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応用言語学の研究に活用

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複合領域で分析しなければならないデータの形態が多岐にわたる研究をしている人には最適なプログラムだと思います。

玉川大学 文学部 (東京都) 小田眞幸 教授

研究されている内容について教えてください

私の研究領域は「応用言語学」といって、一言でいえば言語学の理論や研究成果を利用して社会で起こる諸問題の解決に結び付けることを目的とする分野です。人文科学と社会科学の複合領域と言っていいのではないでしょうか。今回 NVivo 8 を使うことになった研究は科学研究費の基盤研究 (C) 「外国語教育政策策定におけるパブリック・ディスコースの役割」 (研究課題番号:21520596) で、新学習指導要領にある小学校の外国語活動や高校の「英語で行う英語の授業」など新しい政策が決定されるのにあたってその理由として「民意」がどれだけ反映しているのか、そしてそういった民意が形成される過程で日常生活でどのようなかたちで英語に触れているのか、またマスメディア等の影響はどれだけあるのかを調べようとするものです。

NVivo をどのような場面で使用されていますか?

テータの処理のスタイルをもとによく質的 (Qualitative) 研究と量的(Quantitative) 研究に分けられることがあります。本研究はテーマの性格上インタビュー、アンケート、記者発表や新聞記事などの文書、さらに広告などの画像など多様な形式のデータを集め、整理したうえで分析しなければなりません。さらに「応用」研究と位置付けている以上、その成果が最終的に報告書を読む人に伝わらなければなりません。しかしこれまで類似した研究は何度か行ったのですが、残念なことに複合領域研究のむずかしさはデータの分析方法を1つの領域にあわせようとするともう1つの領域から見て全く価値のないように映ってしまうことです。折角収集した貴重なデータをどう効率よく整理するか? その問題を解決してくれたのが NVivo です。NVivo は多様な形態のデータを整理して集めておくところです。

NVivo を使い始めたきっかけは?

数年前、あるヨーロッパの学会で確か外国語によるコミュニケーションにおけるジェスチャーについての研究発表ががあり、興味をもって聞きに行ったのですが、この研究はビデオによる録画を分析したものだったのです。動画を分析する場合一度必要な場面を静止画にしてコーディングをするのがこれまでのやり方ですが、大変時間がかかり煩雑な割には、信ぴょう性にも疑問がありました。もちろんコーディングの瞬間は動画を止めるのでしょうが、動画と NVivo の画面を見せながらの発表には大変説得力がありました。私の場合、文字のほかたとえば新聞の字体や広告のレイアウトも分析の対象にするのでこれは使えると思ったわけです。

画像 (広告の写真) に対するコー ディング

NVivo の便利な機能を教えてください

さきほど NVivo は多様な形態のデータを集めておくところだと言いました。これまで研究データをその形態に応じて別の箱に入れていたのが、NVivo の登場で1つの箱にいれれば済むようになったという考え方をするとよいのですが、それだけなら多くの人が、「デジタル化してハードディスクに保存すればよい」というでしょう。

多くのものを箱に詰めてしまうと、見えなくなってしまうものがあったり、また私の研究室の机の引き出しのように、中身が引っかかって取り出せなくなったりすることもあります。NVivo の場合いつでも中が見えて、いろいろな方向から箱が開けられるようになっているわけです。そしてプレゼンテーションをする時もそれをすべて持ち歩けることがいいですね。まだどれだけ使いこなせているかわからないのですが、プログラムに取り込んだデータのほか、たとえば WEB ページなど外部にあるデータとリンクさせることができること、(紙のカードなどを使って行っていた時代にはできなかった) 作業の途中でコーディングを何度も変更ができること、また、作業の過程においてプロジェクトダイアリーと言うのでしょうか、メモを残してあとで振り返ることができる点は重宝しています。

ノードの作成例

今後の研究のご予定は?

現時点ではアンケートの記述式回答の結果と様々な文書との関連を分析しているのですが、街の中に英語の看板などの写真撮影を行い、それらが人々の英語に対して持つイメージの形成にどう影響するのかなどを分析する予定です。

NVivo はどのような研究者に薦められる製品ですか?

私のように複合領域で、分析しなければならないデータの形態が多岐にわたる研究をしている人には最適なプログラムだと思います。NVivo は質的研究用のソフトウエアと言われていますが、収集したデータを有効に利用し、質的研究、量的研究の長所をより効率的に活かすことができるのではないでしょうか。

研究で使用されているツリーノードの例

(本事例作成に関し、小田教授のご協力に感謝いたします)

  (インタビュー:2010 年10 月)