19.12 一元配置共分散分析オプションを設定する
ANCOVA オプションでできること:
- 前提条件のチェックオプションの設定
- 残差の表示とそのデータをワークシートに保存する設定
- 信頼区間の表示とそのデータをワークシートに保存する設定
- 外れ値や影響力のあるデータポイントを特定する検定の指定
- 検出力 (Power) の表示
ANCOVA オプションを設定するには:
- 検定オプションを変更後、検定を実行する前にお持ちのデータを選択しておきたい場合は、対象となるデータをマウスポインタでドラッグしておきます。
- Analysis タブをクリックします。
- SigmaStat グループにある Options をクリックします。Options for One Way ANCOVA ダイアログボックスに次の4つのタブが表示されます。
オプション |
説明 |
Assumption Checking |
データの正規性と等分散性を検定する基準を緩和または厳格にするには、このパラメータを調整します。 |
Residuals |
Residuals タブをクリックすると残差オプションが表示されます。 |
More Results |
More Results タブをクリックすると、Confidence Intervals (信頼区間)、Leverage (てこ比)、Cooks Distance (クックの距離)、およびその他のオプションが表示されます。 |
Post Hoc Tests |
検定の検出力 (Power) すなわち感度を計算し、多重比較を有効にします。 |
一元配置共分散分析のオプション
- 選択によりオプションを有効または無効にします。SigmaPlot では、セッション間でオプションの内容が保持されます。詳しくは、一元配置共分散分析の結果を解釈する をご覧ください。
- 検定を続けるには、Run Test をクリックします。
- 現在の設定内容を適用してオプションダイアログボックスを閉じるには OK をクリックします。
Options for One Way ANCOVA: Assumption Checking
正規性 (Normality) の前提条件の検定では、母集団が正規分布に従っているかをチェックします。等分散 (Equal Variance) の前提条件の検定では、各群の平均値の周りのばらつきをチェックします。
- Normality の検定:SigmaPlot では、母集団の分布の正規性検定に Shapiro-Wilk または Kolmogorov-Smirnov のいずれかを使用します。
- Equal Variance の検定:SigmaPlot では、群平均のばらつきをチェックすることで等分散性を検定します。
- 正規性および等分散の P 値:P 値により、データが正規分布していないと誤って結論付ける確率が決定されます (P 値は、データが正規分布しているという帰無仮説を誤って棄却してしまうリスクです)。検定によって求められた P 値が、ここで設定した P 値よりも大きければ、検定は採択されます。
正規性と等分散のいずれか又は両方の要件をより厳密なものにするには、この P 値を大きくします。パラメトリックな統計手法では、仮説の棄却が比較的ロバスト (頑健) に検出されることから、SigmaPlot ではこの値を 0.050 としています。P 値をこれよりも大きくすると (例えば、0.100)、そのデータに正規性がないとの判定が出やすくなります。
正規性の要件を緩和するには、P 値を小さくします。正規性があるという仮説を棄却するための P 値に小さい値しか要求しないということは、前提とする正規分布からデータが外れていても、それが非正規であると判定される前に、それだけ広く受け入れたいとする意思があることを意味します。例えば、P 値を 0.050 とした場合、あるデータを非正規であると判定するには、0.100 の場合と比べてそれだけ大きく正規性を逸脱していなければなりません。
※ 制限事項:データの分布が極端な状態にあり、これらの手法では検定できない場合があります。たとえば、ルビーンの中央値検定 (Levene Median test) では、分散の大きさが数次の場合は差の検出ができません。このような条件の場合は、前提条件の自動検定に頼らずにデータを視覚的に調べることで容易に見分けることができます。 |
- Equality of Slopes (傾きの等しさ):Equality of Slopes は、「因子変数 (処理水準) と共変量変数の間に交互作用はない」という仮説を検定します。別な言葉で言い換えると、モデル内の各共変量の係数は、すべての処理で同一であると仮定されます。
- Report Parametric Statistics (パラメトリック統計をレポートする):Equality of Slopes にチェックを入れなければ、SigmaPlot により傾きの同一性が仮定され、このレポートの分析の焦点は、ANCOVA モデルのデータへの当てはめの結果に向けられます。Equality of Slopes (傾きの等しさ) を選択した場合は、交互作用モデルをデータに当てはめ、交互作用のどれが有意であるかが決定されます。因子と共変量のいずれかの間の交互作用が有意である場合 (すなわち傾きの等しさ equality of slopes 検定が不合格 fail の場合)、この分析は停止しますが、SigmaPlot により各群の回帰方程式が提示されます。因子と任意の共変量との間に有意な交互作用がなければ (すなわち傾きの等しさ equality of slopes 検定が Pass した場合)、レポートが継続され、Equal slopes モデルの結果が表示されます。
