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(高安准教授) 経済現象を物理学的なものの見方や手法を応用し解析する、経済物理学 (Econophysics) という分野の研究を行っています。IT 関連技術の目覚ましい進歩によって、日々、時々刻々、社会には経済活動に伴う膨大なデータ (時系列データ) が蓄積されています。このデータには、例えば、株取引のデータ、為替取引のデータ、企業間の売り上げデータ、POS (販売時点情報管理) データ、ブログなども含まれます。
これらのデータとして蓄えられた経済現象・経済活動を、科学的に記述しうるもっとも単純なモデルを構築し、そのモデルで経済活動の予測や制御を目指そうとする分野です。
実際の研究テーマをいくつか紹介すると、
といったものがあります。
(高安准教授) 我々の研究室で IGOR Pro を利用して解析・グラフ化しているデータは「時系列データ」です。外国為替など金融市場のデータは、かつては1日に1ポイントしか得られませんでしたが、今ではミリセカンドのオーダーでデータが得られるまでになりました。こういった膨大な時系列データを扱うには IGOR Pro は欠くことのできないツールです。
コンビニエンスストアの POS データは非常にわかりやすい例だと思います。秒単位のタイムスタンプのついたデータが、店舗からチェーン店の中央コンピュータに蓄積されています。このデータの解析から人間の面白い集団的な振る舞いが見えてきました。実は、日ごとの価格変化と販売量の変化にはきれいな関数関係が成り立っています。例えば、カップ麺など蓄えが可能な商品では、価格を半分にすると数百倍も販売量が増えることが観測できました。
「ブログ」も、リアルタイム性があり非常に面白い情報ソースです< 図1> 。検索エンジンの技術によって、どんなキーワードがどのようなサイトでどの程度の頻度で使われているかを正確に観測することができます。
流行のない言葉の書き込み数は、時間とともに平均値周りをランダムに揺らいでいる <図2> のに対して、ブームが形成された単語は、株式価格のバブルやクラッシュ時 <図3> に似た関数形で口コミが動的に増加・減少することが確認できました。
また、高安研究室で開発した金融市場の安定、不安定性を定量的に評価できる PUCK Tool は、市場の制御や予測、及びリスク管理の観点から実務家の期待も大きく、企業との共同研究も進んでいます。プレゼンの際に用いる IGOR Pro のきれいな図は企業の方にも大変好評です。
(高安准教授) 現在、日本学術振興会特別研究員 (PD) の山田さんが修士課程に入学した頃からこの研究室では IGOR Pro を使い始めました。
(山田研究員) 私と IGOR Pro の出会いは高安研究室に来る前の学部時代で、主としてデータ解析に IGOR Pro を使っていました。その頃は、半導体に光を照射し、その後の経時変化の再現を目指したシミュレーション結果を IGOR Pro でプロットしていました。
(山田研究員) はっきりとは覚えていないのですが、マウスを使った直感的な操作とその操作が履歴ウィンドウにコマンドとして表示されることに感動したのはしっかりと覚えています。当時、研究室に先輩はいなかったのですが、困ったときはマニュアルを読めばたいていのことは解決できました。
(山田研究員) 研究を行う上で時系列の統計処理や図の作成はなるべく短時間で済ませ、モデルの構築や解析など本質的な部分に時間を割きたいものです。マクロやプロシージャを使うことによって、これらの作業を効率的に行えるようになりました。IGOR Pro マスターへの道はまだまだ遠いですが、IGOR Pro は使えば使う程、新たな発見もあり楽しいです。
また、IGOR Pro のバージョンがアップされるとデータの読み込み速度が向上したり、新たな計算機能が付加されていたりと今後の発展も楽しみです。
(山田研究員) コマンドの履歴機能が非常に便利でいつも活用しています。一度メニューから実行した操作が、コマンドとして履歴ウィンドウに記録されます。この履歴ウィンドウからコマンドを簡単に再実行できますので、同じ操作を何度もメニューから操作しなくても済みます。
さらに、履歴ウィンドウのコマンドを整理すると、独自のマクロやプロシージャを作ることができます。プロシージャとは IGOR Pro の独自のスクリプトです。プロシージャを活用すると、処理や操作の自動化やカスタマイズが可能です。膨大なデータに同じ解析や処理を繰り返す場合には大変役に立ちます。
高安研究室に配属されたばかりの後輩にも、同じように IGOR Pro の使い方を指導しています。初めはメニューから操作し、次に履歴ウィンドウのコマンドを再実行してもらいます。最終的にはそれぞれが必要なプロシージャを作って活用してもらいます。
(山田研究員) 理工系の実験データ以外にも、膨大なデータを解析、モデル化、可視化を行う非常に幅広い分野での使用をお薦めしたいと思います。
(インタビュー:2010 年3月)
東京工業大学 大学院総合理工学研究科
知能システム科学専攻 高安美佐子研究室
http://www.smp.dis.titech.ac.jp/
※今回の研究訪問は、東京工業大学生協すずかけ台購買部 様のご協力のもとに実施されました。 |