18.2 一標本符号付き順位検定
One-Sample Signed Rank Test (一標本符号付き順位検定) では、平均値の代わりに (一標本 t 検定ではこれを使用)、母集団の中央値 (median) が指定した値に等しいという帰無仮説を検定します。
- 一標本符号付き順位検定について
- 一標本符号付き順位検定を実行する
- 一標本符号付き順位検定のデータを配置する
- 一標本符号付き順位検定のオプションを設定する
- Options for One-Sample Signed Rank Test: Criterion
- Options for One-Sample Signed Rank Test: Assumption Checking
- Options for One-Sample Signed Rank: Results
- 一標本符号付き順位検定を実行する
- 一標本符号付き順位検定の代替検定を実行する
- 一標本符号付き順位検定の結果を解釈する
- 結果の説明
1. 一標本符号付き順位検定について
One-Sample Signed Rank Test (一標本符号付き順位検定) は、観測した群が指定した母集団とは異なる群から選ばれたものかどうかを判定したい場合に使います。対象とする群が正規分布に従わない母集団から採集されている場合、母集団の中心傾向を測定する一標本 t 検定よりも、一般にロバストでパワフルな検定になります。この検定の使用における基本となる仮説は、母集団が中央値に関して対称的に分布していることです。帰無仮説は、「その群は指定した中央値をもつ母集団から選ばれたものである」になります。
群の中央値を計算し、それが指定した値とは異なるものになった場合、その理由としては以下の2つが考えられます:
- 標本の中央値が指定した母集団とは異なる母集団に由来するものであったため。
- 標本の中央値は同一の母集団に由来するものであるが、標本のランダムな変動によって異なったため。
最初のケースの場合、帰無仮説が棄却されます。2つ目の場合は棄却できません。
この分析を実行するには、One-Sample Signed Rank Test (一標本符号付き順位検定) を使います。ここでは、対象となる群の中央値 (median) を特定し、この値と指定した値との差が有意である確率 (P 値) を算出します。
2. 一標本符号付き順位検定を実行する
One-Sample Signed Rank Test を実行するには:
- 使用するデータをワークシートに入力または配置します。詳しくは、Arranging One-Sample Signed Rank Test Data をご覧ください。
- 必要があれば、t-test オプションを設定します。
- Analysis タブをクリックして、SigmaStat グループにある Tests ドロップダウンリストから次を選択します:
Single Group → One-Sample Signed Rank
- 検定を実行します。
3. 一標本符号付き順位検定のデータを配置する
- One-Sample Signed Rank Test のデータは、ワークシートの1つの列で構成されます。
4. 一標本符号付き順位検定のオプションを設定する
One-Sample Signed Rank Test のオプションを使用するには:
- Test Median (検定する中央値) を指定します。仮設に立てる母集団の中央値です。
- P 値を調整し、使用するデータの正規性の検定を緩和または制限します。
- 正規性の検定法を選択します。
- レポートに表示するデータの統計量の要約 (Summary Table) を指定します。
- レポートに表示する Test Median の信頼区間を指定します。
One-Sample Signed Rank Test のオプションを設定するには:
- Analysis タブをクリックします。
- SigmaStat グループにある Options をクリックします。表示される One-Sample Signed Rank Test Options ダイアログには、以下の3つのタブがあります:
- Criterion:
観測値の比較対象となる母集団の中央値 (median) を指定します。詳しくは、Options for One-Sample Signed Rank Test: Criterion をご覧ください。
- Assumption Checking:
P 値を調整し、使用するデータの正規性の検定を緩和または制限します。使用する正規性検定として、Shapiro-Wilk (推奨) または Kolmogorov-Smirnov のいずれかを選択します。詳しくは、Options for One-Sample Signed Rank Test: Assumption Checking をご覧ください。
- Results:
レポートに表示するデータの統計量の要約 (Summary Table) と中央値の信頼区間 (Confidence Intervals) を指定します。また、イェーツの修正因子 (Yates-correction factor) を適用するか否かを決定します。詳しくは、 Options for One-Sample Signed Rank: Results をご覧ください。
※ Tip: 検定オプションの変更後に検定を実行するに際して、検定の実行前にデータを選択しておきたい場合は、ポインターを列タイトル上でドラッグして、対象とするデータ列を選択します。オプションの設定内容は保存されます。 |
- 検定を続行するには、Run Test をクリックします。検定ウィザードの Select Data パネルが表示されます。
4.1 Options for One-Sample Signed Rank Test: Criterion
- Test Median
検定する、すなわち、仮説に立てる母集団の中央値を入力します。この値と算出される中央値が比較されることになります。デフォルトは 0 に設定されています。
4.2 Options for One-Sample Signed Rank Test: Assumption Checking
正規性の仮説検定は、母集団が正規分布に従っているかをチェックします。
- Normality Testing
SigmaPlot では、母集団の正規分布の検定に Shapiro-Wilk または Kolmogorov-Smirnov 検定のいずれかを使用します。
- P Values for Normality
P 値は、そのデータが正規分布に従っていないと誤って判断してしまう確率を決定します (データが正規分布しているという帰無仮説を誤って棄却してしまうリスクがで P 値です)。検定により算出された P 値がここで設定した P 値よりも大きければ、帰無仮説が採択 (Pass) されます。
正規性の要件をより厳密なものにするには、この P 値を大きくします。パラメトリックな統計手法では、仮説の棄却が比較的ロバスト (頑健) に検出されることから、SigmaPlot ではこの値を 0.05 としています。P 値をこれよりも大きくすると (例えば、0.100)、そのデータに正規性がないとの判定が出やすくなります。
