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雪崩の内部構造と流動機構の解明に活用


"雪崩運動のシミュレーション結果を可視化できるソフトを探していたところ、知人に Srufer を紹介されました。"

名古屋大学 大学院
環境学研究科 (名古屋市) 西村 浩一 教授

研究・開発されている内容について教えてください

一例としては、雪崩の内部構造と流動機構の解明を目的として次のような調査を行いました。

  • 黒部峡谷志合谷に映像に加えて雪崩衝撃圧、静圧変動、風速、音、地震動などを測定する雪崩観測施設を設置し、多角的側面から冬季間自然発生する雪崩を観測
  • ノルウェーでの人工爆破による Full-scale 雪崩実験でも、志合谷と同様のシステムを用いた測定

これらによって流れ層内部の速度分布や雪煙部の乱流構造などを解明しています。

 

研究プロジェクトにおける調査の目的は?調査はどのように進められ、データが記録されていますか?

図1:スキージャンプ台を用いた模擬雪崩実験

これまでに日本で開発された雪崩の運動モデルは、その多くが雪崩全体を平均化し、質点または剛体と見なして記述するものでした。最大到達距離や速度が再現されるよう抵抗係数等のチューニングが進められてきたが、雪崩の高さ、3次元の地形上での広がりの情報が得られないなど、防災上不充分な点が多かったのです。

実験の例としては、自然条件下での観測の制約を克服するため、スキー競技用ジャンプ台を雪崩実験斜面として利用し、1. 冬季は自然積雪を流下させ、急斜面を流れ下る過程での粒状化・流動化そして堆積という実際の雪崩に見られる全過程を再現する、また 2. 無雪期には最大65 万個のピンポン球を流下させ、3次元粒子流全体の挙動、形態変化、粒子間の衝突など相互作用に着目した測定を行ったりします。

前者は、主に黒部峡谷での雪崩観測等で得られた結果の検討と理解を深める目的で、後者は雪崩を「粒子の集団が重力により、斜面上を空気や底面、それに粒子間で相互作用しながら流れ下る現象」としてとらえたアプローチです。

 

Surfer の用途と扱っているデータの種類は何ですか?

観測データやモデルデータを3次元の等高線図として視覚化するのに Surfer を使用しています。例えば、図2のような雪崩の運動モデルをアニメーション化するときにも使用しています。

図2:雪崩の実験結果との比較検証に基づいた運動モデル
(Surfer を使用して作成されたアニメーション)

 

他の研究課題で PR したい研究の成果などがありましたらお願いします。

アジア高山地域では、近年の地球温暖化により氷河末端の融解が急激に進み、融け水が15 ~ 19 世紀に形成されたモレーンで堰き止められて、氷河上に大きな湖が多数形成されています。モレーンの構造が不安定であるため、大規模な決壊洪水 (氷河湖決壊洪水:GLOF) が頻繁に発生し、ネパール、インド、チベット、ブータン、パキスタンなどの地域に多大な被害を与え社会経済開発を阻害する大きな原因となっています。

図3:吹雪による吹きだまりの計算結果 (赤) と雪崩発生地点の比較

 

2009 年度には「地球規模課題対応国際科学技術協力事業 (JST と JICA の連携事業) 」として、名古屋大学を代表機関とした「ブータン・ヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」が採択され、氷河湖の危険度評価、氷河湖拡大メカニズムの検討、決壊洪水発生時の警報システムの立案、ハザードマップの作成に向けた調査・研究が開始されました。

図4: 運動モデルによる雪崩ハザードマップ

 

Surfer を使い始めたきっかけは?

雪崩の運動のシミュレーション結果を可視化できるソフトを探していたところ、土木研究所に勤務している知人に紹介されました。

図5:黒部での雪崩観測

 

Surfer の使用感、良い点と悪い点は?

いったん使用法に慣れてしまえば使いやすい。

デフォルトの設定を変更して図を作成した際に、その設定を保存して後の作業にそのまま使えると、作業が効率化が一段と期待できます。

図6:アジア高山地域での研究。右が Surfer で作成された図
(氷河湖の決壊に伴って発生する洪水の氾濫解析 (数値計算) 結果を図化したもの)

 

どのような研究者の方に勧められる製品ですか?

私のように DEM を使って数値計算を行う分野では、その結果の可視化に威力を発揮すると考えられます。

(本事例作成に関し、西村教授のご協力に感謝いたします)

(インタビュー:2011 年7 月)