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長岡技術科学大学 産学融合トップランナー養成センター ナノ光生命流体工学研究室 山崎 洋人 産学融合特任講師 |
私の研究室では、「光学」と「生物工学」と「流体工学」を融合した分子検出デバイス創出を目指して、日々、研究を行っております。具体的には、現在は、ポータブルラベルフリー分子検出デバイス開発に取り組んでおります。
このプロジェクトでは、ナノポアというDNA やRNA、タンパク質といった目に見えないような生体分子と同じくらいの大きさの孔に、生体分子をひとつずつ通過させて、検知する技術(ナノポア計測)を開発しております(Figure 1)。
この技術は、DNA シーケンサを始めとした、遺伝子解析技術として注目されており、将来的には、手のひらサイズの装置で遺伝子検査などを行い、次世代検査・診断に貢献しうる基盤技術になると考えております。
私の研究では、Igor Proを主要な解析ツールとして使用しています。
具体的には、電流波形の解析とグラフ作成にIgor Proを利用しています。たとえば、Figure 2aのように、Igor Proを使用して電流波形をプロットし、論文や発表向けの電流波形図を作成しています。
また、電流値の統計的な解析では、Figure 2bのような散布図を作成し、電流波形データの統計的なばらつきを視覚的に把握しています。
さらに、1Dおよび2Dグラフデータの平均値を算出するために、ガウシアンフィッティングを使用しています。これらのアプローチにより、データの可視化と解析を効果的に行っています。
また、Igor Pro の活用において、価値のある機能の一つとして、独自の理論式を構築し、それを用いたフィッティング解析が挙げられます。この機能により、データに最 適な物理モデルを適用し、実験結果を理論的に解析ができます。Figure 3 に実際に独自理論式のフィッテイング解析結果を示します。
この研究では、レーザー局所加熱場におけるイオン流動性に熱流動現象の影響を受けることが考えられたため、従来の理論式では説明できませんでした。そこで、Figure 3 下部にある熱流動現象を考慮した理論式を独自に構築し、フィッテイング解析を行いました。
その結果、良好な一致が得られ、レーザー局所加熱場におけるイオン流動性に、熱流動現象が存在することを証明できました。
これらのデータの詳細に関しては、以下の論文で確認いただければと思います。
1.Photothermally Assisted Thinning of Silicon Nitride Membranes for Ultrathin Asymmetric Nanopores Hirohito Yamazaki et al. ACS Nano 2018 12 (12), 12472-12481 DOI: 10.1021/acsnano.8b06805
2.Label-Free Single-Molecule Thermoscopy Using a Laser-Heated Nanopore Hirohito Yamazaki et al.. Nano Letters 2017 17 (11), 7067-7074 DOI: 10.1021/acs.nanolett.7b03752
もともと、アメリカ留学時代に所属研究室でデータ解析に使用していたのが、きっかけです。
そこで、Igor Proでデータ解析からグラフ作成を行っていたため、自然と私にとっては必要不可欠な解析ソフトになっております。
Igor Proの魅力は、複雑なデータ統計解析から魅力的な図の作成ができるため、このソフト一つでデータの視覚的表現ができることです。
さらに、独自の解析手法が構築できる点や様々なデータタイプや大容量データ処理にも対応できる点も魅力のひとつです。
また、解析過程がコマンドウィンドウに残るので、後で見直しや、同僚とデータを共有した時に確認ができるので、便利です。
Igor Proは機能が豊富ですので、今以上にユーザーフレンドリーなインターフェースに改善されると、初心者に指導するときに助かります。
解析の時に、同じ作業の繰り返しが必要な時もあるので、履歴エリアのコマンド活用やマクロ作成をすることなく、作業内容を簡易的に記録して、自動化できる機能があると便利だと思います。また、波形データを取り扱った場合、データが重くなりがちですので、軽くなる機能があると嬉しいです。
本事例作成に関し、山崎先生のご協力に感謝いたします。
(インタビュー:2023 年 9 月)
※所属・役職は取材当時のものです。