるシナリオや状況を予測します。そして、特定の柱が破壊された結果として、残りの構造物の内どの程度が機能しなくなるかを解析します。ここで得られた知見を使って、Weidlinger のエンジニア達は手際よく構造要素にかかっているカギとなる重力荷重を構造の周囲から取り除いていくことができ、結果を確認することができます。また、大規模な崩壊を起こすことなく、荷重に耐えられるように、残りの構造を設計することもできます。

Hapij 氏はアメリカ国防総省と共同で、水中の構造物が爆発に対してどのような反応をするのかについても研究しています。シリンダーの異なるパーツにおける様々な圧力の影響の解析から、Hapij 氏および彼のチームは、崩壊モードに加え、いつシリンダーが水中で内破するかを数値的に予測するモデルを開発しました。

陸上の爆発でも、水中の爆発でも、エンジニア達は爆発という事象を伝搬する波面という視点から考えます。局部破壊点から放射状に広がる波は、隣接する構造物の負荷の再分配が上手く行われていない場合、その安定性を失わせる原因になり得ます。

Figure 2: ブロンクス・ホワイトストーン橋 (Bronx-Whitestone Bridge) の基礎に近い地盤の柱に地震のような現象が起こった場合を想定した水平方向の加速度スペクトル。左側のイメージは ”free-field” 加速度スペクトル (基礎の無い場合の応答) 、右側のイメージは基礎のすぐ近隣の土壌内でのスペクトルをそれぞれ表しています。基礎の有無によって、異なる深さおよび異なる時間での土壌の水平方向の運動に違いが見られます。これらの土壌運動のパターンを可視化する機能により、地震によって何が起こっているのかをエンジニアが実感を持って理解しやすくなります。さらに、この土壌運動が基礎にどのような影響を与えるのかを特定すると、橋の性能や改良の必要性の有無に最も大きな影響を与える応答時間に時間や労力を集中することができるようになります。

Hapij 氏によると、たくさんの “what-if (仮定) ” シナリオを次々に調査する場合に Tecplot 360 は理想的だそうです。「かなりの量の流体を高解像度でモデリングし、圧力波の伝搬を 3D で可視化するのは、大変な処理です。」と彼は言います。「我々は Tecplot 360 を使って、構造変化と水圧の大きさの違いを表すカラーコンターの両方共を同時に見ています。」

Tecplot 360 の利点

Weidlinger のアメリカやイギリスのエンジニア達は、Tecplot 360 を自社製のシミュレーションソフトウェアと組み合わせて、構造的挙動の 2D や 3D の可視化を簡単に作成しています。

「我々は、PLT ファイルを直接書き出すことにより、Tecplot 360 との連携を実現しています。これにより、データを即座に望むスタイルで読み込むことができます。」と Hapij 氏は言います。「また、アニメーション作成の時には、マクロにかなりお世話になっています。我々は様々な目的でアニメーションを使いますが、第一の目的は、クライアントに情報をプレゼンテーションすることです。」

例えば、同社では、構造物の脆弱な部分を調べるために、突風や地震動や激突衝撃など様々なタイプの負荷の影響を組み合わせた進行性崩壊を 3D で可視化することができます。エンジニアは、データのスライスを見ることにより、データのどこにエラーがあるか調べ、解析しなおすことができます。データのエラーが無くなったら、情報を簡単に設計の改良に生かすことが可能です。

「Tecplot 360 のデータをどこからでもカットできる機能は素晴らしい!」と Hapij 氏は言います。「そのお陰で、データセット全体で何が起こっているのかを理解するのが格段に早くなりました。」

Tecplot 360 のひとつの特長は、大きなデータを取り扱うことができる機能ですが、これにより Weidlinger のエンジニア達は、爆発が構造にどのような影響を与えるのかについて明確に理解することができるようになり、また、この情報をクライアントに視覚的にプレゼンすることができるようになりました。

「以前は、場合によっては、データ全体をソフトウェアの外で実際にスライスして、それをパーツごとにアプリケーションに移していました。」と Hapij 氏は言います。「今では、そんなことはせずに、一気に作業できます。ひとつのフレームで表示できるものが多くなるほど、より優れた全体像を得ることができます。」

大きなデータをアニメーション化する機能も、エンジニア達が素早くデータを解釈するのに役立っています。「かつては、すごく大きな構造の表示をスクリーン上でリフレッシュすることができるというだけで信じられませんでした。」と Hapij 氏は語ります。「大きすぎて読み込むことさえできなかったようなファイルも、現在は簡単に可視化できます。大変大きな時間の節約です。」

そして、Tecplot の強力な解析ツールと洗練されたアウトプットにより、Weidlinger では、データの高精度な理解を得ることができています。「もし、数百メガバイトのインプットと数ギガバイトのアウトプットを含むファイルがあったら、これを調査することはかなり困難な仕事になるでしょう。」と Hapij 氏は言います。「Tecplot 360 による視覚的なスクリーニング方法は、我々が必要としている品質管理を可能にします。」

つまり、これらの利点は、Hapij 氏や彼の同僚達がクライアントにより早くより良い提案を行うことを可能にし、より低いコストのより安全な構造物という結果につながっているのです。「早いうちにある程度のレベルの確信を得られれば、早く設計を改良していくことができます。」と Hapiji 氏は言います。「この確信が無いと、設計の最初の方の段階で行った決断を後から変更する必要が出てきたりして、コストが増加してしまいます。」

より安全な未来を設計する

Hapij 氏たち、Weidlinger のエンジニアは、より頑丈な構造物を設計することによって、世界をより安全にしようと奮闘しています。Tecplot 360 は、そんな彼らのゴール達成のために一役買っています。

「Tecplot 360 を使うと、『何が起こったのか』『何故起こったのか』という所を、既に崩壊した構造物のケースのように理解することができます。」と Hapij 氏は言います。「また、これから起こる可能性とその原因についての予想にも役立つので、より頑丈な構造物を設計することも可能になります。この理解によって、『構造物とそれを使う人々を守る』という我々のゴールに、また一歩近づくことができました。」