※ Note: ANCOVA モデルを Equal slopes モデルと呼ぶこともできます。 |
Options for One Way ANCOVA: Residuals
- Predicted Values:このオプションを使うと、独立変数の測定値それぞれについて従属変数の予測値を求め、ワークシートにその結果を保存します。予測値をワークシートに含めたくない場合は、このオプションの選択を解除します。
予測値をワークシートの列に配置するには、該当するドロップダウンリストから予測値を保存したいワークシートの列を選択します。Predicted Values を選択した状態でドロップダウンリストを None とした場合、予測値はレポートには表示されますが、ワークシートには配置されません。
- Raw Residuals:生の残差は、従属変数の測定値と予測値の差です。生の残差をレポートに含めるには、必ずこのチェックボックスを選択してください。生の残差をワークシートに含めたくない場合は、このオプションの選択を解除します。
生の残差をワークシートの列に配置するには、該当するドロップダウンリストから予測値を保存したいワークシートの列番号を選択します。Raw を選択した状態でドロップダウンリストを None とした場合、生の残差はレポートには表示されますが、ワークシートには配置されません。
- Standardized Residuals:標準化残差 (standardized residual) は、残差を推定量の標準誤差で割ったものです。残差の標準誤差とは、要するに残差の標準偏差ですので回帰直線の周囲のばらつきの尺度となります。レポートに標準化残差を含めるには、このチェックボックスを必ず選択します。標準化残差をワークシートに含めたくない場合は、このオプションの選択を解除します。
- Flag Values >:SigmaPlot は、該当するボックスで指定した信頼区間の外側にあるデータポイントに自動的にフラッグを立てます。例えば外れ値のようなデータポイントは、標準化残差の値が大きいものと考えます。フラッグを立てるデータポイントを変更するには、Flag Values > 編集ボックスの値を編集します。提示される残差の値は 2.5 です。
- Studentized Residuals:スチューデント化残差は、データの端に対してデータの中心付近が回帰直線の精度が高いことを考慮に入れて標準化残差を変換するものです。スチューデント化残差は、スチューデントの t 分布に従って分布する傾向がありますので、t 分布を利用してスチューデント化残差の大きい値を定義することができます。SigmaPlot は、例えば、外れ値のデータポイントなど、スチューデント化残差の値が大きいデータポイントに対して自動的にフラッグを立てます。すなわち、フラッグを立てた提示されるデータポイントは、この回帰母集団の 95% 信頼区間の外側にあることになります。
スチューデント化残差をレポートに含めるには、このオプションを選択してください。スチューデント化残差をワークシートに含めたくない場合は、このオプションの選択を解除してください。
- Studentized Deleted Residuals:スチューデント化削除残差は、当のデータポイントを使用せずに回帰方程式を計算することで残差の値を求める以外はスチューデント化残差と似ています。
スチューデント化削除残差をレポートに含めるには、このオプションを選択してください。スチューデント化削除残差をワークシートに含めたくない場合は、このオプションの選択を解除してください。
SigmaPlot は、例えば、外れ値のデータポイントなど、スチューデント削除残差の値が大きなデータポイントに自動的にフラッグを立てます。すなわち、フラッグを立てた提示されるデータポイントは、この回帰母集団の 95% 信頼区間の外側にあることになります。
※ Note: スチューデント化残差とスチューデント化削除残差は、いずれも、同じ信頼区間を使用して外れ値を判断します。 |
- Report Flagged Values Only:フラッグの付いたスチューデント化残差およびスチューデント化削除残差のみをレポートに含めるには、Report Flagged Values Only を選択してください。このオプションを解除すると、スチューデント化およびスチューデント化削除残差のすべてがレポートに含まれることになります。
Options for One Way ANCOVA: More Results
- Confidence Intervals for Model:モデルの真の値のの信頼区間 (Confidence) と予測区間 (Prediction) をレポートとワークシートに表示します。Confidence Level で指定した値は、回帰パラメータを計算する信頼区間、および、お持ちのデータの測定値の平均応答を計算する区間に適用されます。Parameter Statistics を選択するとレポートにパラメーターの信頼区間が含まれます。Equality of Slopes 検定に合格 (Pass) すると、この信頼区間を Equal Slopes Model で計算することになります。不合格 (Failed) の場合は、Interaction Model でこの区間を計算することになります。
- Summary of Covariates:Summary of Covariates を選択すると、各共変量の標本平均 (Mean)、標本の標準偏差 (Std Dev)、最小値 (Min)、最大値 (Max) を含む基本統計量がレポートに配置されます。これらの統計量は、それぞれの群内および全ての群間で計算されます。
