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Rev D.01 の新しい機能

主な新機能

  • 新しい DFT 汎関数 (APFD, HISSbPBE, Truhlar グループで開発された M11 など) が追加されました
  • Raman および ROA 強度を、力の定数や基準振動モード計算とは別に求めることが可能となりました。
  • aug-cc-pV*Z 基底関数を補強するオプションが追加されました。
  • 対称性考慮により、CIS および TD 計算性能が向上しました。

 

新機能の詳細

  • Raman および ROA 強度を、力の定数や基準振動モード計算とは別に求めることが可能となりました。これにより、文献 [J. R. Cheeseman and M. J. Frisch, “Basis set dependence of vibrational Raman and Raman optical activity intensities,” JCTC 7 (2011) 3323-3334.] にて推奨されているような大規模基底関数を用いる場合においても、Raman/ROA 強度を容易に求めることが可能となりました。Polar=Raman (もしくは Polar=ROA) キーワード指定により、checkpoint ファイル (Freq 計算によって得られたもの) からの力の定数の抽出、新たな分極率微分 (ROA の場合には、他の2つのテンソル微分も必要) の計算、および、力の定数との組み合わせを行い、強度やスペクトルを予測します。2段階の ROA 計算例は、test0931 にて確認可能です。

  • Freq=Anharmonic の出力に、IR 強度が含まれるようになりました。また、出力がさらに見やすくなりました。

  • TDDFT 計算における TDA キーワード利用により、Tamm-Dancoff approximation の利用が可能となりました。

  • CIS/TD/TDA 計算における CIS や TD 励起エネルギー範囲について、下記の新オプションが追加されました。

    GOccSt=N N 番目およびそれ以上の占有軌道のみを利用し、initial guess を生成します。
    GOccEnd=N N >0 の場合、N 番目までの占有軌道を利用し、initial guess を生成します。 N <0 の場合、上から |N| 個までの占有軌道を利用せずに、initial guess を生成します。
    GDEMin=N 予測励起エネルギーが N/1000 eV 以上となる guess を生成します。
    DEMin=N 励起エネルギーが ≥ N/1000 eV の状態のみを収束させます:
    N = -2 の場合、入力ファイルから閾値を読み込みます。
    N < -2 の場合、|N|/1000 Hartrees を閾値に設定します。
    IFact=N 初期の反復計算中に更新される状態数を増加するファクターを指定します。
    WhenReduce=M M 回の反復計算後、希望する状態数まで減少させます。

    IFact のデフォルトは Max(4,g) であり、g は Abelian 点群の次数です。WhenReduce のデフォルトは、TD 計算の場合は 1、TDA および CIS 計算の場合は 2 です。求めたいエネルギー範囲内に多くの状態が存在する場合には、より大きな値を指定しなければなりません。

  • いくつかの新規 DFT 汎関数、および、2個の新規経験的分散力モデルが追加されました。

    • EmpiricalDispersion=PFDGD3 、および、GD3BJ キーワード指定により、Petersson-Frisch 分散力、Grimme の D3 分散力、および、D3BJ 分散力モデルを利用することが可能です。
    • APFD キーワード指定により、分散力を含む Austin-Frisch-Petersson 汎関数を利用することが可能です。また、APF キーワード指定により、分散力を含まない Austin-Frisch-Petersson 汎関数を利用することが可能です。
    • B97D3 および B2PLYPD3 キーワード指定により、Grimme の D3BJ 分散力が追加された B97 および B2PLYP 汎関数を利用することが可能です。
    • HISSbPBE キーワード指定により、HISS 汎関数を利用することが可能です。
    • SOGGA11M11SOGGA11XM11LMN12LN12N12SX、および、MN12SX キーワード指定により、Truhlar グループで開発されているこれらの汎関数を利用することが可能です。

  • diffuse 関数を含む cc-pV*Z 基底関数を補強するオプションが追加されました。

    • s および p 型関数のみ (H と He の場合は、s 型関数のみ) を含む spAug-cc-pV*Z が追加されました。
    • 各角運動量に、1つではなく 2つの殻で補強した dAug-cc-pV*Z が追加されました。
    • Truhlar の “calendar” 基底関数シリーズが追加されました。この基底関数シリーズの名称は、分極関数を追加した cc-pV*Z 基底関数が、Aug-cc-pV*Z として知られていることに由来しています。Truhlar は、“Aug” が英語の 8月(August)の略記であることから、cc-pV*Z 基底関数への新しい拡張式に月の名称を利用しました。例えば、Jul-cc-pV*Z 基底関数は、cc-pV*Z に L-1 までの diffuse 関数を追加したものです。ここでの L は、分極関数で利用する最も高次の角運動量を意味しています。同様に、Jun-cc-pV*Z は L-2 までの、May-cc-pV*Z は L-3 までの、Apr-cc-pV*Z は L-4 までの diffuse 関数を追加したものです。

