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超低温域での 核磁気共鳴および電子スピン共鳴
(ミリ波領域)の測定と分析に Igor Pro を使用


福井大学 遠赤外領域開発研究センター

准教授  藤井 裕 先生

はじめはwaveという考え方に戸惑いましたが、徐々に慣れました。多くのデータが
一つのファイルにまとめられるので、PC内のファイルもスッキリです。


研究されている内容について教えてください

極低温や超低温と呼ばれる温度域での磁気共鳴測定を行っています。

磁気共鳴には、核磁気共鳴(NMR)および電子スピン共鳴(ESR)、それらを抱き合わせた測定を含みます。電子スピン共鳴では100 GHzを超えるミリ波領域を扱います。

 


【図1: 超低温生成装置】
希釈冷凍機と呼ばれる、最低約30 mKまでの
超低温を生成できる装置の一部。

 

 


これらの研究の中で
Igor Pro ではどのようなデータを扱っておられますか?

データ列は、2または3成分の離散データです。通常のXYプロットをすることがほとんどです。

 

 

研究はどのように進められて、データが記録されていますか?

測定装置はLabViewまたはBasic系のプログラムを用いて、外部装置のデータを取得しています。

磁気共鳴では、横軸が磁場値になるスペクトル測定の場合と、磁場を止めて種々のパラメータを変えてデータを取得する場合があります。

 

 

Igor Proの用途は何ですか?

Igor Proはデータ可視化のほかに、データ解析に用いています。

NMR測定では多数のデータセットに対して同じフィッティングを行う必要がありますので、自分で組んだマクロを用いて解析を行っています。

実時間データを周波数成分解析するために、複素フーリエ変換も行うことがあります。

 


【図2: スペクトル測定結果の解析の例】
取得したスペクトルに対して、1次,2次モーメントを求める解析を行った例。
ボタンで実行可能にして使用している。

 

 

Igor Proを使い始めたきっかけは?

大学院生時代にMacを使用している人が多い研究室にいて、Igorを使っておられる方が何人かいました。はじめは別のソフトを使用していたのですが、(後述の)利点があり、Igorを使い始めました。

 

 

Igor Pro の使用感、良い点と悪い点は?

データを一部変更すると、そのデータを使用しているすべてのグラフに反映されることが魅力で、使い始めました。はじめはwaveという考え方に戸惑いましたが、徐々に慣れました。多くのデータが一つのファイルにまとめられるので、PC内のファイルもスッキリです。

当時の先生のひとりは、自分でマクロを組んで測定まで行っていました(おそらく今もかもしれません)が、まだ私はやっていません。フィルタ機能やフーリエ変換のパネルはかなり使い勝手が良いと感じています。

使い込むと奥が深く、色々なことができることがわかってきたのですが、今でもまだ理解の及ばないところが多くて、私がIgor Proではできないと思っていることが実はできるなんてこともあるかもしれません。

フーリエ変換についてはマニュアル(ヘルプファイル)がかなり参考になりました。ヘルプファイルの充実もIgor Proの良いところですね。

 


【図3: フーリエ変換の例】
実時間データから周波数成分を検討する際に必要な前処理
(信号がない部分を減衰させる処理、範囲指定等)を、ボタンで実行可能にして使用している。

 

弱点は、データを一部だけマスクするのが難しい。フィッティングから除外することは可能ですが、グラフから除外しようとすると、完全に削除することになってしまって、元データを別に保存しなくてはなりません。同じXデータを用いた他のデータがあるような場合に注意を要してしまう。

また、フィッティングからの除外も含めて、こういったマスキング処理をグラフィカルにやるのが難しい。ただ、メニューから「Graph -> Package -> Select Point to Mask」の順に操作するとグラフィカルにマスク点を指定できるらしいので調べているところです。

 

 

Igor Proで作成されたプログラムを用いた研究成果があればご紹介ください

ほんの一例ですがこれらの論文ではIgor Proの解析が欠かせませんでした。

Y. Fujii, H. Kikuchi, K. Nakagawa, S. Takada, M. Fujisawa: 1H-NMR Study of Spin-1/2 Triple-chain Magnet Cu3(OH)4MoO4, Physics Procedia, vol. 75 (2015) 589–596

 

 

どのような研究者の方に勧められる製品ですか?


以下の要件をお持ちの研究者の方にはおすすめできると思います:

 

 


【図4: データフィッティング】
測定値が時間経過とともに一定値に緩和していくデータについて、様々なフィッティング関数を
試しながら、フィッティング結果も確認できるようにボタンで実行可能にした。
3枚のグラフは、上から順に、フィッティング用プロット(residualあり)、生データに
フィッティング結果を載せたプロット、フィッティングパラメータから計算されるアレニウスプロット。

 

本事例作成に関し、藤井先生 のご協力に感謝いたします。

(インタビュー:2018 年10 月)

※所属・役職はインタビュー時のものです。

 

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