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茨城工業高等専門学校 自然科学科 物理 佐藤桂輔 講師 |
私の研究室では、図1 に示すようなペロブスカイト酸化物 REMO3 (RE= 希土類元素、M=3d 遷移金属元素) の物性研究を行っています。この構造を持つ酸化物は、RE と M の元素を色々と変えることによって、超伝導、強磁性、強誘電性、強弾性、磁気・電気光学学効果など非常に幅広い物性を示します。その中で、私の研究室では、磁性元素 (主にコバルト) を含むペロブスカイト酸化物のスピン状態と、その弾性との関係の研究を行っています。
物質の磁性は、スピン状態がどのような状態にあるかが影響します。そもそも物質はどのようなスピン状態を実現しうるのか?といった基礎的な研究を東京大学の物性研究所の強磁場グループと共同で研究しています (図2) 。研究の中で、酸化物において磁場を印加したときに生じる形状変化が磁場を取り除いた後も残る、磁場による形状記憶効果を発見しました。現在は、この磁場による形状記憶効果を何か応用に結びつけられないかと考えながら、スピン状態と形状記憶効果の関係を明らかにしようと研究しています。
研究は、多結晶や単結晶の育成 (図3) 、X 線回折測定、超電導磁石を使った磁化、抵抗、歪みの温度依存や磁場依存の測定 (図4) 、応力-歪みの測定 (図5) といった手順で進みます。測定して得られたデータはすべてIGOR Pro で扱っています。
高専の教員なので、研究だけでなく教育にも力を入れています。授業で扱うグラフの作成にも IGOR Pro を使用しています。
測定装置やデーターロガーでデータをテキストファイルに落とし、それを IGOR Pro に取り込んでいます。
データ解析とグラフの作成です。また、授業で使うグラフも作成しています。授業では、グラフマクロ機能を使って、ぱらぱら漫画のような、ぱらぱらグラフ (?) を作成しています。まず、学生に縦軸と横軸だけのプリントを渡します。そして、スライドでグラフの全貌を徐々に出現させながら説明し、それを書き写させるようにしています。2年生の物理でエンジンの動作をグラフにするときや、音のうなりのグラフを書くときなどに使用しています。
東京大学物性研究所で大学院のときの研究室で使っていたのがきっかけです。ロシアから来た研究者の方から使い方を教わりました。ほかにも研究室の先輩から便利な使い方を教わりました。
余談になりますが、大学院を卒業した後、企業の研究所で6年間勤めていたときのことです。入社してしばらくは、エクセルでグラフ作成やデータ整理をしていたのですが、IGOR Pro に慣れていたので、非常に辛かったのを覚えています。そこで、IGOR Pro を会社でも使えるように、上司に「グラフ作成ソフトを買ってください。」とお願いしました。
しかし、金額を伝えたら「エクセルを使え!」と一蹴されてしまいました。それから半年くらいはエクセルで頑張っていたのですが、やはり辛くて、今度は「データ解析ソフトを買ってください。」とお願いしました。すると、あっさりと購入許可を得ることができました。企業でも IGOR Pro を使用することができたきっかけです。
グラフマクロ機能が素晴らしいです。各温度における磁化や磁歪などのグラフを作成するときに、グラフマクロの中身を少し変えれば同じようなグラフをすぐ作れるのが良いです。また、グラフマクロを使うことを念頭に wave 名をしっかりと付ける癖がついたので、データ整理もうまくできるようになりました。
コマンドラインも非常に使いやすいです。wave 同士の四則演算などがコマンドラインですぐにできるところは重宝しています。また、すべて履歴に残るので、データ処理を見直すのが容易にできます。ちょっとした計算も、関数電卓や電卓アプリを使わずに、IGOR Pro のコマンドラインに「print ~」と入力して行うことも多いです。
データーブラウザーも多用しています。解析またはデータ処理用の IGOR Pro ファイルと、グラフ表示用の IGOR Pro ファイルは分けて整理しています。例えば、ある物質の磁化曲線を、単位変換などの一連のデータ処理を行い 1つの IGOR Pro ファイルとして保存します。そして、幾つかの物質 (たとえば組成を系統的に変えた物質) で、同様なデータ処理を行います。それらをまとめたグラフを作成するときに、新しく IGOR Pro ファイルを作成し、そこへデータを集約させるのにデーターブラウザーを使用しています。
使用感の悪い点は、ソフトの起動が少し遅いところでしょうか。けど、一度立ち上がれば安定して使えるので、それほど不満ではありません。履歴がカラー表示されると、見直すのがより容易になる気がします。
企業にいたときに、独自の解析をするために少しプログラムを組んでいました。残念ながら公開できる形で研究成果として残っていません。
東京大学の物性研究所の徳永将史先生のところでは、測定したデータや画像を取り込み、さらに解析するプログラムを作成して使っています。共同利用で使わせていただいたことがあります。
大容量のデータだけでなく、多数のデータを扱う研究者でしたら、どの分野の人にも勧めたいです。若い研究者や、学生にも使って欲しいです。私の研究室の学生には、強制的に使わせています。
本事例作成に関し、佐藤先生のご協力に感謝いたします。
(インタビュー:2014 年9 月)
※所属・役職はインタビュー時のものです。