正規性の要件を緩和するには、P 値を小さくします。正規性があるという仮説を棄却するための P 値に小さい値しか要求しないということは、前提とする正規分布からデータが外れていても、それが非正規であると判定される前に、それだけ広く受け入れたいとする意思があることを意味します。例えば、P 値を 0.010 とした場合、あるデータを非正規であると判定するには、0.050 の場合と比べてそれだけ大きく正規性を逸脱していなければなりません。
※ Tip:データの分布が極端な条件にあるためこれらの検定を考慮できない場合がありますが、このような条件の場合は、前提条件の自動検定に頼らずにデータを視覚的に調べることで容易に見分けることができます。 |
4.3 Options for One-Sample Signed Rank: Results
- Summary Table:レポートへのサマリーテーブルの配置を選択します。このテーブルには、群の観測数 (N)、欠損値の数 (Missing)、算出された中央値 (Median)、および、パーセンタイルが表示されます。テキストボックスには、データに関する2つのパーセンタイル値を入力することができます。デフォルトでは、サマリーテーブルのチェックボックスにはチェックが入れられ、パーセンタイル値には 25% と 75% が入力されています。
- Confidence Intervals:母集団の中央値の信頼区間の表示を選択します。信頼区間には、1 から 99 までの任意の数を入力できます (最も一般的に使用される区間は 95 と 99 です)。デフォルトでは、このチェックボックスにチェックが入り、その信頼区間は 95% に設定されています。
- Yates Correction Factor:標本サイズが 20 より大きい場合、正規分布を使用して検定の P 値が見積もられますが、正規分布が連続量であるのに対して、実際の検定統計量の分布は不連続であるため、実際の P 値は想定される値より小さくなります。この統計量のずれを補正するのがイェーツの連続性の修正です。
Yates Correction Factor (イェーツの修正因子) の有効と無効を切り替えるには、このチェックボックスをクリックします。
イェーツ補正の導出に関する詳細につきましては、該当する任意の統計書を参照してください。
5. 一標本符号付き順位検定を実行する
検定を実行する前にお持ちのデータを選択しておきたい場合は、対象となるデータをマウスポインタでドラッグしておきます。
- Analysis タブをクリックして、SigmaStat グループにある Tests ドロップダウンリストから次を選択します:
Single Group → One-Sample Signed Rank
One-Sample Signed Rank Test - Select Data ダイアログボックスが表示されますので、検定するデータの一列を選択します。
- Selected Columns リストに別のワークシートの列を割り当てたい場合には、ワークシートで直接その列を選択するか、Data for Data ドロップダウンリストからその列を選択します。
- 選択した内容を変更するには、リストの割り当てを選択したあと、ワークシートから列を選択しなおします。Selected Columns リストの内容をダブルクリックすることによって、列の割り当てを消去することもできます。
- Finish をクリックすると、検定が実行されます。計算が完了すると、レポートが表示されます。詳しくは、レポートグラフ をご覧ください。
5.1 一標本符号付き順位検定の代替検定を実行する
検定ウィザードで Finish をクリックすると、検定オプションで指定された正規性検定を使ってデータの正規性が検定されます。もし、正規性の検定に合格した場合 (そのデータは正規分布に従っていることになります)、代替となる検定として一標本 t 検定を選択できるオプションの付いたメッセージボックスが表示されます。このオプションを選択すると、一標本符号付き順位検定のレポートの代わりに、一標本 t 検定のレポートが表示されます。同様に、もし、一標本 t 検定の実行で正規性の検定が棄却された場合は、一標本符号付き順位検定に切り替えできるオプションが用意されたメッセージボックスが表示されます。
6. 一標本符号付き順位検定の結果を解釈する
計算結果は、One-Sample Signed Rank Test を実行すると自動的に表示される One-Sample Signed Rank Test レポートに表示されます。
6.1 結果の説明
数値による結果に加えて、拡張された結果の説明が表示されることがあります。この説明テキストは、Options ダイアログボックスで有効または無効にすることができます。
- Normality Test:Normality Test の結果には、そのデータが正規母集団から抽出されたものであるという前提条件の検定に合格したか否か、および、この検定で計算された P 値が表示されます。
- Summary Table:インプットデータに関する基本統計量のサマリーテーブルが一行で表示されます。内容は、群の列名、データ件数、および、欠損値、標本の中央値、および、パーセンタイルの上下%です。
- Hypothesized Population Median:Options for One Sample Signed Rank Test ダイアログボックスの Criterion タブに入力した Test Median の値です。
- Test Statistics and P-Values (検定統計量と P 値):2つの順位和の値、それらの差 W、Z 統計量 (正規近似)、および、estimated (概算法) および exact (正確法) の有意確率 (P 値) です。exact P-value は、Wilcoxon 分布に基づくものです。estimated P-value は、Wilcoxon 分布の正規近似に基づくものです。estimated P-value の調整にイェーツの修正が利用されます。ソース間の変動を保持する正規近似に必要で、標本サイズとして受け入れられる数は少なくとも 20 必要です。仮定した中央値とは異なる標本サイズの値の数が 20 以下の場合は、両方の P 値がレポートされます。そうでない場合は、estimated P-value のみがレポートされます。
- Yates Correction (イェーツの修正):イェーツの修正が使用されたか否かの説明が表示されます。
- Confidence Interval (信頼区間):母集団の中央値の信頼区間の上限と下限です。
- Interpretation of P-Value (P 値の解説):結果が正 (有意) であるか否かによって異なる有意確率の解説です。この有意水準は、Options for One Sample Signed Rank Test ダイアログボックスの Assumption Checking タブで設定したものです。デフォルトの有意水準は 0.05 に設定されています。