2. 最適化の基準に誤差の伝播(POE)を加える

Design-Expert® ソフトウェアにデータを取り込む際、入力因子に存在する細かなばらつきが含まれる可能性があります。このとき、誤差の伝播(POE)プロットを作成することで、応答に対する誤差の伝わり方を画面上で確認できます。ばらつきの伝わりを最小化できる条件を見つけることで、因子の設定状態に左右されない堅牢なプロセスを編成できる訳です。このチュートリアルでは、応答曲面法(RSM)で計画された実験から POE を作成する方法を紹介します。

POE を適用するより簡単な事例について「一元配置実験」チュートリアルでは、より簡単な方法で誤差の伝播を取り扱っていますので、この数学的ツールをより完全に理解したい場合はこちらもご覧ください。

 

同じ段階から分析を開始するために、 Chemical Conversion(analyzed) という名称のファイルをもう一度開きます。次に、画面左側にある “Design” ノードをクリックして計画割付表の画面を再開します。画面が表示されたら、“View” メニューの “Column Info Sheet” を選択してください。Std. Dev. 列に各因子の標準偏差を、次のように入力します。time:「0.5」、 temperature:「1.0」、 catalyst:「0.05」。入力後の画面は以下のようになっているはずです。

各因子の標準偏差を入力したColumn Info Sheet

 

分析済みの応答の標準偏差については、既に Conversion:4.1... とソフトウェアに入力されている点に注目してください。データに全く変更を加えていないので、前回選んだ分析内容が Design-Expert にそのまま記憶されているのです。ここでは単に Analysis ボタンをクリックして次に進みましょう。

注意: ちなみに、応答名の左にあるボタンを右クリックすると、別の標準偏差を指定することができます。
応答に別の標準偏差を入力するためのオプション
これをしないとこのフィールドは保護され、変更することはできません。

 

Analysis ブランチの下の “Conversion” ノードをクリックしてください。次に、分析に使う中間のボタンを飛ばして、“Model Graphs” ボタンをクリックします。“View” メニューから “Propagation of Error” を選択してください(因子の標準偏差が入力される以前は、このオプションはグレーで使用不可の状態でした)。

POE の等高線グラフ

 

次に、Graphs Toolbar にある “3D Surface” をクリックします。

3D 曲面で表示した POE グラフ

 

POE の値は低いほど好ましいものとなります。特定の応答に広がってゆく制御因子の誤差をそれだけ小さくすることができるからです。その結果、プロセスはより堅牢なものとなります。

以上で、Conversion に関する POE が求められましたので、前に戻り、それを最適化の基準に加えていきましょう。Optimization ブランチの “Numerical” ノードをクリックしてください。リストから “POE(Conversion)” を選び、その Goal“minimize” を選択したら、Lower Limit「4」を、Upper Limit「5」を以下のように設定してください。

POE(Conversion)に関するGoalとLimitの設定

 

場合によっては、前に戻って Conversion(maximize; LL 80-UL 100)と Activity(Target -> 63; LL 60-UL 66)の目標値を設定する必要があるかもしれません。

画面上にある “Solutions” ボタンをクリックしてみましょう。いま追加した基準を反映させた新たな解が出力されます。Solutions Toolbar にある “Ramps” をクリックしてください(注意:検索開始点の無作為化により、実際の画面は以下のショットとは若干異なる場合があります)。

最適化の基準にPOEを加えたときのランプ表示(実際の画面は異なる場合があります)

 

上記の最適解は、反応率を最大化し、活性の目標値 63 を達成すると同時に、応答に伝播する誤差が最小になる点を見いだしています。従って、これは因子設定のわずかなばらつきに対して、堅牢なプロセス条件を表すことになります。このケースの場合は、POE を考慮するか否かで大きな違いはありません(このことは前に戻って自分で確かめてください)。しかし、これが問題になってくる場合もありますので、POE の視点も見落とさないようにしてください。