      デフォルトでは、s および p 型の diffuse 関数が常に含まれることに注意してください。これは、矛盾を回避するためです。しかし、Truhlar および共同研究者による初期の定義とは異なっています。TJulTJun などのキーワードを利用すると、制限が無条件に適用されるオリジナルバージョンとなります:つまり、TJun-cc-pVDZ は、Cl 原子に s 型の diffuse 関数のみを追加しますが、Fe や Br 原子には、s 型および p 型の diffuse 関数を追加します。

  • MM および ONIOM(MO:MM) 計算用入力ファイルにおいて、予備分析機能が追加されました。MM 電荷による電荷分布のモーメントが出力されます。入力ファイルに PDB 情報が含まれる場合には、残基上の正味 MM 電荷が出力され、各 ONIOM レイヤーにおける正味 MM 電荷として指定されます。

  • 新しい SCF オプションと機能
    • SCF=Big キーワード指定により、O(N3) ステップが無効となります。この機能により、非常に大きな計算 (>5000 基底関数) における計算速度が向上されます。
    • SCF=Restart キーワード指定により、SCF 計算の再計算時に不必要なステップを飛ばします。しかし、異なる基底関数や異なる構造を用いた計算から guess を読み込む際に必要なステップも飛ばしてしまいます。異なる構造または異なる基底関数による計算結果を再利用し、新たな SCF 計算を実行する場合には、Guess=Restart を使用してください。
    • CF=YQC キーワード指定により、SCF 収束が難しい場合 (非常に大きな分子など) に有効な新しいアルゴリズムを利用することが可能です。最急降下法に続いて、SCF=QC でも採用されているスケール化最急降下法が実行されますが、その後、2次収束の代わりに標準 SCF に切り替えられます。標準 SCF が収束しなかった場合にのみ、2次収束が利用されます。
    • SCF=MaxNR=N キーワード指定により、SCF=QC の二次収束に切り替える閾値、および、SCF=YQC の標準 SCF に切り替える閾値を、10-N に設定します。デフォルトは、10-2です。
    • conventional SCF が、任意の角運動量で実行可能となりました。これは主に、外部プログラムに対する新しいインターフェイスにとって有用です。Gaussian 09 における計算では、これまで同様、デフォルトの direct SCF 法が推奨されます。

  • Int=SuperFineGrid キーワード指定により、より大きな pruned グリッドの利用が可能となりました。これは、UltraFine の約3倍の大きさであり、より精密な計算が求められる際に有用です。グリッド定義は、周期表の第1列および第2列の場合には (150,974)、それ以上の場合には (225,974) となります。

  • 原子電荷:
    • CM5 原子電荷が、Hirshfeld 電荷とともに計算されるようになりました。Pop=Hirshfeld もしくは Pop=CM5 のどちらのキーワードでも計算されます。
    • 計算済み原子電荷をチェックポイントファイルに保存することが可能となり、Geom=Check キーワード指定をした MM 計算時に利用可能となりました。Pop=SaveMullikenPop=SaveESPPop=SaveNPAPop=SaveCM5 などのオプションにより、各電荷情報を保存することが可能です。多層 ONIOM 計算の場合、デフォルト保存では、明示的に計算した電荷、すなわち QM 層にある原子の電荷情報のみが保存されます。入力ファイルに記述した原子電荷は使用されず、これらのオプションにより保存された新規割り当て電荷情報に置き換えられます。
      Uncharged オプションキーワードの追加により、入力ファイルに記述した原子電荷は保持し、QM 層にある電荷情報が与えられていない原子のみ電荷を求めます。Pop=(Uncharged, SaveMulliken)Pop=(Uncharged, SaveCM5) などの組み合わせキーワードにより、オリジナルの原子電荷情報に加え、電荷情報が与えられていない原子に対して新たに求めた電荷も保存することが可能となります。
    • QEq 電荷が、QEq の新バージョン [A. K. Rappé, L. M. Bormann-Rochotte, D. C. Wiser, J. R. Hart, M. A. Pietsch, C. J. Casewit and W. M. Skiff, “APT: A next generation QM-based reactive force field model,” Mol. Phys. 105 (2007) 301] を用いて算出されるようになりました。OldQEq キーワード指定により、Revision C でのデフォルトである古いバージョンを用いた QEq 電荷計算が可能です。QEq=Uncharged キーワード指定により、MM 電荷が 0 の原子にのみ電荷が設定され、他の原子は指定された電荷を保持することが可能です。

