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重要度分析を使ったグリーンビルディング設計

スタンフォード大学の統合設備エンジニアリングセンター (CIFE: Center for Integrated Facility Engineering) は、建築・エンジニアリング・建設の仮想設計の代表的な研究センターです。リサーチアシスタントで LEED 認証建築士の Caroline Clevenger と、CIFE の助教授である John Haymaker は、多領域設計と分析プロセスがどのように建物の性能を向上させ、環境フットプリントを削減するの かを調査しています。

 

チャレンジ

グリーンビルディングへの関心が急速に高まっていくにつれて、建築家はエネルギー効率と環境フットプリントの削減に細かく注意を払うようになっています。DOE-2 や Energy Plus などの建物のエネルギー使用量の詳細なソフトウェアシミュレーションを使用するのは難しく、コストもかかるため、省エネ、環境影響、建築費のトレードオフの検討にこのようなモデルを使用している建築家はほとんどいません。

より実用的な選択肢として、スタンフォード大学の研究者たちは、設計者が設計プロセスの優先順位を決定し、導くことができるようにするために、システマティックサンプリングとセットベースのフィルターから重要な洞察を識別する方法を模索しています。このような洞察を生み出すには、重要な設計パラメーターを変化させながら、標準的な建物エネルギーシミュレーションツールである DOE-2 の実験的実行を数多く行なう必要がありました。彼らはまた、建築家にこのような結果の直観的なサマリを提供することが、実際により良い設計ソリューションを見つけるのに役立つのかどうかをテストしたいと望んでいました。

 

なぜ Analytica だったのか?

「我々は多数の実験建築シミュレーションを実施し、結果を分析して重要な洞察を見つけるのに役立つツールを必要としていました」スタンフォード大学 CIFE の Caroline Clevenger は言います。「DOE-2 にリンクされた Analytica の計算エンジンで、建物性能のメタ分析が実行できるようになりました。Analytica は、数秒で DOE-2 を使った486 のシミュレーションを実行することができました。設計を「最適化する」のではなく、考えられる 6 つの設計上の決定の重要性をランキングすることで、設計者に設計に必要な情報を提供することができました。Analytica のインターフェイスと統計ツールが効果的に建物性能計算を分析して、以前には不可能だった洞察を提供してくれます。近い将来、これらの結果を拡張して、よりロバストかつ複雑なソリューションセットを明らかにできることを願っています。」

 

解決策

建築シミュレーションと解析ツールは広く利用されています。しかし、これらのツールの価値は、設計者が豊富な可能性の中からより良い解決策を見つけるのに実際に役立つかどうかによって決まります。設計者がどのように建築コストと環境影響の設計トレードオフの解空間を操作するのかを検証するため、 CIFE の研究者たちは総合的な実験を構築しました:設計チームは予算内で最もエネルギー効率のよい再配置可能な教室を設計することに挑戦したのです。設計チームは断熱材の厚さ、窓の種類、屋根材などの初期コストと環境影響間のトレードオフに影響を与える 6つの設計に関する決定をする必要がありました。それぞれの決定には、2つか 3つのレベルの性能とコストがあり、結果として 486通りの設計の組み合わせになりました。2つのタイプのグループに学生たちを分けてテストしました。一方のグループの学生設計者は、シミュレーションを平均した各設計パラメーターの費用対効果の良い「重要性」の結果を受け取りました。もう一方のグループは、より伝統的なモデルベースの設計解析プロセスに従いました。設計者はサステナブルデザインについての知識が少ない修士レベルの学生でした。各グループの設計解析はステップ・バイ・ステップで追跡され、単一の評価値に対して評価されました。

 

結果

中間結果では、「重要性」の情報を与えられた設計チームの方が、もう一方のチームより解空間への進み方に着実な進歩があったことが示されています。「重要性」は、性能と各パラメーター間の順位相関を使用する各設計パラメーターの建物性能の感度の評価基準です。

設計プロセスの効率化 (予測性能/解析数) が、重要情報の導入により大幅に向上しました。

中間結果は、グリーンビルディングの分野で制約の完全評価は非常に困難であるという CIFE 研究者の直感のとおりでした。重要性を評価できる Analytica の計算エンジンは、面倒な「ポイントベース」分析から設計者を解放し、改善ソリューションへと導く有益な手段を提供します。つまり、重要性についての情報は、どんな最終設計になるのかではなく、どこに設計時間を費やすべきなのかを設計者に教えてくれるのです。

 

著者

Caroline Clevenger, LEED 認証建築士, スタンフォード大学博士課程在籍
John Haymaker 博士, スタンフォード大学 社会環境工学科 建設工学管理プログラム 助教授

 

参考