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芝浦工業大学 工学部 機械工学科 (東京都) 角田 和巳 教授 (所属は取材当時のものです) |
気体や液体の運動を扱う流体力学について、機械工学という専門分野の中で研究しています。流体から効率的にエネルギーを取り出す手法の提案や、物体に働く流体抵抗 (エネルギー・ロス) を軽減する技術の確立など、流体力学の知見を応用してエネルギーに関する諸問題を解決することに関心があります。
最近は、1000 度近い高温で作動する燃料電池 (SOFC) の高性能化を目的とした研究に取り組んでいます。燃料電池は、水素と酸素の化学反応を利用して電力を取り出す装置で、水素と酸素を電池に供給し続けることによって、連続的に発電が行われます。このとき、電池内部において水素と酸素の流し方を工夫すると、化学反応や温度分布の不均一性が改善され、電池性能を向上させることが可能となります。一方、作動温度の高い SOFC では、電池内部に生じる流れを観察することは容易でなく、実験的なアプローチを困難なものとしています。そこで我々は、流体力学的な条件を一致させた上で、実際の SOFC と同サイズのモデルを利用して内部の流れを測定し、性能向上が期待される流路形状の提案を行ってきました。
我々の研究では、流速、圧力、温度などの情報から流れの挙動を把握し、その物理的なメカニズムを解明することが極めて重要です。そのため、これらの物理量をフィールドデータとして取得し、速度や圧力などの二次元分布を実験的に調べています。例えば、速度場は粒子画像流速計と呼ばれる計測システムを利用して測定しますが、計測された大量の二次元データから速度場を可視化するような場合、Tecplot は非常に威力を発揮します。特に、速度ベクトル、カラーコンター、等速度線、流線など、流れの可視化に必要な処理機能がほとんど網羅されているので、データ解析のポストプロセスを全て Tecplot に任せることができ、とても重宝しています。一方、IGOR Pro は、固定点で計測した圧力の時間変動や、ある特定方向の速度分布など、主に一次元データの解釈や整理を行うツールとして活用しています。波形解析や統計処理など広範なデータ解析に対応している点は IGOR Pro の大きな特徴ですが,なんと言っても、一切の妥協を感じさせないグラフ作成機能の充実ぶりが IGOR Pro の真骨頂ではないかと思います。
IGOR Pro を使い始めたのは、1995 年前後だと記憶しています。大学院時代にお世話になった当時助手の先生が Macintosh で IGOR Pro を使われているのを拝見し、グラフの完成度が高く EPS 出力に対応していたこと、データ解析機能が充実していることに感銘を受けたのがきっかけでした。その後、二次元あるいは三次元の流れ場を描画できるソフトウェアの必要性に迫られ、Tecplot も使用するようになりました。私の研究分野では流れの可視化が不可欠なため、ベクトル描画機能にはこだわりがありましたが、ベクトルやコンターの描画を細部まで微調整できる Tecplot は、こちらの要求を十分に満たすものでした。また、Tecplot は大学でもライセンスを取得しているため、研究室の学生が自由に使えるというのも大きなメリットでした。
多種多様な機能を備えていますが、研究者の自由な発想やこだわりに応えてくれる豊富なグラフ作成機能がやはり一番便利な機能です。グラフ作成時に、Excel 形式のデータファイルを直接読み込めるのも、思った以上に便利です。使い慣れてくると、コマンドラインも便利な機能の一つと言えるのではないでしょうか。マウス操作より効率的な場合もありますし、操作の履歴をたどれる点もユニークだと思います。そのような意味では、大量のデータ処理とグラフ作成を必要とする研究者であれば、IGOR Pro は専門分野を問わず有効に活用できるソフトです。
学部3年生のゼミで簡単な CFD を行っていますが、最後の可視化処理に Tecplot を使わせています。私が直接 Tecplot の使用方法を指導することはないのですが、学生はさほど苦労せずに操作方法を身に付けているようです。可視化ソフトとしての Tecplot の高機能性 (可視化表示が高品位であること、様々な組み合わせでプロットを重ね合わせられること、容易にアニメーションを生成できること、等々) は言うまでもありませんが、初心者でもすぐに使いこなせる操作性・親和性こそが、Tecplot の最も便利な機能かもしれません。
また、Tecplot は数値流体力学の可視化ソフトに位置づけられていますが、流体実験の可視化にも問題なく適用できますし、二次元・三次元データの可視化処理を行う研究者であれば利用価値の高いソフトだと思います。