  • NBO ver.6 のインターフェイスが実装されました。Pop=NPA6Pop=NBO6Pop=NBO6Read、および Pop=NBO6Delete キーワード指定により、外部インターフェイス経由での NBO6 プログラム利用が可能となります。NBO プログラムを実行するスクリプト、および、NBO プログラムは、Frank Weinhold (nbo6.chem.wisc.edu) から入手する必要があります。

  • Freq=NoPrintNM キーワード指定により、振動計算時に基準振動モードを出力させないことが可能となりました。各モードにおける振動数と強度は、出力されます。

  • Gaussian 09 から外部プログラムを実行する際に利用する External コマンドが、かなり一般化されました。一電子積分、もしくは、一電子および二電子積分と他の行列要素を外部プログラムに提供することや、外部プログラムから MO や電子密度のような計算結果を回収することが可能となりました。全詳細と計算例が、g09/doc サブディレクトリ (Windows の場合は doc フォルダー) にあります。External キーワードに対する新規オプション (スクリプト名に従う必要があります) を、以下に示します。

    InUnf 座標情報と一電子行列要素 (重なり、core Hamiltonian 等) を含む Fortran 書式なしファイルを外部プログラムに提供します。ファイル内容の詳細は g09/doc/unfdat.txt を、ファイルの読込みと内容の出力に関するサンプルプログラムは g09/doc/rdmat.F をご参照ください。1Elintegrals はこのオプションと同義です。
    2ElIntegtrals 二電子積分情報も、Fortran 書式なしファイルに出力されます。このオプションには、SCF=Conventional も含まれます。
    InputFchk formatted checkpoint ファイルが生成され、外部プログラムに提供されます。
    OutputUnf Fortran 書式なしファイルを外部プログラムに提供し、外部プログラム/スクリプトから得られるデフォルトテキスト出力ファイルの代わりに、同じ構造における更新または置き換えられたファイルを、G09 において計算結果として読み込みます。
    IOFchk formatted checkpoint ファイルを生成し、外部プログラムに提供します。その後、結果を取り込むために、新しい .fchk ファイルを読み込みます。
    ReadInputSection このオプション利用により、Gaussian09 が外部スクリプトように自動生成する外部テキスト入力ファイルの内容を修正することが可能となります。上述オプションのひとつ (例えば IOFchk) を利用し、Gaussian09 と外部スクリプト間においてデータ移行を行う場合、デフォルトの外部テキスト入力ファイルは必要ありません。このオプションを用いることにより、Gaussian09 入力ファイルからセクション (通常の空白行でくぐられた箇所) が読み込まれます。このセクション中のテキストが、通常の外部入力ファイル内容の代わりに、外部テキストファイルに書き込まれます。この機能により、外部スクリプトに追加命令を提供するための柔軟性が実現されます。

    これらのオプションは、test0769 にて確認可能です。

  • いくかのサードパーティープログラム用データファイルの生成が可能となりました。
    • SCRF=COSMORS キーワード指定により、COSMO/RS や他のプログラムで利用可能なデータファイルを生成することが可能です。
    • Pop=MK IOp(6/50=1) キーワード指定により、Antechamber (RESP 電荷生成用の AMBER プログラム) 用のデータファイルを生成することが可能です。
    • NMR=CSGT IOp(10/93=1) キーワード指定により、ACID プログラム用のデータファイルを生成することが可能です。

  • Default.Route における新たな定義内容

    -U- formchkfreqchk などのユーティリティにおけるデフォルトメモリを指定します。
    -F- formchk ファイルに対するデフォルトファイルタイプ引数を指定します。
    -M- デフォルトメモリ量を指定します。(%Mem と同じ)
    -L- Linda 計算に対するデフォルトオプションを指定します。(GAUSS_LFLAGS 環境変数に反映されます)
    -R- -#- と同義です。

