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「グラフを作る上で必要なあらゆる要素を自在に扱えることが、やめられない最大の理由です。」金沢工業大学 |
動物の性行動や闘争行動といった本能行動がどのようにして現れるのか、特に脳内のホルモンによる行動の調節の仕組みについて調べています。実際に対象としているのは、コオロギです。私たち人間の脳はおよそ 1千億個の神経でできているのに対して、コオロギなどの昆虫の脳は、せいぜい数万個の神経でできています。つまり、神経の数は人間の百万分の一程度。従って、昆虫はまるで機械のように決まり切った行動しかできないと思われています。
しかし、コオロギであっても環境によって、行動の現れ方がわれわれと同じように変化することがわかってきました。例えば、小さいときからエサや交尾相手などが常に満たされた贅沢な環境で育ったコオロギは、全く飛べなくなってしまいます。因みに研究で使っているのはクロコオロギという種類ですが、野生では、無着陸で 1,000 km 以上飛ぶことができます。さらに、卵の時からずっと一人っ子で育てた雄のコオロギは、大人になって生まれて初めて出会った相手を攻撃し続けて殺してしまうほど凶暴になってしまいます。生まれつき持っているはずの本能行動が、このように環境によって変化する仕組みを明らかにするために、脳内のホルモンを調べています。
コオロギは、われわれ人間の 100 万分の一程度の神経しか持っていないにもかかわらず、闘争行動や性行動といった複雑な行動を状況に応じて示すことができます。
われわれの研究プロジェクトの第一の目的は、コオロギの本能行動を発現する脳内メカニズムを明らかにすることにあります。これらの本能行動は生得的なもので、遺伝的に決まっていると考えられていました。しかし、隔離などによって生育環境を変化させると、本能行動の発達や現れ方が大きく変化することが明らかになりました。そこで、生育環境が本能行動の発達や発現を調節する脳内メカニズムを明らかにすることが第二の目的です。
行動実験では、観察やビデオ映像の解析によって得られた行動解析データを Excel data としてコンピュータに保存しています。脳ホルモンの分析実験では、高速液体クロマトグラフィーによる分析結果が、定量・定性分析用のソフトによって処理され、最終的には Oracle のデータベースに保存しています。
用途: | 実験データのグラフ化 成績処理や予算等の事務処理 |
データ: | コオロギの行動解析、脳ホルモンの分析結果、発育データ等 |
かれこれ 20 年以上前になると思いますが、当時アメリカに留学していた大学時代の先輩である曽我部正博先生( 現在名古屋大学 医学部 細胞生物物理学講座 教授) から SigmaPlot を教えてもらいました。当時の開発元は Jandel Corp. だったと思いますが、Byte か PC Magazine の広告で見つけて直接購入しました。当時はフロッピーディスクで、多分 version 2 だったと思います。すっかり気に入り、以降もアップグレードを続けてきました。
何といっても、グラフを作る上で必要と思われるあらゆる要素を自在に扱うことが出来るのがやめられない最大の理由です。実験結果をうまくグラフに表現することは、研究者にとって不可欠の重要な能力の一つだと思います。コンピュータにお任せで簡単にグラフ作成のできるソフトが横行していますが、楽をして手を抜けば抜くほどグラフからは魂が抜けてしまいます。手を抜かずに時間をかけて作製したグラフには、見る側に訴えるものがこもっています。そのようなかゆいところにも手の届くのが、SigmaPlot です。
基本的な統計処理や簡単な検定ができるのもお気に入りの一つです。さらに、マニュアルは英語ですが、とても丁寧に書かれており、初心者にはグラフ作成のための教科書にもなるくらいです。
特に欠点は思いつきませんが、敢えて言えば、他のグラフィック系のアプリケーション、例えば Adobe Illustrator 等とのリンクをさらに強化して頂けると助かります。私の場合、グラフの基本をSigmaPlot で作製し、EPS ファイルとしてエクスポートして、最後の仕上げを Illustrator で行っているのですが、グラフの要素がさらに細かく分断化されてしまって Illustrator で扱いにくいことがあります。
各実験条件ごとの結果を比較したり、新たな実験条件を検討する場合に、SigmaPlot によるグラフ化を頻繁に行っています。
理系はもちろん、文系の人であれ、グラフを扱うすべての人にお薦めです。
研究者にとってグラフは、研究結果を読者や聴衆にわかり易く伝える最大の道具です。さらにこのことは、研究者だけに限られるものではなく、グラフを用いて人前でプレゼンをする人にとっても通用すると思います。
ベテランの人にはプロ用のツールとして、そしてこれからグラフ作成を身につけようとする人に対しては、先で述べた理由などから立派な教材として是非お薦めしたいと思います。
(インタビュー:2008年12月)