6. 結論

「よい計画のお陰で、実験が上手くいきました!」ランスは大声で叫びました。「ギアを低くした場合は、タイヤ圧がどうあろうと大した問題はありませんが、ギアを高くした場合は、タイヤ圧を高くするほどタイムが伸びることが分かります。」

 「同様に、」とシェリルは次のように言います。「タイヤ圧が低い場合は、ギアをどちらにしても実際に大差はないですが、タイヤ圧が高い場合は、ギアを高くする方が良いとも言えます。」

「どっちでもいいよ。」と、ランスはぼやきます。

「あとひとつ気付いたことがあります。」とシェリルは次のように指摘します。「8回の試行の各平均タイムは、回を重ねる毎に増加しています。最初の実験では 70秒だったものが、2回目には 80秒、そして、最後の走行ではほぼ 85 秒にまで落ちています。疲労が重なったと見て間違いありません。このブロック効果を取り出すと良いですね。そうしなければ、思わぬ方向に結論が導かれてしまう可能性があります。」  

ランスはこれに同意して「実験計画法って最高ですね。」と言いました。

この事例でランスは、Design‐Expert ソフトウェアから提示された折り重ね技術を使用して、飽和した計画を注意深く拡張させることで、彼が着手した7つの因子から有意な因子を素早く見つけ出し、それらの交互作用を突き止めました。最終的に彼が実施した実験は、3つのブロックに分解される合計24回の試行で済みました。本来であれば、すべての主効果と2因子交互作用が他の主効果や2因子交互作用から制約を受けない分解能 V 計画によるアプローチで分析に着手すべきだったでしょうが、MR5 計画(これは Stat-Ease 社によってのみ提供されます!)を用いたこのアプローチでは、実験を少なくとも 30回は行わなければなりません。古典的な2水準一部実施計画(27‐1)を普通に使ったとしたら、これよりも更に多い64回の試行が必要です。そして、忘れないでいただきたいのは、ランス・レッグストロングが実際に8回走行して得た最初の実験結果がなければ、新春自転車競技大会で現に優勝することもできなかっただろうということです。

この事例でランスは、飽和した分解能 III 計画を用いて勝利の組み合わせを見出しました。従って、彼は実験計画法で当座の問題を解消できたことになります。しかし、彼の友人で個人的コーチでもあるシェリル・ソングバードの後押しがなければ、ランスは折り重ねに必要な追跡実験を成し遂げることも、そして、速度向上に寄与する正確な原因を突き止めることもできなかったでしょう。実験計画法 (DOE) による問題の抜本的解決に、彼女は一役買ったわけです。