    これらの項目全ては、環境変数や UNIX コマンドライン引数での設定が可能です。環境変数 GAUSS_XDEF による設定は、Default.Route ファイル内の –X– による指定と同じです。同様に、コマンドラインの引数で g09x = "value" とした場合も同じです。例えば、以下の記述は全て同じ設定内容となります。

    -M- 4GB in Default.Route
    export GAUSS_MDEF=4GB
    g09 -m="4GB" …

    優先順位は、コマンドラインの引数、環境変数、Default.Route での設定、プログラム内部のデフォルト設定となります。

  • Geom=NGeom=N キーワード指定により、GaussView で表示する際に利用するデータとして、N番目の最適化構造を checkpointfile から取り出します。N =1 は、入力分子構造です。先の構造最適化計算において redundant 内部座標を使用した場合、Geom=Step=M は自動的に Geom=NGeom=M+1 に変換されます。

  • Geom=Connectivity 入力に結合次数 0.1 を指定することにより、分子力学における原子タイプや結合に影響することなく、内部座標を生成するための結合指定が可能となりました。

  • 新たな Link0 キーワード

    %UseSSH Linda worker 起動時に、rsh ではなく ssh を利用します。
    %DebugLinda Linda worker の起動時、および、終了時に関する詳細情報を出力します。

  • def2 および QZV 基底関数にて利用されるポテンシャルに必要となる GenECP 入力に、ECP ポテンシャル名 def2 および QZV の利用が可能となりました。

  • 各種内部座標生成を、抑制することが可能となりました。

    Geom=SkipAll いかなる内部座標生成も、自動的に抑制します; 全内部座標は 、Geom=ModRedundant の入力部分で明示的に指定する必要があります。
    Geom=SkipAng 結合の内部座標のみ生成し、結合角および二面角の内部座標は生成しません。
    Geom=SkipDihedral 二面角の内部座標生成を抑制します。
    Geom=SkipHBond 水素結合座標の生成をスキップします。

  • IRC=GradientOnly のデフォルトが、DVV ではなく EulerPC となりました。初期ポイント、全ての N 番目の予測ステップ、および、全ての M 番目の修正ステップにおいて二次微分を計算するための IRC=(CalcFC,RecalcFC=(Predictor=N,Corrector=M)) キーワードを利用することにより、IRC 計算中において、解析的二次微分が断続的に実行されます。

  • 計算性能向上
    • CIS および TD 計算において、より効果的に対称性が利用されるようになりました。
    • メモリ内に保存された二電子積分を用いた計算において、対称性に適合した基底関数による積分が利用されるようになりました。つまり、対称性がある場合における計算速度が向上し、開殻系の場合には in-core 計算で必要となるメモリ量が減少されました。
    • 大きな系での MM の力の計算において、Force=NoStep キーワードを利用することにより、推定構造最適化ステップでの計算に含まれる O(N3) の計算を回避することが可能となりました。

  • 入力ファイルおよび入力処理におけるマイナーチェンジ
    • DFTB 入力ファイルの取扱いを、Elstner により提供されたファイルとの互換性があるように修正しました。ファイル末尾の HTML データは、無視されます。また、乗数 –例えば 10*1.0 — の利用が可能となりました。しかしながら、G09 で利用するためには、Elstner のファイルへのいくつかの追加修正が必要です。詳細は、http://www.gaussian.com/g_tech/g_ur/k_dftb.htm#dftbinput をご参照ください。
    • スクラッチファイルの拡張子を、.scr から .skr に変更しました。この変更は、Windows のウィルス検出ソフトによる問題を回避するためです。
    • UNIX および Mac OS X バージョンにおいて、入力ファイルの拡張子を指定しない場合には、最初に拡張子 .gjf ファイルを探すように変更されました。.gjf ファイルが見つからない場合、拡張子 .com ファイルを探します。
    • Opt=ModRedundant 入力において、定義済み座標の初期値指定がサポートされなくなりました。代わりに、入力構造を、希望初期値に対応した構造に修正する必要があり、座標定義から初期値指定を除く必要があります。
    • Freq=AnHarmonic への追加オプションの書式が変更されました。オンライン版 Frequency キーワードドキュメント中の “Additional Input for Freq=ReadAnHarmon” の項目をご参照ください。http://www.gaussian.com/g_tech/g_ur/k_freq.htm#AnharmInput

 

参照