- Covariance Matrix:Covariance Matrix を選択すると、Equal Slopes
Model のパラメーターに関する共変量マトリックスがレポートに配置されます。
- Parameter Statistics:Parameter Statistics を選択すると、Equal Slopes Model の全ての回帰パラメーターに関する統計テーブルがレポートに2つ配置されます。テーブルの一つには、パラメーターの値、それらの標準誤差、および、パラメーターの真の値がゼロであるという仮説検定の結果が表示されます。もう一つのテーブルには、これらのパラメーターの信頼区間が表示されます。
- Variance Inflation Factor:Variance Inflation Factor は、Parameter Statistics を選択していないと無効になります。Variance Inflation Factor を選択すると、Parametric Statistics の第一のテーブルに VIF というタイトルの列が追加されます。この列には、Equal Slopes Model における回帰パラメーターの定数 (Constant) 項を除く VIF (variance inflation factors) が含まれます。パラメーターの VIF は、データ変数のモデル内の他のデータ変数に対する係数である多重共線性 (multicollinearity) の指標になります。
- Flag Values:フラッグを立てる値の閾値水準をここで設定できます。この閾値を上回ると、どの変数が多重共線性の原因であるかを示す説明がレポートに表示されます。
- Leverage:Leverage (てこ比) は、縦横両方向の外れ値を含む、回帰直線に影響のある点を評価します。
- Cook’s Distance:Cook’s Distance (クックの距離) も、縦横両方向の外れ値を含む、回帰直線に影響のある点を評価します。
- Flag values:フラッグを立てる値の閾値水準を設定するにはこれを選択します。
- Report Flagged Values Only:Report Flagged Values Only を選択すると、特定の統計量や診断結果が Flag Values で指定した各種閾値を超えたときだけレポートに表示されるようになります。この中には、Leverage および Cook’s Distance の診断結果の他に、標準化、スチューデント化、および、スチューデント化削除残差が含まれます。
Options for One Way ANCOVA: Post Hoc Tests
- Power:検出力 (Power) すなわち検定の感度は、真の差がある場合にその検定で群間の差を検出できる確率です。
- Use Alpha Value:Alpha Value ボックスの数値を編集することで α の値を変更できます。アルファ (α) は、誤って差があると判断しても良しとする確率です。提示される値は、α = 0.05 です。この設定は、誤りを許容する確率が 20分の1であることを示します。すなわち、P < 0.05 であれば有意な差があると判断できることになります。
α 値を小さくすると、有意差があると結論付ける要件がそれだけ厳格なものになりますが、差があるにもかかわらずないと結論付けてしまう可能性はそれだけ大きくなります。α 値を大きくすると、差があると結論付ける要件はそれだけ容易になりますが、誤判定をレポートしてしまうリスクが増加することになります。
- Multiple Comparison (多重比較):一元配置共分散分析 (One Way ANCOVA) では、幾つかの処理群の間に差がないという仮説を検定しますが、どの群に差があるのか、すなわち、群間の差の大きさは分かりません。一元配置共分散分析で差が検出されると、多重比較でこれらの差を特定します。
One Way ANCOVA で差を検出するか否かの判定に使用する P 値は、Options ダイアログボックスの Report タブで設定します。一元配置共分散分析 (One Way ANCOVA) で求められた P 値が、このボックスで指定した P 値よりも小さければ、群間に差が検出されたことになるので、多重比較が実行されます。
- Always Perform:ANOVA で差が検出されたか否かにかかわらず常に多重比較を実行します。
- Only When ANOVA P Value is Significant:ANOVA で差が検出されたときだけ多重比較を実行します。
- Significance Value for Multiple Comparisons:Significance Value for Multiple Comparisons ドロップダウンリストから .05 または .01 を選択します。この値は、多重比較で処理間に有意差があると誤って結論付ける見込みを決定します。
値が .05 であれば、多重比較で誤って差を検出する可能性が 5% 以下であれば多重比較で差が検出されることになります。値が .10 であれば、多重比較で誤って差を検出する可能性が 10% 以下であれば多重比較で差が検出されることになります。(※ v14 では Σ > Options > Report タブの Test Results で指定します)
※ Note: 多重比較が開始されると、Multiple Comparison Options ダイアログボックスが表示され、多重比較の手法を選ぶよう指示されます。 |