Igor Pro テクニカルサポート
更新日: 14/10/28

Multipeak Fitting 1.x のベースライン (定数項と3次式) について

この文書は、IGOR Pro 6.0 とそれ以前に含まれている Multipeak Fitting 1.x のフィッティングにおけるベースラインの扱いについて述べています。IGOR Pro 6.1 以降にも、過去のバージョンとの互換性のために、Multipeak Fitting 1.x が含まれていますが、ベースラインを明示的に扱うことができる Multipeak Fitting 2.x が追加されていますので、新しいバージョンをご利用ください。

Mutipeak Fitting 1.x では、ベースラインを指定しなくても、暗黙の「定数項」が含まれています。例えば、Gauss ピークが2つあるデータ Y は

Y = 定数項 + 1つ目の Gauss ピーク + 2つ目の Gauss ピーク

というように、3つの情報を足し合わせたデータ全体とフィッティングされます。既定の状態では、この定数項はグラフにも FitSetupPanel にも表示されませんが、FitSetupPanel の Tweaks ボタンをクリックして、FitTweaksPanel を表示して、「Display baseline trace」のチェックボックスをオンにすると、緑色のラインでグラフ上に表示されます。

以下はサンプルファイルの実行例ですが、赤の4つのピークと緑のベースライン (定数項) が表示されています。

Multipeak Fitting では、複数のピークをフィッティングで抽出することができますが、先にも述べましたように、ピークごとにフィッティングを実施するのではなく、上記の式のように複数のピークを足し合わせた全体と、オリジナルのデータの差ができるだけ小さくなるように処理されます。

付属のサンプルのようにピークがブロードで分離が不十分な場合にも、隣接するピークのテールの重なりを考慮することで、スペクトル全体を表現することができます。ただし、すべてテールを加味するとどうしてもデータ全体がかさ上げされてしまいますので、それを補正するために、特に指定がなくても、定数項 (いわゆるゲタ) を考慮する仕組みになっているようです。

ピークごとにベースラインを考慮することができればよいのですが、フィッティング計算の性質上、同質なパラメータを区別することができませんので、ピークごとにベースラインを定義することはできません。

なお、FitSetPanel の Baseline のチェックボックスをチェックすると、定数項の代わりに3次式 (a+b*x+c*x2+d*x3に) が追加されます。ベースラインにドリフトが認められる場合などに有効です。

いずれの場合にも、FitSetPanel 中央のパラメータのリストには Baseline の情報は表示されません。定数項の場合は、フィッティング実行後の履歴ウィンドウの K0 の値、3次式の場合は、K0~K3 の値 (K0+K1*x+K2*x2+K3*x3) がそれぞれ対応しており、フィッティングデータごとの coef ウェーブに保存されています。

付属のサンプルエクスペリメントの場合には、

root:'data set 1':WMPeakFits:Current:coef

に coef ウェーブがあります。

ベースライン (定数項あるいは3次式) に続いて、番号の若いピークから順に、Amplitude、Position、Width の情報が coef ウェーブに保持されています。

繰り返しになりますが、それぞれのピークでは、ベースラインは考慮されていません。グラフ上では、それぞれのピーク (赤) のラインが Y=0 より少し浮いていますが、これは、FitTweakPanel の Offset peaks to baseline の指定 (デフォルトではピーク高さの10%) に従って、見やすさのために浮かせて表示されています。

そのため、得られたパラメータから、ピークを算出しそれを足し合わせただけでは、オリジナルのデータを再現することはできません。共通のベースライン (定数項あるいは3次式) を足し合わせるようにして下さい。

なお、Multipeak Fitting 2.x では、ベースラインを Panel 上で確認でき、定数項 (Constant) と3次式 (Cubic) 以外にも、なし (None) 、直線 (Linear) などから選択することもできます。