実験手法からFAT (Fact-at-a-time) を取り除く

Mark J. Anderson
Stat-Ease, Inc.

1969年、有名な経営学者、ピーター・ドラッカーは「知的な職種を生産的にすることが、今世紀の経営の大きな課題である」と予言しました。エンジニアや科学者以上に自分たちの仕事を知っている人はいるでしょうか?従来の科学的手法では、世界の最先端の分野の専門家は、一般に自分たちの実験を最も非効率な方法-一時一事法 (OFAT: One-factor-at-a-time) で行っています。これは、いわゆる「科学的手法」で、一般に17世紀のフランシス・ベーコンが生み出したものと考えられていますが、その起源は紀元前1600年のギリシアにさかのぼり、トーマス・エジソンの業績でその頂点に達します。彼は、電球やその他のものを発明するために根気強く試行と失敗の OFAT を繰り返しました。彼のアプローチは「1%のひらめきと 99%の努力」です。エジソンのアプローチは1926年に A.N. ホワイトヘッドを刺激し、「19世紀最大の発明は、発明の方法を発明したことである」と言わしめました。皮肉なことに、この時期のイギリスの統計学者、ロナルド・フィッシャーは、農場で作業をしているときに、2水準因子計画と呼ばれる新しい形の実験を開発しました。数学的にこれらは “2” と表記され、k は実験因子の数を示します。フィッシャーの革新的な 2 実験計画 (DOE: Design of Experiments) は、洗練されたマトリックス形式の試験計画を使い、並列に多くの因子を調査することで、1年かかる成長サイクルを克服しました。図1は等価反復実験の OFAT での3因子 2計画を比較しています。疑う余地なく、より多ければ、より良くなります。

図1:2水準因子計画 (左) とOFAT (右) の比較

因子計画は、A に対して高い水準で4回実施し、低い水準で同様に行います (直方体の実験領域の右面と左面) 。同様に因子 B と C も、高い水準と低い水準の両方で4回実施することで得ることができます (それぞれ、上面と底面、前面と背面) 。従って、OFAT の実験者は、効果の見積もりに対する反復実験の同じ効力を提供するために、それぞれの因子の高い水準で4回実施し、低いライン (原点のすべての低い水準) で4回行わなければなりません。しかし、これは OFAT で合計 16回実施する必要があり、2水準因子では 8回で済みます。はるかに効率的な並列処理であるため、2 DOE はシリアルな OFAT スキームに勝り、その効率のメリットは因子 (k) の数が増大するにつれて顕著になっていきます。

応答局面法 (RSM: Response Surface Method) と呼ばれる DOE のより強力な形式を使うことで、実際に OFAT に火をつけてみましょう。OFAT 実験者は因子 A で任意に始まり、因子 B を中間水準 (0) に保持しながら、自動的に低から高 (-2~+2) に9水準変化すると仮定します。結果の応答局面は図2a のようになります。実験者は、A の水準が 1 に近いところ (正確には 0.63) で応答が最大になることを認識できます。次のステップは、因子 A をこの「最適な」点に固定し、B を可変にすることです。図2b は2回目の OFAT 実験の結果を示しています (応答軸 [y] に対する目盛が変わっていることに注意してください) 。

図2a:因子Aの OFAT
図2b:因子BのOFAT
(Aは 0.63に固定)

この2回目の応答のプロットに基づいて 0.82 の水準に因子B を調整することで、応答は 80 (前回の最大) から 82 に増加しました。OFAT 実験者は、わずか 18回の試行で 80以上の応答を生み出した (A, B) の最適な組み合わせは (0.63, 0.82) であることを高々に宣言するでしょう。しかし、RSM で生成された図4を見ると、実際の最適な値は OFAT で得られたものよりはるかに高い (~94) であることがわかります。

図4:実際の曲面に示されたOFATの点

OFAT から離れ、DOE/RSM を使うことにより、科学者やエンジニアは、実験においてより生産的に、効率的になります。つまり、より多くの知識をよす素早く得ることができるわけです―これが21世紀に不可欠なものです。