更新日: 14/04/10

T-Chem 量子輸送コードの導入

自己無撞着な非平衡グリーン関数 (NEGF) フレームワークにもとづく電子量子輸送コード T-Chem。ナノスケールの系における電子輸送を原子論的に説明するのは、理論的にも計算的にも難しい課題です。我々が開発したのは、非平衡グリーン関数 (NEGF: non-equilibrium Green's function) をベースとするフレキシブルな量子輸送モデリングツールです。このモデルは、Q-Chem で利用できる任意の SCF 処理と組み合わせて使うことができます。

T-Chem コードでは、分子架橋に作用する最新の非平衡状態の記述を実行させることができます。結果として得られる電流は、Q-Chem で利用できるパワフルな交換相関汎関数セット、および、基底セットの任意の組み合わせを使用して、電子構造を完全に自己無撞着的に処理することでモデル化されるものです。T-Chem は、また、電極モデルについても柔軟に定義することがます。

T-Chem コードでは、単一分子の破断接合 (single molecule break junctions)、ナノ構造のバルク素材、カーボンナノチューブ、および、ナノワイヤーベースの電子デバイスなど (これだけに限らない)、ナノスケールの系における電子トンネル効果をモデル化することができます。一般に、適用するポテンシャルのバイアスが界面を通過することで生じる任意の電荷注入プロセスをモデル化することができます。

図1:T-Chem 輸送計算を説明する典型的なナノスケールの電子デバイスの概略図:2つの金属電極の間に単一の有機分子を配置。分子内のトンネル電流の通り抜けを計算または観察できるよう、電極に外部バイアス電圧を掛ける。

 

図2:T-Chem 輸送コードを使えば、電子の透過関数 (a) や適用するバイアス電圧の影響下における電子トンネル電流 を含む電子デバイスの主要な輸送特性を計算することができます。

 

論文: