1. はじめに

このチュートリアルでは、Design-Expert® に搭載されたツールを使って、混合物とプロセス変数の両方を組み合わせた実験に分割法を適用する方法を紹介します。

 ケーキを焼くという事例は、Design-Expert(DX)のツールを利用して複合分割法を試行するのに最も適した工程です。この工程には、様々な材料を混ぜ合わせ、ある一定の温度で処理し、そして、さらにフロスティングを混ぜ合わせる(冗談です)に至るまで、実験に適した要素がすべて含まれています。特にアメリカ南部で好まれている大人気のデザートの1つに、Lady Baltimore Cake(レディ・ボルチモアケーキ)があります-ふんわりとしたフロスティングにナッツとレーズンをぎっしり詰め込んだ、栄養価が高く美味しいケーキです。このケーキは、サウスカロライナ州チャールストンの Alicia Rhett Mayberry 氏によって初めて焼かれたのではないか、と言われています。このケーキは、1902年に出版された『The Virginian』で有名な小説家 Owen Wister の著書 『Lady Baltimore』(1906)の中でとり上げられています。

Lady Baltimore Cake

 

Lady Baltimore Cake のレシピは、インターネット上で多数提供されています。例えば、wikiHow のwww.wikihow.com/Bake-a-Lady-BaltimoreCake では詳細なレシピを写真付きで参照することができます。当然、これらのレシピはそれぞれ異なります。例えば、wikiHow の手順では中力粉(all purpose flour)の使用が指定されていますが、以下のレシピでは薄力粉(cake flour)が必要です。

ケーキ フロスティング&フィリング
ふるいにかけた薄力粉:3カップ かき混ぜていない卵白:2個
ベーキングパウダー:小さじ3杯 砂糖:1と1/2カップ
塩:小さじ1/2杯 水:大さじ5杯
バター:1/2カップ ライトコーンシロップ:小さじ1と1/2杯
砂糖:1と1/2カップ バニラエッセンス:小さじ1/2杯
牛乳:1と1/4カップ ドライいちじく:6個、砂糖漬けチェリー
バニラエッセンス:小さじ1杯 レーズン:1/2カップ
卵白:4個 刻んだナッツ:1/2カップ

 

実験的探究心がある方ならば、ケーキ作り用により凝った小麦粉を使う必要があるのかと、すぐに疑問が湧き上がってくるはずです。恐らくこれにより、複数の小麦粉を組み合わせることになるでしょう。また、小麦粉と砂糖の割合も関係してくるでしょう。ここでは、美味しいケーキをつくるために、これら3つの材料-中力粉(all purpose flour)、薄力粉(cake flour)、砂糖(sugar)-の配合比率について調べていきます。これらの量はいずれもオンスで示し、他のすべての材料は一定に保つことにします。

 いくらケーキが素晴らしくとも、それはふさわしいフロスティングがあってこそ完璧と言えます。この2番目の配合比率を調整するために、再びその他の材料は一定に保ったまま、主たる構成要素である水、コーンシロップ、バニラエッセンスの量を変化させます。

 最後に重要な点として、フロスティングとフィリング(F&F)の量を変化させます(同じ比率で Lady Baltimore Cake の内側と外側に塗り付けます)。この測定には、数値型因子として cups を使います。

 

分割法 および 実験の設定

「はじめに」で説明したように Lady Baltimore Cake の実験では、2つの混合比(ケーキ生地とフロスティング)と、1つの量(F&F)を考慮します。ご想像の通り、この「複合」計画では、応答曲面法(RSM)による最適化に必要とされる充分なデータを取得するために、大量の試行を行います。幸運にも、私たちのベーカリーには、一度に12個のケーキ(1ダース)を焼くことができるオーブンと、多量のバターを混ぜ合わせることができる巨大なミキサーがあります。従って、ケーキを1ダースずつ焼いていくことが明らかに効率的です。これは分割法を試すには、またとないお誂え向きの実験環境といえます。通常、実験は完全無作為化されるため、実験を試行するたびに新しいケーキのレシピが必要になります。しかし、すぐにわかる通り、分割法を使用することで、バターは変更困難な因子(HTC)として好都合なグループに分けてソートし、それぞれのグループ内で変更容易な因子(ETC)として無作為化されることになります。この複合計画を通して、この国で一番の Lady Baltimore Cake の作り方を検討していきましょう。