4. エイリアス化された交互作用の調査

ランスは、AF と共にエイリアス化されたその他の、より妥当性のある、交互作用を調査することにしました。実際にコンピュータを操作しながら、ランスと同じ作業を確認していきましょう。ランスは、“Effects” タブをクリックして前に戻り、 “Numeric” タブを選択して、このウインドウを最大化します。

エイリアス一覧の表示

 

彼は、項 AF にマウスを移動し、左下にあるように、右クリックした後、BE を選択しました。結果は次のスクリーンショットのようになります。

AF をBE に置き換える(変更前)

 

AF をBE に置き換える(変更後)

この操作は、リバーシブル(反転可能)であることに注意してください。すなわち、BE から AF に戻すことも同じ操作で変更できるということです。しかしここでは、本題に戻って、ランスは “Pareto” タブを選択します。効果 A と F は、交互作用 AF の階層構造の成立を支えるという点において前のモデルと同じです。

 

AFをBEに置き換えたPareto Chart

現在、交互作用 AF は BE に置き換わっています。2つの主効果 A, F が有意でないことはグラフから明らかですので、“F”(ランク4位)と “A”(6位)のラベルの付いたバーをクリックして、痕跡物としての価値しかないこれら二つのモデル項を無効にしてください。効果 B、E、BE をひとつのファミリーとして簡素化するこのやり方に注目してください。つまり、このモデルは各々が独立して有意となるすべての項で、階層構造を成立させたと言えます。原則として、簡素化モデル(統計学的に言えば「parsimonious:節約」)は、それよりも多数の項を必要とするものに支えられるべきものです。特にこのことは、前に作成した親因子のない AF を使った例のように、それ自身では有意でない親の項をもつモデルに関しても当てはまります。

次に、ランスは交互作用 BE を表示します。“Model Graphs” ボタンをクリックして、これをご確認ください(エイリアスの交互作用を表示するアドバイスが表示されたら “No” をクリックしてください)。

交互作用BEのプロット(タイヤ圧低とギア高の効果)

ランスはこちらの方が遥かに納得のいくものであると考えます。

Design‐Expert のグラフ上に赤いポイントが表示される点に注意してください。これは、実測値のひとつで、ある条件が揃わない限り表示されないものです。ポイントをクリックして、この条件の内容を確認してみましょう。

選択された実測値(拡大された円)

 

グラフの左側にその内容を確認できます。このポイントにおけるタイヤ圧(B: Tires)は 40 psi 、ギア(E: gear)設定は High となっています。その上には、試行番号(Run #:無作為化により実際の番号とは異なります)と、計測タイム 83 秒を確認できます。このグラフには表示されていませんが、因子は一般にデフォルトで指定された平均水準をとります。本件の場合は因子がカテゴリ型であるため、その因子の低水準がソフトウェアの判断によって(赤のスライドバーが左側に)選択されています。この内容は、標準の順番(Std Order)でソートした折り重ねの最終行と一致します(注記:実際の試行番号 Run # は、無作為化によりグラフの左側に表示された内容とは異なる場合があります)。

結果を高低両水準の平均値として表示させたい場合は、Factors Tool のリスト矢印をクリックして、以下のように “Average” を選択してください(因子 A:Seat、C:Handle Bars、D:Helmet Brand、F:Wheelcovers、G:Generator については既に設定済みです)。

交互作用に表示されていない因子の水準を平均値に変更

 

平均値としてのシートの高さは実際に測定された水準ではないので、グラフに表示されていたポイントは非表示になる点に注目してください。交互作用プロットをオリジナルの設定に戻すには、Factors Tool にある “Default” をクリックしてください。元の設定に戻ったら、他の設定も試してみましょう。実際に実験が行われた条件が他にも見つかるでしょうか。なお、理論的に可能な 128(27)通りの組み合わせのうち、折り重ねを使って増えた試行は全部で16回に過ぎないことを思い出してください。従って、もしそれらがグラフ上にあったとしても、それほど多くはなないはずです。例えば、Factors Tool で因子を以下のように(Generator を高水準に)設定すると、別の実測ポイント(緑の円)のひとつが見つかります。

G: Generatorを高水準に再設定して表示した別の実測ポイント

 

ランスは、すべての成分を一通り見渡すために、C(ハンドルバー)と D(ヘルメットメーカー)が互いに作用しあうとは思えないのですが、交互作用 AF の二番目のエイリアス:CD の効果も調べることにしました。交互作用プロットで得られた結果は全く違ったものでした。意外な結果です!もしお時間があれば、実際に確認してみてください。“Effects” ボタンに戻って、“Alias List” を選択したら、右クリックメニューを使って BE を CD に置き換えます(階層構造にするため、後から因子 C と D をモデルに組み入れる必要があります)。自転車乗りとしての経験的知識が、ランスに思い切った判断を下させました。彼は BE こそが真の効果であり、CD ではないことを頭から決めてかかったのです。

さて、作業内容を保存する良い機会になりました。メニューから “File” -> “Save As” を選択して、例えば「Biker2」などと別名を入力して、ファイルを保存してください。

ランスは、これまでに得られた驚きの結果に触発されて、自転車メーカーにレーサー用の初期設定をどのように変更したらいいかを提言する手紙を書く準備を意気揚々と始めます。しかし、ランスの友人で個人的コーチでもあるシェリルは、2因子交互作用のエイリアス化により、タイヤ圧とギア設定による影響の合成については、依然として立証したことにはならないことを指摘し、「交互作用 BE の効果を確かめるには、三回目の実験を行う必要があるね」と訓戒を込めて忠告します。ランスは「そうするしかないでしょうね」と腹を括ります。