Didger を使って過去の等高線図をデジタイズ

過去に作成された等高線図 (historic contour map) を手作業で作り直すのは面倒です。できることなら、過去に等高線として解釈されたデータから元の数値データを取り出して手軽に活用できたらいいとは思いませんか?

過去の現地データを集めて分析しようとする場合、中にはデジタイズしなければ使えないデータが良くあります。例えば、過去に作成された地下水濃度マップもそのようなヒストリック・データのひとつです。作成された地図の中には、現場に隈なく掘られた井戸から測定した化学的データを元に、地質学者や技術者がその等濃度を手作業でひとつひとつ線でつないだものも良く見られます。彼らは等高線の作成にあたり、現地で得られた知識に基づいて仮説を立てたと思いますが、デジタイジングに際しては、まさに、このような情報の取得や確保が重要となります。

こうした情報を、過去に測定された濃度データとして1つのデータセットにまとめて、地下水モデルのインプットとして利用したり、あるいは、過去の地下水の状態が最新の活動によってどのように変化したかを比較できると便利です。Golden Software 社の開発した地理参照、デジタイジング、座標変換、マップ作成ソフトウェアである Didger を使えば、過去に作成されたこのようなマップをデジタイズし、そのデータを地下水モデリングソフトウェアやその他の地図作成アプリケーションで簡単に活用できるようになります。

例えば、以下に示す等高線図は、注入井戸周囲の TDS (総溶解性蒸発残留物) 濃度を示すものです。Didger を使えば、この等高線の画像ファイルやスキャンされたデータをインポートし、それをデジタイズしたあと、最終的に、ESRI シェイプファイル (*.shp) のような地理参照ファイルやグリッド用に準備されたデータファイルとして簡単に出力することができます。

注入井戸の周囲の TDS 濃度をあらわす過去に作成された等高線図の例。

 

Didger にスキャンされた画像をインポートし、参照点を付けるには:

  1. スキャンされた画像を Didger にインポートするには、メニューから File | Import コマンドをクリックします。Didger では、スキャンされた PDF ファイル、TIFF、JPEG 2000 を含む多数の画像ファイル形式をインポートできる点に注目してください。Didger でサポートされるインポートファイル形式については、HELP に記載されています。Help | Contents をクリックして、Contents タブから Didger 5 | Files | File Format Chart を選択します。
  2. Import ダイアログで、インポートするファイルを選択したら、Open ボタンをクリックします。
  3. Import Options ダイアログで、デフォルトの設定内容を確認し、そのまま OK をクリックします。
  4. Image Registration and Warping ダイアログが開きます。ここで、インポートする参照点の設定を行います。
    1から4までの地理参照地点がある Image Registration and Warping ダイアログ。

  5. 読み込んだ画像の Reference X および Reference Y 対の位置を設定する必要があります。参照点に相応しいのは測定された井戸の位置です。画像の基準となる参照点は最大 256 まで使用できます。

インポートした画像は Data Manager 内で1つのオブジェクトとして存在することになります。等高線をデジタイズするには、その画像をベクトル化する必要があります。メニューから Image | Vectorize Image コマンドをクリックして、Vectorize Image ダイアログを開きます。Draw | Polyline コマンドを使用して、ポリラインを手動でデジタイズすることも可能ですが、これは、より自動化の進んだ Vectorize Image コマンドの補助的作業としては有効ですが、時間と手間の掛かる作業になります。Vectorization Scheme ドロップダウンメニューから Line Detection を選択します。等高線のようなライン画像をインポートする場合は、この手法が最適です。残りのオプションについては、デフォルトの設定をそのまま使います。

Vectorize Image ダイアログのスクリーンショット

 

Image Registration and WarpingVectorize Image コマンドの初期設定は、等高線をはじめてデジタイズするときの良い基準となります。2つのツールにはカスタム機能が豊富に用意されていますので、必要に応じてお持ちのデータに相応しい設定に調整してください。各オプションの詳細につきましては、Help に説明が用意されています。Help を開くには、メニューから Help | Contents をクリックしてください。

お持ちの画像のベクトル化が完了し、その等高線が Data Manager のオブジェクトとしてリストに追加されたら、等高線ごとに値を割り当てる必要があります (この例で割り当てる値は濃度です)。デジタイズによってポリラインのセグメントが多数作成された場合、手動で各ポリラインごとに値を割り当てるのは時間と手間のかかる作業になると思います。Didger を使えば、インポートした等高線のポリラインに高度 (elevation)、濃度 (concentration)、あるいは、その他の数値を自動的に割り当てることができます。これを実行するには、以下に示す手順に従います:

  1. メニューから Map | Data | Assign Elevations コマンドをクリックします。
  2. カーソルの形状が に変わります。濃度データを割り当てるには、等高線ポリラインの最小値から等高線ポリラインの最大値を通る1本のラインを引く必要があります。通過する等高線の数ができる限り多くなるように、マップ内でマウスをクリック&ドラッグします。
    この例では(上記)、マップ中央の小さな円が等高線水準の最小値となり、マップ右側の円が最大値となります。

  3. マウスのボタンを離すと、高度を割り当てる Assign Elevations ダイアログが表示されます。
  4. Starting Elevation に最初の等高線の値を入力します。
  5. Increment Value に各等高線の間隔を設定する値を入力します。
  6. Assign to Data の内容は、保存したい濃度データファイルの列になるよう設定します。
  7. 間隔の狭いポリゴンや、一部の不連続な線分に Assign Elevations ツールを使用すると割当てに失敗する場合があります。このような場合、Data Manager にあるそのオブジェクトの Primary フィールドを選択して、その値を手動で編集します。
    等高線として解釈された資料の中には、このステップで、割当てる濃度の補正を要するものもあります。間隔の狭い線分や不連続なライン上にハッチパターンやラインパターンがあれば注意するようにしてください。過去に作成されたマップには、マップ特性のある状態を他と区別するために、こうしたパターンが使用されていることが良くあります。過去に作成されたマップのこうした特性に関する情報については、マップおよびマップ凡例の内容を確認するようにしてください。
  8. OK ボタンをクリックすると、Assign Elevations コマンドを使って各ポリラインに高度が割り当てられます。

以上で、濃度の等高線のデジタイズとその濃度値の割当てが完了しましたので、File | Export コマンドを使って、このラインを Didger から Surfer やその他の GIS プログラム、あるいは、地下水モデルで利用できる他のファイル形式にエクスポートすることができます。ESRI シェイプファイル (*.shp) や AutoCAD ドロー形式 (*.dxf) をはじめ、様々なファイル形式で出力することができます。Didger を使ってデジタイジングを行うメリットの1つは、お持ちのデータを作業するのに役立つ多数のファイル形式が Export コマンドでサポートされている点があります。Didger でサポートされるそれ以外のエクスポートファイルの形式につきましては、Help で詳しく説明されています。Help | Contents をクリックし、Contents タブから Didger 5 | Files | File Format Chart を選択してください。

ここで紹介した手早く簡潔な手順を使えば、スキャンされた過去の等高線図を、マップ作成や解析を行う様々なソフトウェアで利用可能なファイル形式に簡単に変換することができるようになります。地下水モデルの初期条件を求めたり、開発に着手する前の過去の現場状況を洞察するには、こうしたデータを手に入れることが重要です。

Didger でデジタイズした最終的な等高線の例