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音が目に見えるものだとしたら:可視化機能を利用して騒音問題をすばやく理解

Hong Yuan Tech 社、自社製ノイズ検出ツールに Tecplot の可視化機能を統合し、より高速でより効率的なデータ解析システムを開発。

  • 2009年9月:Hong Yuan Tech 社ソフトウェア開発マネージャ Shen Heping 氏
  • Hong Yuan Tech 社:http://en.hyaptech.com/

騒音の少ない自動車、ハイクオリティな音響設備をもつ演奏会場、騒音規制の基準を満たす飛行機…、このような快適さや楽しさ、環境への配慮を考慮した製品は、いずれも科学者やエンジニアがノイズの発生源と分布を詳しく調べることによってはじめて生み出せるものの一例です。ノイズの分布やノイズの発生源の周囲で何が起こっているかを実態として目で見える形で把握すること、これができれば、ノイズの力学的理解や、対応策を素早く判断するのに役立ちます。Hong Yuan Asian-Pacific Tech 社が開発する測定・分析ツールにおいて、可視化がいかに重要な要素であるかという理由がここにあります。北京を拠点とするこの会社は、自動車や航空機メーカー、造船、音響、および学術的研究など、ノイズの低減や除去にまつわる問題と格闘する幅広い産業分野の顧客にサービスを提供しています。最新製品 noiseXpert™ は、空気中および水中におけるノイズ発生源の分布を素早く表示するノイズ計測・解析のためのシステムです。

noiseXpert システムの実験モデルを使って作成された音圧分布のアニメーション。 ターゲット周囲の音場が三次元グラフィックで動的に表現されています。アニメーションの中間であらわれる赤いスポットは、ノイズの発生源をあらわしています。アニメーションを使うことによって、モデルとそれを囲む音場との関係が一目瞭然となります。

「我々のシステムを使えば、従来よりも多くのアルゴリズムやデータをひとつの画面に集約させることができます。これまで実現するのが困難だったより詳細なレベルで解析をすすめることができます。」と Hong Yuan のソフトウェア開発マネージャ Shen Heping 氏は語ります。「研究者はこれによって製品のもつ振動やノイズ特性をこれまでよりも早く、そして、より深く理解することができるようになり、最終的に、より良い製品作りに生かすことができるわけです。費用がかかる割に精度が落ちるようなこれまでのプロセスを自動化できる点がもっとも重要かもしれません。」

noiseXpert は、ターゲット近傍の音圧を計測することで、ターゲットそのものの振動に関する特性はもとより、その近距離場と遠距離場における圧力、速度、強度、加速度、および、遠距離場の指向性をも明らかにします。 noiseXpert システムは、ノイズデータを計測・分析する次の3つのコンポーネントで構成されています。

図1:noiseXpert システムの概略図。ノイズデータがシステムにスキャンされると、複数のアルゴリズムを使って解析が進められ、最後に 2D、3D、ベクトル、アニメーションプロットとして可視化されます。
  • 自動スキャニングシステム: このシステムは、ノイズの写真を撮るカメラと例えることができます。写真に必要な解像度は、それを撮影するカメラのピクセル数で決まりますが、これと同じように、音場をより詳細に理解したい場合は、それだけ多くのデータ収集チャネルとトランスデューサーが必要になります。もちろん、ハードウェアのコストも劇的に増大します。noiseXpert のスキャニングシステムなら、限られたチャネルで粗画像と詳細画像の両方を提供できるため、精度を落とすことなくコストを抑えることができます。
    「お客様は、マニュアルで同様のシステムの構築を試みています。」と Helping 氏は続けて語ります。「しかし、そのようなマニュアル・システムでは、我々の自動システムに比べて精度が大きく落ちる上に、実験を行うにも非常に時間が掛かります。」

