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Tecplot 360 が Space X の打ち上げから帰還までの軌跡を描く

  • February 2006 | Contributed by Michael Colonno
  • SpaceX | www.spacex.com

チャレンジ: ロケット打ち上げの成功

ロケットを設計、建築し、宇宙への打ち上げを成功させることは、並大抵の努力ではありません。NASA や他の国際的な宇宙機関は、何十万人ものエンジニア達の重労働と決心、そして、政府の莫大な財政的援助を投入して、これを達成してきました。この大仕事に小さな民間企業が挑むことは、さらに大きなチャレンジです。

13 「我々は分離流と渦の離脱を探していますが、3D の優れた可視化でないと見ることができません。」 — Michael Colonno氏, SpaceX

研究者

Michael Colonno 氏は、Space Exploration Technologies 社の空気力学のチーフエンジニアです。Space Exploration Technologies 社は、カリフォルニア州エルセガンドにある企業で、低周回軌道から静止軌道までの惑星ミッションで、民間および政府機関の宇宙船を宇宙へ輸送するための様々な打ち上げ機を開発しています。同社の使命は、宇宙へのアクセスのコストの削減と、最終的には 10 倍の信頼性の向上です。

オメレク島の発射台上の Falcon 1

ソリューション: 信頼性を向上させながらコストを削減

Space Exploration Technologies 社は、Falcon シリーズというロケットの土台から最上部まで、二つの新しい液体燃料エンジン、基本構造、誘導およびコントロール ソフトウェア、地上支援装置も含めて、すべてを設計・建築しています。同社のロケットの積荷は、米国およびその他の国の民間のものも政府機関のものも含む予定です。

Space Exploration Technologies 社は、最初のロケット Falcon 1 の打ち上げで、技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関である国防高等研究計画局 (Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA) の貨物を積む計画を立てています。

同社では、現在、より大きな後継機種である Falcon 5 および 9 も設計段階に入っています。Falcon 1 は、1段目は再利用が可能ですが、上段は使い捨てであるのに対し、次世代のロケット達は 2段とも特定目的の使用に関して再利用が可能となります。

同社のエンジニア達は社内で作成した CFD コードを使用して、Falcon 9 の形状やコンセプトを検討しています。シミュレーションの結果により、ロケットの積荷や、抵抗を小さくすることによって、全体の空力性能をどうやって改良・最適化を行っていくかをエンジニア達が検討することができます。CFD ソルバーは、Linux 搭載 Dell Blade server の 8 マシン、16 プロセッサクラスター上で実行されています。

新しい設計、新しい課題

オリジナルの設計よりもサイズが大きくなったことに加え、Falcon 9 はフェアリング (積荷を収容する機体の先頭部分) の直径が他の機種よりも大きいことも特徴となります。大きなフェアリングについて、Colonno 氏は次のように説明します。「そのような形を持っている場合には、フェアリングの後ろに流れの分離領域が得られます。渦や、大きな低圧の航路が発生することが良くありますが、できればこれらは避けたいものです。なぜなら、これらは高度の定常および非定常の負荷がロケットにかかることにつながるからです。」

地球の大気中やシミュレーションされた宇宙空間中を航行する時に、大きなフェアリングが機体全体に及ぼす影響についてもっとよく調べるために、Colonno 氏は Tecplot を使って CFD の結果を可視化しています。提案された機体の設計を満足のいくものにするために、Colonno 氏は、最も過酷な空気力学環境で構造のシミュレーションを行います。

プロットは、最も過酷な空気力学の荷重条件のひとつである、最大動的圧力における Falcon 9 の圧力係数 (Cp) およびマッハ (M) のコンター図を示しています。プロット中のストリームトレースは、粘性があって乱れた CFD の解を 3D で分かりやすく表現しています。「機体の前のストリームトレースの列によって、流れの方向から見て機体の裏や上面に渦のようなものを確認することができます。」と Colonno 氏は語ります。「これは、時に警告になることもあります。我々は分離流や渦の発生を探していますが、他の人には 3D の素晴らしい可視画像にしか見えないでしょう。」

Colonno 氏は Tecplot を 1 年半ほど使用していますが、Tecplot がなければこの仕事は難しかったと言います。Colonno 氏は、機体表面、または、周囲の距離と圧力や温度の関係を見るために、2D / X-Y プロットと同じく 3D コンター図を Tecplot で作成します。ここで示されているようなプロットは、機体の構造的な負荷を生成したり、揚力や抵抗を計算したりすることに使用します。

Falcon 9 の圧力係数 (Cp) のコンター図とフェアリングの風下側および入射角 90 度に沿ってプロットされた Cp のサーフェイス。このデータは、定常空力的負荷計算の基準として役立ちました。

Tecplot は複雑な問題の理解を助けます

機体の流れの特徴の裏側にある複雑な現象を理解することは、Tecplot の可視化機能がなければ、ほとんど不可能に近いかもしれません。特注のポストプロセスソフトウェアももう一つの選択肢としてありましたが、Colonno 氏は、大抵の場合、こういったものは良い選択肢であるとは考えていません。「誰かが私に複雑な流れ特性を識別して分離するための素晴らしいコードを渡してくれたとしても、それを信用することは出来ないと思います。なぜなら、これに対する絶対評価基準を見つけ出すことは、とてもとても難しいことだからです。」と Colonno 氏は言います。「個人的には、流れ特性のタイプを見つける最も良い方法は、可視化であると思っています。」

Colonno 氏によると、Tecplot を使うことのメリットは 2つあると言います。最も優れた CFD ソルバーであっても、発散したり単純に完全には収束しなかったりすることがあるので、結果を可視化して計算が上手くいったかどうかすぐに確認できることは、大変大きなメリットです。「クラスターから出力されてきた結果を最初に得た時に、最も良いことは、計算が上手くいっているかどうかすぐに決定できることです。」と Colonno 氏は言います。「正しい流れ特性が得られているのか?すべて良い方向に向かっているのか?衝撃波などの特徴は正しい位置にあるか? 結果を開いてから数秒で、それが上手くいっているか問題があるかすぐに分かります。」

もうひとつのカギとなるメリットは、流れ特性の裏側にある複雑な現象を素早く理解するための機能です。Colonno 氏は、Tecplot の可視化によって、宇宙空間に出ていく乗り物の空気力学の改良のために不可欠な要素である、大きなスケールやカギとなる流れ特性をすぐに識別することが可能になり、これは可視化ソフトウェアなしではかなり難しいだろうと言います。

Colonno 氏が考える、Tecplot の最も素晴らしい特長は、データのインポートやエクスポートの容易さと、文書用に適した可視化画像をすぐに作成できる性能です。Falcon ロケットの構造設計に影響を与える複雑な流れ特性を同じ会社の人達に理解してもらうために、Colonno 氏は Tecplot で作った画像を良く email で送っているそうです。

Colonno 氏は、Space Exploration Technologies における仕事に Tecplot は必要不可欠であると確信しています。「もし、このデータを可視化するために Tecplot がなかったら、結果が正しいのかどうか、教えてくれるかもしれないコードを自分で作る他にどうしたらよいかわかりません。」Tecplot は重要な気付きを与えるだけでなく、もっとわかりやすいメリットもあります。「Tecplot は時間、ひいてはお金の節約に間違いなく役立っている、と言えると思います。」と Colonno 氏は言います。