  • 解析: noiseXpert™ には、カバースペクトル、近距離場ホログラフィー、遠距離場ホログラフィ、ビーム形成、BEM など、音場を詳細に解析するためのアルゴリズムが複数装備されています。アルゴリズムを使い分けることで音場の様々な局面を調べることができます。検討することができるアルゴリズムが多いほど、エンジニアは音場についてより深く知ることができます。noiseXpert では、ユーザー独自のアルゴリズムを容易に追加できるため、高度でフレキシブルなシステムを構築することが可能です。
    「従来までは、こうしたアルゴリズムのうち、せいぜい1つか2つのアルゴリズムを使えれば良い方でした」と Helping 氏は語ります。

  • データ可視化:計測データの収集と、各種アルゴリズムの計算が完了すると、エンジニアの最終ステップは、ノイズの可視化です。音場は、音圧、速度、強度、指向性毎に表示され、これらは、2D、3D、ベクトルおよび、アニメーションプロットで表現されます。研究者は、こうしたプロットによってノイズがどこから発生し、音波がどのように流れるかを視覚的に容易に把握することができます。
    Heping 氏は語ります。「可視化しなければ、解析結果は数字の羅列に過ぎません。お客様が特殊なプロットの作成をお望みであれば、我々はカスタマイズにも応じます。」
図2: noiseXpert システムの実験モデル。このモデルをつかって得られた検証結果から、ノイズの発生源が正しく検出され、空気中および水中における音場特性が正しく表示されることが確認されました。
図3: 時間的に変化するチャネル別サンプルデータの比較。

Tecplot SDK

noiseXpert™ システムの開発において指揮をとったのは、Hong Yuan 社のプロダクト・マネージャーです。製品の開発において、可視化コードを独自に記述し、高度に専門化したソフトウェアプログラムの開発にまつわるあらゆる専門的な要求、開発、検証、デバッグといった問題に取り組むという選択肢もありました。また一方で、自社製品に出来合の技術を統合させることにより、核となる専門領域への注力を維持するという選択肢もありました。

「ノイズの検出と除去において、我々は専門家です。ノイズデータをどのように特定し、収集し、解析するかを熟知しています。」と Hepin 氏は語ります。「しかし、お客様がノイズの分布を発見したり、ノイズ除去によって起こる影響を手軽に理解するためのプロットやイメージ、あるいは、アニメーションを簡単に作成するすべについて、我々は理解していません。こうした作業も自分たちで挑戦してみようかと思いましたが、必ずしも成功できるわけでもありません。既存の技術とのインテグレーションこそ、まさに理に適うものと判断しました。」

Heping の開発者達は、Tecplot SDK を使って開発作業を進めることにしました。Tecplot SDK は、エンジニアリング用の可視化フレームワークです。開発者はこれによって高品質な可視化機能と視覚データサービスを自分達のアプリケーションに素早く統合することができます。「我々はデータ解析に焦点を絞ることにし、プロット作成と可視化については Tecplot SDK にお任せしました。」と Heping 氏は語ります。「お客様はこれによって、多数の視覚情報を作成することが可能になり、データの奥に潜む物理的特性を素早く理解することができるようになるわけです。」Heping 氏と彼のグループが Tecplot SDK を選んだ理由は、複合的な可視化機能を時間を掛けずに簡単に利用できる点、多数のグラフィック要素を生成できる点、広範なインプットとアウトプットに対応している点、そして、アニメーションのような高度なグラフィック機能を利用できるといった点にあります。結局、予定していたよりもずっと早い、わずか10ヶ月足らずで noiseXpert システムのプロトタイプを2つ完成させ、検証まで終えることができました。

「Tecplot の技術サポートについては申し分ありません。」彼は続けてこう言います。「しかし、我々にとってもっとも重要な点は、ノイズ問題の理解を深めることで、お客様がより良い製品を製造されることに貢献できているということです。」

図4: 実験モデルから得られた遠距離場の指向性解析の結果。音場が広がっている方向を示しています。
図5: 音圧の分布解析。赤色の部分がノイズ発生源です。